マンション管理組合を法人化するメリット
不動産
|更新日:2022.11.29
投稿日:2013.03.18
「管理組合法人の理事長の変更登記をお願いします」・・・と、ある依頼を受けた時のことです。
当該法人登記簿謄本を見ると、ここ数年まったく理事長の変更登記が行われていないことが判明しました。マンション管理組合法人の理事長の任期は原則2年で、同一人が再任しても登記が必要となります。
組合にとっては手間であることは間違いなく、司法書士に依頼すれば費用もかかります。ですが、マンション管理組合を法人化する際のデメリットといえばこれだけといっても過言ではありません。
管理組合を法人化することにどんな意味があるのだろうと疑問に思う方が多いと思います。実は、健全に運営がなされている間は、法人化していなくても問題はあまり表には出てきません。
にもかかわらず、近頃法人化される管理組合が増えているのはご存知でしょうか。この事実は、管理組合が法人化なくしてはその運営に支障をきたしているということに他ならないのです。
では、事例をみながら法人化のメリットをご紹介していきましょう。
(1) 不動産登記において名義人になれる
不況の影響か競売にかかる物件が増加傾向にあります。競売ではどんな人が入札し、競落するのかが分からず、新入居者について不安が募る組合も少なくないと聞きます。
「それならば組合で購入し、集会所にしたい」という希望も出ますがマンション管理組合は、人や会社とは違い権利義務の主体となることができません。
そのため、集会所とするべき一室を管理組合の名義で登記することができず、管理組合の理事長の個人名義で登記するもしくは区分所有者全員の共有名義で登記することとなるのです。
しかし、理事長の名前で登記すると登記簿だけでは理事長個人の財産か管理組合の財産か見分けがつかないこと、理事長交代の際に名義を新代表者に移す必要があること(その都度登記費用がかかる)等の問題が生じてきます。
また、区分所有者全員の共有名義というのは、戸数の多いマンションでは現実的ではありません。法人化すれば組合法人名義で登記できますし、上記の問題がすべて解決します。
(2)組合名義での銀行口座の開設ができる
理事長による不正が少なからず発生している管理組合もあるようです。「管理組合名義で口座開設したい」と声が上がりますが、管理組合名義では銀行口座は作れず理事長名義で作成することとなります。
しかしこれでは財産の名義人が不明確で、財産の保持・管理の面で脆弱となり上記のような不正の温床にもなりかねません。
また、理事長が変わるたびに口座の名義変更が必要となり、さらには理事長が死亡した時にその相続人との間で問題が発生する危険も内包しています。
(3)訴訟等の対処がしやすくなる
管理費および修繕積立金等の滞納に頭を痛めている管理組合が多く存在することは想像に難くなく、実際にマンション管理組合からの依頼としては最も多いものの1つです。
悪質な滞納も増加傾向にあることから対応策として支払督促や小額訴訟などを検討される組合が少なくありません。
もちろん訴訟等の法的手続に関しては法人化されていない管理組合でも遂行可能ですが、訴訟当事者として矢面に立つ理事長または訴訟遂行担当者の精神的負担も大きく、提出すべき書類にも差異があり定期的に法的手続をされる組合は法人化を積極的に進めているようです。
(4) 金融機関からの借入に有利な面も
マンションの高経年化が進み、大規模修繕の時期に差し掛かっているマンションがたくさん存在しています。多くのマンションでは大規模修繕に備えて各区分所有者から毎月修繕積立金を徴収し積み立てていることでしょう。
しかし、修繕積立金だけでは不足するという事態に陥ることも少なくありません。その場合一時負担金として区分所有者全員から徴収するか、それが不可能であれば金融機関等から借入れることになります。
また、マンションの一室を購入するにあたって資金が不足する場合もあるでしょう。
近年、管理組合を法人化せずとも融資が行われる金融機関等も増えていますが、提出書類の煩雑さや理事長の精神的負担、財産(負の財産)の明確性といった部分においては管理組合法人名義で借入をするほうが優れているといえます。
借入の際には融資条件があるため、一概には言えませんが法人のほうが組合の信用性が高まるといえそうです。
以上のように、法人化することによって可能になる手続きがいくつもあります。
このほかにも保険契約の当事者として管理組合法人がこれを行ったり、管理人室の電話回線等の契約当事者になれたりと身近なところにもたくさんのメリットがあります。
そしてこれらは、管理組合の財産管理において有効な手段であるというのが最大のポイントといえます。権利義務を明確にすることによって管理組合財産を適正に管理していくことができるのです。
管理組合の運営を健全に行おうとしているところほど法人化している傾向にあります。
そしてその反射作用として区分所有者(組合員)全体が管理組合の運営及び財産管理に対して意識を高め、積極的に協力するようになることも期待できます。
管理費の滞納・専有部分の競売など、日本国中どのマンションにも起こりうる事態。それが目前に迫る前に、一度法人化を検討してみてはいかがでしょうか。
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