
相続手続きの費用は誰が払う?費用相場と安くする方法も解説
相続
投稿日:2025.02.27
相続手続きにかかる費用を誰が払うのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
相続の手続きは複雑で時間もかかるため、弁護士や司法書士に依頼するケースが多く見られます。
もし、その費用を自分で負担する場合「具体的にどのくらい必要なのか」「負担できる金額なのか」も心配なところです。
この記事では、弁護士や司法書士への依頼費用や、そのほかの手続き費用を誰が払えば良いのかについて解説します。また、費用を安く抑える方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
相続手続きにかかる費用は誰が払う?
結論からいうと、相続手続きの費用は誰が払ってもかまわず、法律上での決まりはありません。
費用の負担については、相続人同士の話し合いで決まるため、後からもめ事にならないよう先に話し合っておく必要があります。
しかし、話し合いといっても何を基準にどのように決めたら良いのか困ってしまうこともあるでしょう。
そこで、相続手続きにかかる費用の支払い方について3つのケースを紹介します。
財産を相続する人が払う
相続人の中で誰か1人が財産を受け継ぐなら、相続した人が払うのが一般的です。
相続しない人は得る財産がないため、費用を負担する必要がないと考えられます。
ただし、例外もあります。
たとえば、故人の妻が自宅である不動産を相続する場合、親の負担を軽くするために子が不動産の相続費用を負担するといったケースです。
必ずしも相続する人が払うという決まりはないため、家族間であれば話し合いをして柔軟に対応することが可能です。
一つのポイントとして、財産を相続する人が費用を負担することが多いということを押さえておきましょう。
相続財産から費用を払う
故人が残した財産から費用を払う方法もあります。
この場合、相続人が費用を負担をするのではなく、故人の預貯金から費用を差し引きます。
預貯金から直接費用を引き出して支払うには、先に預貯金の相続だけは済ませておかなければなりません。
亡くなった方の口座は凍結されてしまうため、預貯金の相続手続きが終わるまでは引き出せなくなるからです。
預貯金の相続を後回しにする場合は、相続人の誰かが一度費用を立て替えて、後から清算する必要があります。
ほぼ価値がなく負担になるような不動産を引き継ぐ場合は、相続財産から費用を出す方法を選んでも良いでしょう。
相続人が平等に払う
相続人全員で平等に財産を分割するなら、費用も平等に支払う方法が適しています。
この方法を取る場合は代表者が費用を立て替えて、後からほかの相続人に支払い分を請求することが多いです。
一方で、不動産は1人の相続人だけが継承して、残りの財産は全員で平等に分けるというケースもあるでしょう。
その場合、不動産にかかる費用は相続する人が払い、そのほかの相続にかかる費用を全員で平等に払う方法も取れます。
相続手続きにかかる費用と相場
相続手続きにかかる主な費用は、以下のとおりです。
- 不動産登記の費用
- 遺産分割協議の費用
- 相続人調査と相続財産調査の費用
- 遺言書の作成費用
- 弁護士や司法書士などの専門家に支払う報酬
どのような費用がいくらかかるのかを詳しく見ていきましょう。
不動産登記の費用
遺産の中に不動産がある場合は、不動産の名義を相続人に変更するための登記費用がかかります。
登記にかかる費用の種類と相場は、以下のとおりです。
相続登記に必要な書類の取得費用 | 数千円~1万円程度 |
---|---|
登録免許税 | 固定資産評価額の0.4% |
司法書士への報酬 | 5~15万円程度 |
登記費用は、一般的には不動産を引き継ぐ人が払います。
単独ではなく複数の相続人の共有名義にする場合は、平等に費用を負担するのが公平です。
遺産分割協議の費用
遺産分割協議とは、民法で定められた法定どおりの相続ではなく、相続人の間で話し合って相続の割合を変えることです。
遺産分割協議をしたい場合は、遺産分割協議書の作成が必要となります。
専門家に頼まず自分で作成すれば、必要な書類を取得する費用だけで済むため、数千円~1万円程度で済むことが多いです。
専門家に依頼する場合は、書類の取得費用のほかに、3~10万円程の費用が発生します。
話し合いがまとまらず調停に発展する場合はさらに弁護士費用がかかり、この費用は調停の申し立てをした依頼者の支払いとなります。
相続人調査と相続財産調査の費用
相続人の人数がはっきりしない場合は相続人調査を行い、故人の財産として何があるのか不明なら相続財産調査を行います。
自分で調査が難しいときは両方の調査を専門家に依頼して行わなければなりません。
依頼先や調査の複雑さにより大きく差が出ますが、どちらの調査も5~30万円程度かかります。
1人だけが費用を負担するのは公平性に欠けるため、遺産の中から払ったり、相続人たちで平等に負担したりするのが公平な方法です。
遺言書の作成費用
遺言書の作成は被相続人が生前に行うものです。
自筆の遺言書は無料で作れますが、原本を法務局に保管する遺言書保管制度を使うと、1件につき3,900円の手数料がかかります。
公正証書で作成する費用は、2~5万円程度です。
専門家に依頼して作成する場合は、5~30万円程の費用がかかります。
遺言書作成の費用は遺産を残す本人が払うのが一般的です。
相続手続きの費用の支払いについてよくあるトラブルと避けるための予防対策
相続手続きにかかる費用の支払いにトラブルが生じることも珍しくありません。
自分がトラブルに巻き込まれないために予防対策を把握しておくと安心です。
費用の立替
費用の支払いの際に相続人の中の1人が立て替えて支払い、後からほかの相続人に請求をすることも少なくないでしょう。
いざ請求をすると、約束していた額の費用をなかなか払ってもらえないといったトラブルも起こります。
相手を信用して口約束にすることがほとんどなので、遺産分割協議書を作るなら費用の支払いについても明記しておくのがおすすめです。
相手の金銭的都合にもよりますが、費用を支払う前にある程度の額を集めておくという対策もあります。
遺産の使い込み
相続人の中には費用の支払いに使うはずの遺産を使い込んでしまうような人もいます。
そのような危険性がある人に遺産を預けないのが一番ですが、信頼できるはずの人が使いこんでしまったということもあるかもしれません。
遺産の使い込みが発覚したらすぐに損害賠償請求をしましょう。
損害が生じたことが分かってから3年以内に損害賠償請求をする必要があります。
特定の相続人への過剰な負担
費用の支払いについて事前に話し合っていないと、いつの間にか特定の1人に負担がかかっていたという事態にもなりかねません。
全員で平等に遺産を分けるのなら、費用の負担も平等にしなければ不満が生まれます。
支払いを済ませてしまった後にほかの相続人に交渉しても、費用を回収するのは難しいかもしれません。
相続手続きを行う前に相続人の間で十分に話し合っておくことが大切です。
相続放棄者による費用負担拒否
複数の相続人の中で相続放棄を選ぶ人がいるケースもあります。
相続放棄したら後のことは自分には関係ないと思いがちなため、相続にかかる費用を支払い拒否することも想定できます。
ほかの相続人がそれで良いと思えない場合は、相続放棄をする際にも費用を負担することに同意してもらわなければなりません。
遺産分割協議で費用負担を話し合わなかったことによる認識のずれ
相続手続きに慣れた人でない限り、費用の負担を誰がするかまでは考えが及ばず、後からトラブルになるケースも珍しくありません。
ほかの相続人は「代表者である長男が払ってくれる」と思っていても、長男はみんなで負担するつもりでいるかもしれません。
事前に話し合わないまま手続きを進めるとお互いに認識のずれが生じます。
遺産分割協議の際に費用の負担をどのようにするかまで、細かく話し合っておくのがトラブル防止のために重要です。
不公平な費用の負担割合
費用を負担する割合が不公平だと感じてしまうと、相続人の間でトラブルに発展する可能性があります。
遺産分割協議で相続財産の割合を変えたにも関わらず、費用の負担割合を全員同じにしたりすると納得がいかないでしょう。
遺産を引き継ぐ割合と同じだけの負担割合にするなど、全員が納得のいく形を取るのが最善策です。
専門家への費用が予想より高かったときの負担増
専門家への費用が当初の予定よりも高くなってしまうケースもあるでしょう。
事前に相続人の間で費用の負担について決めていても、予想外の費用の増額があると払えない相続人も出てくる可能性があります。
そのようなときにほかの相続人で増額分を負担するのか、払えない分を分割で支払っていくのか、事前に決めておくことが大切です。
費用精算の不透明さ
相続手続きの際には、代表者が一時的に立て替えをして支払うケースが多々あります。
その際に、必ず領収書を保管しておくようにしましょう。
見積りだけでは実際に払った金額が正確に分からず、ほかの相続人から不信感を持たれる原因にもなりかねません。
高額の支払い以外にも必要書類の取得費用など、清算する予定の費用は全て領収書を保管しておくことが大切です。
相続手続きにかかる費用を安く抑える方法
遺産額や手続きの種類が多いと、相続手続きにかかる費用は増します。
そこで、少しでも費用を安くする方法を紹介します。
自分で相続手続きをする
専門家に依頼する手続きの内容が多かったり、手続きの内容が複雑だったりすると、その分の費用が膨れ上がります。
専門家に依頼せずに自分でやれば費用は大幅にカットできますが、全てを自分で行うのは難しいケースが多いです。
そこで、役所で書類を発行してもらうといった簡単な作業を自分でやるだけでも費用の節約につながります。
専門家と相談して自分でできそうなところを教えてもらい、できる部分の費用を削るのが得策です。
ほかの手続きもまとめて依頼する
専門家の事務所ごとに料金体系は異なりますが、1つの事務所でいくつかの手続きをまとめて依頼することで割安になるケースがあります。
複数の手続きをまとめて割安のセット価格にしている事務所もあります。
セット価格で依頼するなら、その中に頼みたい手続きが入っているか、どの手続きが除外になるかを事前にしっかり確認しましょう。
登録免許税の免税措置を受ける
登録免許税とは、不動産の登記手続きをする際に支払う税金のことです。
通常は固定資産評価額の0.4%の税額を納める義務がありますが、免税借地が適用されれば、一部免除や全額免除が受けられます。
免税借地が受けられるのは、以下の2つのケースです。
- 先代の相続人が登記をせずに亡くなり次の代の相続が発生したケース
- 評価額が100万円以下の土地を相続するケース(建物は対象外)
先代が相続登記をしていなければ、自分の代の相続登記も合わせて2回分の登録免許税がかかりますが、1回分は免除されます。
また、相続する土地の評価額が100万円以下なら税額は0円となります。
相続手続きにかかる費用負担に関するよくある質問
相続手続きにかかる費用について、よくある質問をまとめたので参考にしてください。
相続手続き中に現金が足りなくなった場合は誰が払う?
遺産のほとんどが不動産で現金が少ない場合には、手続きの途中で現金が足りなくなってしまうこともあるかもしれません。
その際には相続人が費用を負担することになります。
一度に払いきれないときには、税金の納付や専門家への支払いを分割にできないかを相談してみましょう。
亡くなった人の預金はどういう場合に使えるの?条件は?
預金の相続を済ませてしまえば制限なく相続人が使えますが、相続前は預金の引き出しができません。
しかし、葬式費用や遺族の生活費など、緊急で現金が必要になるケースもあります。
そのようなときには、相続前でも預金を引き出せる「払い戻し制度」を利用できます。
この制度を使えば、ほかの相続人の利益を害さない一定額までの引き出しが可能です。
一定額とは1人につき「口座ごとの預金額 × 1/3 × 1/法定相続人の数」で計算した額になります。
預金額が600万円で法定相続人が2人なら「600万 × 1/3 × 1/2」で計算して、100万円が1人につき引き出せる額です。
相続前でも一定額までなら預金を使えます。
相続放棄をした場合の費用負担はあるの?あるとすればどれぐらい?
相続放棄をする際にも手続きの費用は発生します。
費用の相場は、以下のとおりです。
自分で手続きをする場合 | 数千円~1万円程度 |
---|---|
司法書士に依頼する場合 | 3~5万円 |
弁護士に依頼する場合 | 5~10万円 |
費用の負担は相続放棄を申し立てる本人の負担となり、遺産の中から支払うことはできません。
相続手続きのご相談は杠(ゆずりは)司法書士法人へ
この記事では、相続にかかるさまざまな手続きの費用を誰が払うのかについて解説してきました。
費用の支払いでトラブルになることも多々あります。
事前に相続人の間でしっかりと話し合うことが大切ですが、決して口約束だけで済ませないようにしましょう。
遺産分割協議書に費用の支払いについて明記するなどの対策が必要ですが、相続の知識がなければ自分で対策するのも難しいでしょう。
取り決めの際に抜け落ちる点がないよう、プロのアドバイスを受けながら進めるのが賢明な方法です。
杠(ゆずりは)司法書士法人では、相続のご相談を受け付けております。
トラブルを防いで安心な未来へつながるよう、お手伝いをさせていただきます。
相続についてのお困りごとは、お気軽に杠(ゆずりは)司法書士法人へご相談ください。
本記事に関する連絡先
フリーダイヤル:0120-744-743
メールでのご相談はこちら >>