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譲渡制限株式の相続による分散

事業承継企業法務相続

|更新日:2022.12.16

投稿日:2010.06.01

時々、会社関係者から、「株主である○○さんが亡くなられたらしいが、当会社の株式の譲渡には会社側で承認を得なければならないとされているから、相続人には引き継がれないよね?」という質問を受けることがあります。

ほとんどの中小企業においては、株式の譲渡には『取締役会(又は株主総会)の承認を要する』という制限があります。

これは会社の登記簿と定款に記載されています。

この株式譲渡の制限は、売買や贈与などの契約により株式を譲り受けた者を、株主として扱うことにつき会社が拒否することができるというものです。

しかし、相続や合併などの法律上当然に起こる権利の引継ぎにより株式を譲り受けた株主は対象となりません。

つまり、相続があった場合には当然に株式は相続人に引き継がれてしまい、上記のような株式の譲渡について制限がある会社でも、その相続人を自社の株主として扱わざるを得ません。

長い歴史のある会社などでは、当初出資された株主から、その相続人に株式が引き継がれています。このままでは、さらなる時間の経過により再度相続が起こり、会社との関係が希薄な相続人に株式が分散することとなります。

それでは、株式の分散を解消するために、会社はどのように対応すべきでしょうか。

株式の分散を解消するためには、株式の買取を行う必要があります。

その買取の方法は、相続人との合意で買い取るか、又は強制的に買い取る方法があります。

「種類株式のリスク管理における利用」でもご紹介した種類株式を利用することもできますが、株主全員の合意が必要になることが多いため、既に株主に相続が起こっていて株主が多数となっているような場合には積極的に利用することは困難です。

そこで、具体的な会社の対応として、以下の3つの方法が例として挙げられます。

1.相続人との合意で株式を買い取る

相続人との協議の機会を設け、会社又は経営者との関係のある第三者が買い取ります。

会社で買い取る場合には株主総会の決議が必要で、一方、第三者で買い取る場合には取締役会の決議を経る必要があります。

比較的簡単なのは第三者による買取ですが、資金面や今後の関係性などにより誰が買い取るかを決定することが困難な場合が多いでしょう。

2.誰から買い取るかを決めず、会社が売渡希望の株主から自己株式を取得する方法で買付を行う

会社が買取を行う期間、買い取る株数と価額の上限について決定し、株主総会で承認を得ます。

そして、その範囲内で買取を行う条件や買取期間をすべての株主に通知し、期間内に買取申出のあった株主から株式を買い取ります。

どれだけ買取の申出があるか分からないので、会社は、一定の資金が必要となります。

3.定款を変更しておいて、さらなる相続があったときに株主総会で決定し、その相続人から強制的に買い取る

『株主に相続があった場合、株主総会の決議をもって株式を買い取ることができる旨』を定款に規定しておくことで、株主のうち誰かに相続が起こったときに株主総会で決定してその相続人から強制的に株式を買い取ることができます。

ただし、この方法を実行できる期限は、会社がその株主に相続があったことを知ってから1年以内に限定されています。

1.と2.は、どちらかというと積極的に会社側で買取を実行していく方法です。一方、3.については定款変更はしなければなりませんが、相続の時期を待つという点では消極的な対応です。

1.と3.は売主である株主と相対的に買取価額を合意で決定しますが、2.の自己株式取得の方法は、買取価額を指定して広く株主から買取をする点で異なります。

どの方法を選択するとしても、相続人と会社にとっての一番の関心は、買取価額です。

当然、会社にとっては、買取金額をなるべく低く抑えることが重要です。

資金面でももちろんのこと、あまり高い金額で買い取ると、これが相場となってしまい今後の買取に影響する恐れがあるという意味でも、慎重に決定すべきです。

株主の立場で考えると、譲渡制限株式は、株式を会社の承認なしには譲渡できず、自由に換価できないため、プラスの財産として意識しにくいものでしょう。

配当があれば別ですが、株数が少なければ経営に影響力を持つこともできません。一度に金銭で受け取れ、換価できる機会としては、相続人にとってもチャンスともいえます。

1株あたりの買取価額が割安であったとしても、必ずしも「悪いお話」ではないでしょう。

とはいえ、やはり会社にとっては、買取資金が必要となる憂鬱な事態です。

いつかはしなければならないと考えていながらも、労力と費用を要することなので、放置している会社も多いと考えます。

方法だけをご紹介しましたが、自社の現状に合わせて今後の対応を考慮する材料としてご参考下さい。

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吉田 有希

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