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任意後見制度とは?手続きの流れや費用などをわかりやすく解説

成年後見

投稿日:2024.12.13

任意後見制度とは、将来、認知症や病気などで判断能力が低下したときに備えて任意後見人を選任する制度です。

この制度を利用すれば、自分の将来に備えて信頼できる人にさまざまな手続きをしてもらうことができます。

この記事では、任意後見制度とは何か、手続きの流れや費用などをわかりやすく解説します。

任意後見制度とは

任意後見制度とは、本人の判断能力が失われていない間に、将来の判断能力低下に備えて任意後見人を選んで後事を託すことをいいます。

任意後見人は、任意後見監督人の監督のもとに委任された事務を行います。

したがって、任意後見監督人の選出も必要です。

では、どのような方が任意後見人や任意後見監督人になれるのでしょうか。

以下で詳しく解説します。

任意後見人になれる人・なれない人

任意後見人になるにあたって、特別な資格は必要ありません。

通常は親族が任意後見人になるケースが多いものの、原則として誰でもなれます。

ただし、以下の例外事由に該当する方は任意後見人になれません。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所にて解任された法定代理人・保佐人・補助人
  • 破産している人
  • 本人に対して訴訟をおこしたことがある人、その配偶者、直系血族
  • 行方不明者
  • 不正行為をした人など任務に適しない事由のある人

任意後見監督人になれる人・なれない人

任意後見監督人は家庭裁判所によって選任されます。

任意後見監督人になるにあたって、特別に必要な資格はありません。

任意後見監督人の選任は、職業や経歴、本人と候補者との間の利害関係の有無が考慮されます。

基本的に、以下のような第三者が選ばれるケースが多いです。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会福祉士等の専門職や法律、福祉に関わる法人

また、任意後見人と同じく、以下の事由に該当する人は任意後見監督人になれません。

  • すでに任意後見人になっている人
  • 本人又は任意後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹
  • 本人に対して訴訟を起こしたことがある人
  • 未成年者
  • 破産者で復権していない人
  • 裁判所から法定代理人などを解任された人
  • 本人に対して訴訟を起こした者やその配偶者及び直系血族
  • 行方不明者

任意後見制度と法定後見制度の違い

任意後見制度と法定後見制度は、どちらも判断能力が不十分になった人をサポートする制度ですが、大きく異なる点があります。

それぞれの違いは、以下の通りです。

  • 法定後見制度:すでに判断能力が不十分な方が対象
  • 任意後見制度:まだ元気だけど将来が不安な方が対象

任意後見制度は本人の判断能力が十分あるうちに将来に備えて利用する制度であるのに対して、法定後見人は本人の判断能力が低下してから利用する制度です。

2つの制度の違いを一覧表にまとめました。

  任意後見制度 法定後見制度
制度を利用するタイミング 本人の判断能力が十分なうちに制度を利用して備える 本人の判断能力が低下してから利用する
後見人の選任 本人が任意後見人とする人や与える権限を自分で決める 家庭裁判所が成年後見人等を選任する
後見人の権限 本人と任意後見人候補者の話し合いによって権限の内容をある程度自由に決める 後見人の権限は「後見」「保佐」「補助」でそれぞれ定型的に定められている
後見人の報酬 任意後見契約の中で報酬を決める 家庭裁判所が決める
居住用不動産の売却 許可は不要 家庭裁判所の許可が必要

任意後見制度を利用するメリット

任意後見制度を利用するメリットは、以下の3つがあります。

  • 自分で後見人を選ぶことができる
  • 希望する内容で契約内容を決めることができる
  • 費用を安く抑えられる

それぞれの詳細について説明します。

自分で後見人を選ぶことができる

任意後見制度は、本人が元気なうちに信用できる人物を後見人として選ぶことができます。

本人の意思が選任に反映される点が、法定後見人制度との大きな違いです。

すでに本人の判断力が低下している場合、法定後見制度しか利用できません。

法定後見人には法律の専門家が選ばれることが多く、相性が合わなければ家族のストレスにもなるでしょう。

本人の意思の有無は、後見人の選任に大きな影響を与えます。

希望する契約内容を決めることができる

任意後見制度の場合、希望の支援内容を契約書にて細かく定めることができます。

預金の管理や不動産売却などの財産管理や施設入居や医療契約に至るまで、取り決めによって任意後見人が対応できるように定めることも可能です。

法定後見制度では、権限内容は民法にて定められているため自由度は制限されます。

後見人の選任と権限を本人の意思で決定できるのは、任意後見制度の大きなメリットです。

費用を安く抑えられる

任意後見人の報酬は契約内容で自由に設定できるため、家族や近親者を選任する場合、報酬を安く抑えることもできます。

法定後見人の場合、弁護士などの専門家が選任されることが多く、報酬は高くなりがちです。

費用面からみても、任意後見制度のほうがメリットが大きいといえます。

任意後見制度を利用するデメリット

法定後見制度に比べると何かとメリットの多い任意後見制度ですが、デメリットもあります。

想定されるデメリットは次の3点です。

  • 任意後見人に取消権はない
  • 任意後見人への報酬が高くなる可能性がある
  • 死後の身辺整理や財産管理などの作業は依頼できない

それぞれの詳細について説明します。

任意後見人に取消権はない

任意後見制度の場合、任意後見人に本人の行動を取り消す権限が与えられません。

仮に本人が自宅の売却を一人で決めてしまっても、任意後見人には取り消しができないということです。

ほかにも、借金の保証人になってしまったり、高額な契約を結んでしまったりしたときに、取消権がないためにトラブルを防げない事態が起こる可能性があります。

任意後見人への報酬が高くなる可能性がある

任意後見人の報酬額は任意後見契約の内容に準拠します。

家庭裁判所によって報酬が定められる法定後見とは異なり、全て契約内容次第です。

親族を選任する場合は報酬を低く抑えることもできますが、専門家へ依頼すると高額な報酬がかかる可能性もあります。

契約内容にて報酬の上限は設定されていないため、依頼先次第では法定後見制度よりも高くなる可能性を認識しておきましょう。

死後の身辺整理や財産管理などの作業は依頼できない

任意後見制度は本人が死亡した時点で契約終了となるため、死後の身辺整理など事務手続きができません。

法定後見人は本人が亡くなったあとも一定の範囲内で財産管理や死後の事務処理ができます。

もし、死後に任意後見人に財産管理や死後の事務処理を任せたい場合、任意後見契約とは別に死後事務委任契約を締結する必要があります。

任意後見契約で対応できるのは、あくまでも本人存命中ということをよく認識しておきましょう。

任意後見制度を利用する流れ

任意後見制度の契約締結から監督人選任までの流れは、以下の通りです。

  • 任意後見人になる人を決める
  • 任意後見受任者と話し合いを行い、契約内容を決める
  • 任意後見契約を締結する
  • 任意後見監督人選任の申立てを行う
  • 任意後見監督人の選任する

5つのステップを順番に紹介します。

STEP1:任意後見人になる人を決める

まず始めに自分の大切な財産を誰に任せるのかを決めます。

将来、任意後見人になる人のことを任意後見受任者と呼びます。

日常生活でも支援を頼みたい場合、親族や友人から選任することになるでしょう。

財産の保護を含めて依頼したい場合、弁護士や司法書士を始めとした専門家がおすすめです。

STEP2:任意後見受任者と話し合いを行い、契約内容を決める

任意後見人のサポート内容は、任意後見契約によって具体的に定められます。

任意後見人受任者とよく話し合ってどのようなサポートをしてもらうのか事前に決めておきましょう。

支援は契約内容に基づいて行われるため、契約内容に不備があると支援してほしいことができないといった不都合が生じてしまいます。

依頼する方は、自分の判断力が低下したときに何を手伝ってほしいのか、ある程度考えておく必要があります。

STEP3:任意後見契約を締結する

契約内容と任意後見人が決まったら、任意後見契約書の作成を経て契約を締結します。

契約書は公正証書の形式にする必要があるため、公証役場にて契約書を作成してもらいます。

契約書ができたら公証人が法務局へ任意後見契約の登記を依頼して契約は完了です。

契約内容が複雑になりそうな場合は、専門家へ依頼して内容を考えてもらうのも選択肢の一つです。

STEP4:任意後見監督人選任の申立てを行う

認知症など、本人の判断力が低下し始めたタイミングで家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てを行います。

申し立てができるのは、以下の方です。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族
  • 任意後見受任者

本人以外の申し立ての場合は、本人の同意が必要です。

STEP5:任意後見監督人の選任する

家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時点で、任意後見契約がスタートします。

そのあとは、任意後見受任者が任意後見人として本人の法律行為を代理で行います。

任意後見制度にかかる費用

任意後見制度の手続きを進めるには費用がかかります。

必要な費用は、次のとおりです。

  • 書類作成費用
  • 後見監督人の選任にかかる費用
  • 後見人・後見監督人の報酬

それぞれの費用について、詳細を説明します。

書類作成費用

任意後見契約を締結するにあたって、公証役場にて公正証書を作成しなければなりません。

公正証書を作成する際に必要な費用は、以下の通りです。

公正証書策定手数料 一つの契約につき11,000円
※証書の枚数が4枚を超えるときは、1枚ごとに260円プラスされる
収入印紙代 2,600円
法務局への登記嘱託手数料 1,400円
書留郵便料金 数百円程度
正本・謄本の作成手数料 1枚あたり250円
公正役場に提出する公的書類の取得費用 1通あたり数百円程度

専門家へ依頼せずに全て自分で手続きを完結させる場合、2万円前後の費用が必要です。

弁護士や司法書士へ依頼する場合は、報酬として別途10~20万程度かかります。

後見監督人の選任にかかる費用

後見監督人の選任申し立てを行う際にも費用が必要です。

後見監督人の選任申し立てに必要な費用を一覧表にまとめました。

申立手数料 800円
後見登記手数料 1,400円
郵便切手代 数千円程度
提出に必要な公的書類の取得費用 1通あたり数百円程度
鑑定料金(必要な場合のみ) おおむね10万円以下

家庭裁判所が鑑定を必要と判断した場合、鑑定のための費用が5〜10万円程度必要になります。

念のため、鑑定費用込みで費用を計算しておくと良いでしょう。

弁護士や司法書士など専門家へ手続きを依頼した場合は、別途報酬が10~20万程度かかります。

後見人・後見監督人の報酬

任意後見人への報酬は任意後見契約を結ぶ段階で決定されます。

相手が納得するなら無報酬でも問題ありません。

親族が後見人となる場合は無償のケースが多いですが、親族以外の専門家に依頼する場合はそれなりの報酬が必要です。

任意後見監督人への報酬は、家庭裁判所が状況を勘案しつつ決定します。

任意後見人とは違い、任意後見監督人への報酬は必要です。

以下の表は、後見監督人へ支払う報酬の一例です。

管理財産額 報酬
5,000万円以下 11,000〜22,000円/月額
5,000万円以上 27,500〜33,000円/月額

家庭裁判所によって報酬の目安は異なります。

家族信託を活用する方法も

信頼できる人へ財産の管理を任せる制度として、任意後見人制度のほかに「家族信託」があります。

家族信託は信託契約で定めたルールに従って、委任された人が本人から譲り受けた財産を管理します。

家族信託は本人の死後も契約内容に基づいて財産管理ができますが、生活のサポートや介護サービスへの対応はできません。

この2つの制度は併用ができます。

家族信託にて財産管理の柔軟性を確保しつつ、任意後見制度を活用して日常生活のサポートや介護サービスの契約など、身の回りの生活をサポートすることが可能です。

2つの制度を上手く活用して、円滑なサポートを試みましょう。

任意後見制度の疑問や不安は司法書士に相談しよう!

任意後見制度は、本人の日常生活のサポートや円滑な財産管理に欠かせない制度です。

事態に直面してから法定後見人を選ぶよりも、早めに任意後見制度を活用してトラブルのない財産移譲を進めるようにしましょう。

任意後見制度のみでは足りない内容は、家族信託を利用して補うとより過不足のないサポートができるようになります。

杠司法書士法人では、任意後見契約書の作成や家族信託の利用について相談を承っています。

ご自身やご家族の将来についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

皆さまにとってより良い選択肢をご提案させていただきます。

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