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任意後見の手続きの流れ|必要書類や費用を解説

成年後見

投稿日:2024.12.13

老いや病気によって、判断能力が低下してしまうことは誰にでも起こりうることです。

もしものときに備えて「自分の財産や身の回りのことを誰かに頼みたい」「判断能力が低下したときに備えたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。

任意後見制度は、このような不安を抱える方々が自分自身の将来を計画し、安心して暮らせるようにするための制度です。

この記事では、任意後見手続きをするときの流れや必要な書類、費用について詳しく解説します。

任意後見手続きの流れ

任意後見手続きは、以下のような流れで進めていきます。

  • STEP1:信頼できる後見人を指名する
  • STEP2:どの程度の範囲で支援してもらうかを決める
  • STEP3:必要書類をそろえる
  • STEP4:任意後見契約を結ぶ
  • STEP5:任意後見監督人選任の申立てをする
  • STEP6:家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶ
  • STEP7:任意後見人の支援が開始される

順番に詳細を解説します。

STEP1:信頼できる後見人を指名する

任意後見制度は、今後本人の判断力が著しく低下したときに財産管理や身の上の世話を信頼できる人へ全て委任できる制度です。

判断力が低下する前に委任された人のことを「任意後見受任者」といいます。

任意後見受任者は単に財産を管理するだけでなく、介護や生活面の手配といった本人の人生に関わる重要な決定を代わって行うことになります。

そのため、信頼できる人を慎重に選ぶことが大切です。

任意後見を任せる相手は、特に制限がありません。

家族や友人だけでなく、弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門家を選ぶこともできます。

STEP2:どの程度の範囲で支援してもらうかを決める

任意後見受任者を選んだあとは、具体的な支援内容と範囲を両者間で詳しく決めます。

現在もしくは将来想定されるライフプランを基に、健康状態や財産状況を踏まえて内容を決めましょう。

具体的な支援内容を決めるときの柱となる方針や権限を一覧表にまとめました。

身上監護の方針 ・将来高齢による健康上の問題が発生したときのケア計画を立てる
・在宅ケアや特定施設での生活など、病院での治療など、医療に関する具体的な要望も決める
財産管理の方針 預貯金や株式、土地などの資産について、売却したり貸したり寄付したりなど、具体的にどうするのかを決める
任意後見人の権限と報酬 任意後見人への報酬や支払い方法、どの範囲で任意後見人が業務を担うのかなどを契約にて取り決める

STEP3:必要書類をそろえる

任意後見契約を結ぶためには、公証役場にて公正証書を作成しなければいけません。

公証役場にて提出が必要な書類は次の通りです。

本人のみ必要な書類 戸籍謄本(3ヶ月以内)
本人と後見人それぞれ必要な書類 ・印鑑登録証明書(3ヶ月以内)
・住民票(3ヶ月以内)
・本人確認書類
・実印

書類の多くは役所で取得可能です。

直前になって慌てずに済むように早めにそろえておきましょう。

STEP4:任意後見契約を結ぶ

契約内容をよく検討し、内容の合意が得られたら任意後見契約を公正証書にて締結します。

契約書作成が行われるのは公証役場です。

最寄りの公証役場にて、本人もしくは受任者、あるいは委任状を持った代理人が公証役場を訪問し、契約書作成の打ち合わせを行います。

病気や怪我などで公証役場へ行くことが難しい場合は、公証人に出張を依頼することもできます。

ただし、出張を依頼するときは、出張費用がかかるため注意しましょう。

打ち合わせを終えると任意後見契約書が作成されます。

後日、公証役場から任意後見契約書が郵送されるので、内容を確認して間違いがなければ再度公証役場へ出向きます。

公証役場で署名と捺印を行えば、任意後見契約は成立です。

契約書の作成費用の目安として基本手数料が11,000円、登記嘱託手数料1,400円、収入印紙代2,600円、そのほか切手代などが必要です。

STEP5:任意後見監督人選任の申立てをする

本人の判断能力が低下してきたとき、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てます。

任意後見監督人が選ばれないと任意後見人契約は効力を発揮しません。

任意後見監督人とは、任意後見人が契約内容通りに仕事をしているか、チェックする立場の人です。

任意後見監督人選任の申立てにあたって、必要な書類は次の通りです。

  • 申立書
  • 申立添付書類
  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 任意後見契約公正証書の写し
  • 本人の成年後見などに関する登記事項証明書
  • 本人の診断書
  • 本人の財産に関する資料(預貯金通帳や証券口座の証明書、不動産登記事項証など)

任意後見監督人への支払いは、家庭裁判所が決めた金額になります。

任意後見監督人の報酬の目安は、以下の通りです。

管理財産額が5,000万円以下 月額1~2万円
管理財産額が5,000万円以上 月額2万5,000~3万円

STEP6:家庭裁判所が任意後見監督人を選任する

任意後見監督人選任の申立てを行ったあとに、面談によって、以下の3つの調査が行われます。

  • 申立人調査
  • 任意後見受任者調査
  • 本人調査

申立人調査と任意後見受任者調査では、申立人と任意後見受任者が裁判所へ出向いて、申立までの経緯と本人の状態、任意後見受任者が適任者であるかを調査します。

本人調査で行うのは、意思の確認と心身状態のチェックです。

家庭裁判所へ行くのが難しいときは、家庭裁判所の調査官の自宅や施設の訪問による聞き取りにも対応してくれます。

家庭裁判所は調査結果と提出された書類を基に総合的な判断を下し、任意後見監督人を選任した趣旨の審判書を郵送します。

選ばれた任意後見監督人は、家庭裁判所にて決められた期限までに監督事務報告書と財産目録、収支予定表を提出しなければいけません。

STEP7:任意後見人の支援が開始される

全ての過程と手続きを完了した時点で、任意後見受任者から任意後見人となり、代理権が行使できるようになります。

任意後見制度の利用にかかる費用

任意後見契約を利用する際には、書類の発行や郵送代などいくつかの費用がかかります。

任意後見契約にかかる費用は、以下の通りです。

公証役場に支払う手数料 11,000円
法務局に支払う印紙代 2,600円
登記嘱託料 1,400円
書留郵便費用 540円
正本謄本の作成手数料 1枚250円
専門家への支払報酬 10万円前後(弁護士や司法書士に依頼する場合)

任意後見契約の締結後に判断能力が低下して任意後見をスタートするときは、任意後見人となる人や配偶者または4親等内の親族が任意後見監督人の選任申立てを行います。

任意後見監督人の選任申立ての際に必要となる費用は、次の通りです。

申立手数料 800円
後見登記手数料 1,400円
郵便切手代 3,000円〜5,000円程度
診断書の作成料 数千円程度
本人の戸籍謄本、住民票または戸籍附票の発行費用 1通につき数百円程度

そのほか、家庭裁判所が必要と判断したときは鑑定が実施される場合があります。

鑑定とは、本人の判断能力がどの程度あるのかを医学的に判断するための手続きのことをいいます。

鑑定にかかる費用はおおよそ5〜10万円程度です。

任意後見が終了するとき

任意後見契約は、以下のようなケースになった場合に終了します。

  • 契約で定めた期間が満了したとき
  • 任意後見受任者が死亡したとき
  • 任意後見人自身が判断能力を失ったとき

任意後見人が認知症などを患い、判断力が低下した場合は、新たな任意後見人が選ばれるか、または法定後見に移行するなどの手続きが必要になります。

途中で契約内容の変更や契約をやめることはできる?

任意後見契約を変更することによって、契約そのものを止めることも可能です。

任意後見契約の解除は、家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶ前と後で、手続きが異なります。

選任前 公証人の認証によっていつでも解除可能
選任後 ・正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て契約解除ができる
・申立てができるのは本人または任意後見人のみ

途中で解除せずに済むように、契約内容を十分に検討し、将来起こりうる状況も想定しておくことが大切です。

任意後見制度を利用する前に知っておきたい注意点

任意後見制度を利用する前に認識しておきたいポイントは、以下の3つです。

  • 契約の効力を発生させるには家庭裁判所への申立てをする必要がある
  • 任意後見開始後は自由に制度を終了することができない
  • 死後の事務処理は対応できない

それぞれについて詳細を説明します。

契約の効力を発生させるには家庭裁判所への申立てをする必要がある

契約を取り交わしただけでは、任意後見人の効力は有効になりません。

本人の判断力が低下して任意後見が必要と思われる状態に陥ったときは、家庭裁判所に申立てをして、裁判所の審判を得る必要があります。

家庭裁判所による任意後見監督人の選任を経て、初めて契約書の効力が有効になります。

任意後見人の制度を利用するには、家庭裁判所への申立てを忘れないようにしましょう。

任意後見制度は判断力の低下を察知して申立てに至るため、本人の状態の変化を把握しておくことも大切です。

把握できずに誰も申立てしないと、いつまで経っても任意後見制度を利用できません。

任意後見開始後は自由に制度を終了することができない

任意後見を始めたら自分のタイミングで勝手に終了できません。

一度始めた任意後見を終わらせるためには、裁判所の許可が必要です。

正当な理由がある場合に限って契約の解除をすることができます。

契約解除の申立てができるのは、本人もしくは任意後見人のみです。

なお、任意後見がスタートする前は当事者どうしの取り決めを解消するだけなので、契約の解除は簡単にできます。

死後の事務処理は対応できない

任意後見制度では、本人の死亡によって任意後見契約が終了するため、任意後見人は死後の事務に携わることはできません。

死後の事務まで携わるケースでは、死後事務委任契約を締結しておく必要があります。

死後事務委任契約では、以下のような手続きを委任できます。

  • 葬儀や墓石などの手配
  • 死亡届の提出
  • 埋葬の手続き
  • 遺品整理

任意後見と死後事務委任を組み合わせることで、生前から死後までトータルで任せられます。

自分で任意後見制度の手続きをすることはできる?

任意後見制度の手続きを全て自分で済ませることも可能ですが、素人の手続きでは想像以上に時間がかかります。

必要書類の準備や契約書の作成など、専門的な知識や経験がないと、不備が生じてしまう可能性も少なくありません。

専門家の視点からアドバイスを受けることで、より適切な契約内容にすることができます。

スムーズかつ後悔のない手続きを進めるために、司法書士や弁護士などに相談することをおすすめします。

任意後見制度を利用する際には専門家に相談を

任意後見制度は、その方に適したサポートを信頼できる人に依頼する制度です。

本人の判断力が低下する前に、自分の意思で信頼できる人を選べるのは任意後見制度の大きなメリットです。

しかし、実際に任意後見制度を利用するとなると、契約の締結からスタートまでやや手続きが難解であることは否めません。

特に、契約内容の検討や制度のスタートに至るまでの過程は、素人の手続きでは何かと苦労が多いです。

そのため、任意後見制度を利用する際には、専門家への依頼を検討したほうが良いでしょう。

杠司法書士法人では、任意後見制度の利用から契約書の作成、ご本人が亡くなったあとのことまで、トータルサポートを行っています。

任意後見制度の利用から関連する心配ごとの相談まで承っておりますので、まずはお問い合わせください。

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