陥りやすい親子の事業承継のリスクとジレンマ|杠司法書士法人|相続・遺言書や後見、企業法務のご相談 このページの先頭です

杠司法書士法人

COLUMNコラム

本文へジャンプします。

杠司法書士法人は見た!
実録コラム百科

ここから本文です

陥りやすい親子の事業承継のリスクとジレンマ

事業承継

|更新日:2022.10.25

投稿日:2018.12.10

日本では、約258万社の会社が存在しており、そのうち資本金が1億円未満の同族会社の割合は9割を超えています。

同族会社とは、株主に一定の関係性がある会社のことを指しますが、今回はその中の「親子間での事業承継が上手くできていない会社」で起こりうる問題と、その原因として考えられることについてお伝えしたいと思います。

そもそも社長とは?-「社長」にすべての決定権があるわけではない

「社長」といえば、その会社の代表というイメージでしょう。
しかし法律上は「社長」そのものの役割を規定しておらず、登記簿に「社長」と記載されることはありません。

公的な書類でも「社長 何某」と記載することはありません。

あくまで「社長」は、会社を代表する権限を持つということを示す肩書きなのです。
法律上、この「会社を代表する権限を持つ」という名称は「代表取締役」となります。
「代表取締役=社長」とするかどうかは、会社の規定である「定款」で決めておきます。今回は、「代表取締役=社長」であった場合と考えて話を進めていきたいと思います。

代表取締役は取締役会という取締役が構成する会の決定で、選ばれることになります。(取締役会設置会社の場合)

では、この取締役会で選ばれれば、会社の運営をすべて取り仕切ることができるのでしょうか。必ずしもそうはいかないのが会社なのです。

会社は誰のもの?-会社の所有者は社長ではなく株主

今まで、代表取締役・取締役(社長や役員)の話をしましたが、皆さんはもしかしたら、会社というと役員より株主総会をイメージされるかもしれません。

株主総会は会社にとって、とても大事な機関です。会社の支配権を握っているのは、実は株主総会なのです。

しかし多くの会社では、株主総会を構成する「株主」たちが誰であるかということに無頓着です。無頓着でいられる理由としては、冒頭でも触れたように、日本の多くの会社が親族や近しい関係者だけで株式を保有しており、幸いなことに今まで特に問題が生じたことがなかったためです。

しかし、役員を選ぶのも、その役員の報酬を決めるのも、株主への配当を決めるのも、そして、役員を解任することができるのも株主総会です。そう考えると株主について無頓着であることは、社長として少し怖くはありませんか?

その上、ふたを開ければ「現社長が株式をほとんど保有していない」ということも珍しくはありません。社長が大株主でない場合、上記のような会社の重要な決定事項も、他の株主が合意しなければ決められないことになります。

なぜリスクを顧みず、このような状況のままとなってしまうのでしょうか。

いつか・・・で本当に大丈夫?-事業承継の先延ばしがトラブルをまねく

今では息子が経営を継いで、代表取締役(社長)であるにも関わらず、会社の支配権限となる「株式」をほとんど保有していない・・・、こういった例として多いのが「先代社長であるお父様が株式の大多数を保有したまま」となっているパターンです。

お父様が一代で築きあげた大切な会社です。息子に社長の席は譲っても、会社には自分も関わり続けたい。息子もその気持ちを尊重したい・・・、その気持ちは素敵ですが、会社の支配権となる株式の所有割合が低いことで、現社長が会社運営をするに当たりリスクの高い状態であることを知っておきましょう。

いずれは「相続」により父から子へ株式を承継するであろうと容易に考えてしまうことも、計画的な事業承継を先延ばしにしてしまう理由のひとつです。

たとえば後継社長がご親族ではない場合は、株式は互いに合意しないと得ることはできませんので、時期を決めてその準備をします。一方で、気の知れた親子であるからこそ、今すぐ何かしなくても、お父様がご逝去された際には株式を得られるであろうと現状のリスクを考えずに支配権を交代する準備を先延ばしにしてしまいがちです。

しかし、株式はお父様の個人資産です。相続が起これば他の財産と同じように、お母様や兄弟などの相続人と株式を共有することになり、相続の話し合いがまとまって、しかるべき手続きを経なければ現社長が株式を得ることができません。

金融資産や不動産を含め膨大な遺産がある中で、会社の株式の相続について交渉しなければなりません。

話し合いはすぐにまとまりそうですか?
その話し合いがまとまらないうちに、会社に重大な決定が必要となったら・・・?

社長は会社の経営判断・資金繰りを行わなければなりません。
たとえば金融機関の融資を受ける際、多くの場合、社長個人も連帯保証人となっておられることでしょう。

先に挙げたように、もし他の株主が結託し、社長を解任されたとしたら、個人の連帯保証債務だけが残る可能性もあるわけです。極端だと思われるかもしれませんが、実際にご相談を受けたケースもあります。

まとめ

これまで、親子で社長を交代する事業承継を考える際に陥りがちな状況と、承継が進まない原因についてお話してきました。もちろん、すべての会社に争いや悲しい事件が起こるわけではありませんが、うちの会社は大丈夫・・・と思う前に一度自社のかかえるリスクから見直してみてはいかがでしょうか。

事業承継は、これからの未来に、繁栄をつないでいく大切な準備です。
まずは、自社の株主を確認するところからはじめてみませんか。

専門家から客観的にリスクを指摘してほしいというご相談も多くいただいております。杠司法書士法人では、安心して事業承継できるようご支援をしております。ご希望がありましたら、お気軽にご相談ください。

→事業承継について問い合わせる

本記事に関する連絡先

フリーダイヤル:0120-744-743
メールでのご相談はこちら >>

石井 満

この記事を書いた人

石井 満

お問い合わせ

オンライン相談