
相続不動産の名義変更を自分で行う方法|手続きにかかる費用や必要書類、期限も解説
不動産
投稿日:2025.02.27
相続財産に不動産が含まれている場合は、名義変更が必要です。
相続不動産の名義変更を怠ると、将来的に相続が複雑になったりペナルティを受けたりと、不利益を被る可能性があります。
そのため、不動産の相続が発生した時点できちんと名義変更することが大切です。
この記事では、相続不動産の名義変更の方法について解説します。
手続き期限や必要書類、費用、手順なども詳しく説明するので、自分で名義変更したいと考えている方はぜひ参考にしてください。
相続不動産の名義変更とは
相続不動産の名義変更とは、故人が所有していた不動産の名義を相続人の名義に変更する手続きを指します。
法務局が管理する登記簿には、以下のような情報が記録されています。
- 不動産の所在地
- 不動産の用途
- 不動産の面積
- 所有者の氏名や住所
不動産の所有者が変わった際は法務局に申請して、不動産の名義を変更しなければなりません。
売買や贈与だけでなく、相続により故人の不動産を引き継いだ場合も名義変更が必要です。
相続登記との違い
「相続登記」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、相続登記と相続不動産の名義変更は同じ意味を表しています。
そもそも「登記」とは、権利などを公示する制度のことです。
登記には不動産登記、商業・法人登記や債権譲渡登記などの種類があり、そのなかでも相続登記は、不動産の所有権を故人から相続人へ移す手続きを指します。
不動産における「名義」とは所有者を意味するため、表現は異なりますが、相続登記と相続不動産の名義変更は同じ手続きを意味するといえます。
相続不動産の名義変更をする必要性
相続不動産を名義変更すべき主な理由は、次の4つです。
- 相続不動産の名義変更は義務化されている
- 不動産をめぐる相続の複雑化を阻止する
- 共有持分の売却を防ぐ
- 法定相続分の差し押さえを回避する
それぞれ詳しく解説します。
相続不動産の名義変更は義務化されている
法改正により、2024年4月1日から相続不動産の名義変更は義務化されました。
法改正以前は、相続不動産の名義変更は任意で行われていましたが、手続きが行われないことで所有者不明の不動産が増加し、問題が深刻化したことを受けて義務化が決定されました。
相続人は、不動産の所有権を取得してから3年以内に名義変更しなければなりません。
また、遺産分割協議により相続人を決定した場合は、協議が成立した日から3年以内が申請期限となります。
正当な理由なく期限内に名義変更しなければ、10万円以下の過料を科される場合があります。
なお、2024年4月1日以前に発生した相続も名義変更義務化の対象です。
過去の相続については2027年3月31日が申請期限となるため、名義変更が完了していない場合は早めに手続きを行いましょう。
不動産をめぐる相続の複雑化を阻止する
相続不動産の名義変更をせずに放置しておくと、不動産の相続に関わる人数が増え、遺産分割協議が困難になるおそれがあります。
たとえば、親の不動産を長男、次男、三男の兄弟3人が引き継いだにもかかわらず、名義変更を怠ったケースを考えてみましょう。
この状態で長男が亡くなると、長男の妻や子が相続人に加わることになります。
このように相続不動産に関わる人数が次々に増えてしまうと、いざ話し合いの場を設けようとしても、関係者が集まること自体が難しくなります。
さらに、疎遠な親族同士の話し合いはスムーズに進まず、合意に至るまでに時間がかかることも少なくありません。
相続不動産をめぐる権利関係を複雑化させないためには、早期の名義変更が重要です。
共有持分の売却を防ぐ
共有持分の売却から起こるトラブルを防ぐためにも、遺産分割協議を行い、相続不動産の名義変更を行うことは大切です。
民法では、法定相続人の範囲や順位、相続する財産の割合などが「法定相続分」として定められています。
不動産の相続が発生すると、遺産分割協議により決定した相続人に不動産の名義を変更するケースがほとんどです。
しかし、法定相続分で定められた割合に従い、法定相続人全員が不動産を共有する形で引き継ぐこともできます。
その結果、不動産を共有している相続人が自分の持分を第三者に売却することも可能です。
相続人と第三者が不動産を共有する状態になると、不動産の管理が円滑に行われなくなったり、権利関係が複雑化したりするおそれがあります。
このように相続不動産の共有はトラブルに発展する可能性があるため、あまりおすすめできません。
協議のうえで相続人を決め、相続不動産の名義変更を行っておきましょう。
法定相続分の差押さえを回避する
相続不動産の名義変更を怠っていると、不動産が差し押さえられるリスクがあります。
たとえば、父の不動産を母、長男、次男で引き継いだものの、名義変更せず放置したケースを考えてみましょう。
長男が借金をしていた場合、債権者は相続人の代わりに法定相続分に基づいて相続登記を行い、不動産のうち長男の持分を差し押さえることができます。
これは「債権者代位による登記」と呼ばれ、民法で定められている権利です。
本来その不動産を相続するはずの親族にまで迷惑がかかるおそれがあるため、早期に遺産分割協議を行い、相続不動産の名義変更を完了させることが重要です。
相続不動産の名義変更は自分でできる?
相続不動産の名義変更手続きは、自分で行うことができます。
特に、関わる相続人が少ない場合や遺言書が残されている場合であれば、自分で手続きを進めることも難しくはありません。
しかし、次のようなケースでは手続きが容易ではないため、専門家へ依頼することをおすすめします。
- 相続人が多いうえに遺言書がない
- 名義変更を長年放置して相続関係が複雑化している
- 相続不動産の数が多く相続税もかかる
- 名義変更を急いで進めたい
これらの状況では、専門家のサポートを受けることで手続きをスムーズに進めることができ、時間や労力を節約できます。
相続不動産の名義変更に必要な5つのステップ
自分で相続不動産の名義変更を行うなら、手続きの流れを理解しておくことが大切です。
相続不動産の名義変更をする際の5つのステップを紹介します。
1. 登記事項証明書で現在の名義を確認する
まずは登記事項証明書を参照して、対象となる不動産の現在の名義を確認します。
過去の相続において名義変更がされていない場合は、さかのぼって名義変更する必要があるためです。
登記事項証明書は全国の法務局、およびオンラインで取得できます。
2. 戸籍謄本を集めて法定相続人を明らかにする
遺言書で不動産の相続人が指定されていない場合は、法定相続人全員で協議して決める必要があります。
そのため、誰が不動産を相続する権利を持っているのか、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めて明らかにします。
戸籍謄本は、被相続人の本籍地がある役所などで取得可能です。
なお、前述の通り法定相続人の範囲と順位は民法で定められており、被相続人の配偶者は常に相続人になります。
そのほかの法定相続人の範囲と順位は、次のとおりです。
第1順位 | 被相続人の子 |
---|---|
第2順位 | 被相続人の父母、祖父母 |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 |
3. 遺産分割協議をする
遺言書がなく、法定相続人が2人以上いる場合は、遺産分割協議により不動産の相続人を決定します。
協議で合意した内容は遺産分割協議書にまとめ、法定相続人全員が署名し、実印を押印します。
遺産分割協議書を法務局に提出する際は、印鑑証明書の添付も必要です。
4. 登記申請書を作成する
相続不動産の名義変更手続きでは、申請書を作成して提出する必要があります。
遺言書による相続と遺産分割協議による相続では申請書の書式が異なるため、注意しましょう。
また、申請書の作成と提出はオンラインでも行えますが、戸籍謄本などは法務局の窓口に持参するか、郵送しなければならないことにも留意してください。
5. 法務局に申請する
必要書類がそろったら、法務局に相続不動産の名義変更を申請します。
申請先は、相続不動産の所在地を管轄する法務局です。
申請は書類を直接法務局へ持参する以外に、郵送でも行えます。
ただし、提出した書類に不備があり、補正が必要な場合には、郵送で申請しても法務局に出向く必要があります。
郵便物の往復にも時間がかかるため、スムーズに手続きを進めたい方は法務局への持参がおすすめです。
相続不動産の名義変更を行う期限
2024年4月1日より、相続不動産は所有権を取得してから3年以内に名義変更することが義務付けられています。
もし、期限内に名義変更の手続きが行えない場合は「相続人申告登記制度」を利用しましょう。
相続人申告登記制度とは、仮の相続人を申請することで、名義変更の義務を一時的に果たしたとみなされる制度です。
ただし、この制度を利用しても正式な相続人を改めて申請する必要があります。
できるかぎり早急に遺産分割協議を行い、名義変更手続きを進めるようにしましょう。
相続不動産の名義変更の必要書類
相続不動産の名義変更手続きには、以下の書類が必要です。
- 登記事項証明書
- 登記申請書
- 対象となる不動産の固定資産税評価証明書
加えて必要になる書類は、遺言書と遺産分割協議書の有無により異なります。
遺言書がある場合 | ・遺言書 ・検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合) ・遺言執行者の選任審判謄本(遺言書で遺言執行者が選任されている場合以外) ・被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本 ・不動産の相続人の戸籍謄本 ・住民票の除票または戸籍の附票 ・不動産の相続人の住民票 |
---|---|
遺産分割協議書がある場合 | ・遺産分割協議書 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 ・法定相続人全員の戸籍謄本 ・法定相続人全員の印鑑証明書 ・住民票の除票または戸籍の附票 ・不動産の相続人の住民票 |
遺言書と遺産分割協議書がどちらもない場合 | ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 ・法定相続人全員の戸籍謄本 ・法定相続人全員の印鑑証明書 ・住民票の除票または戸籍の附票 ・不動産の相続人の住民票 |
なお、戸籍謄本は「法定相続情報一覧図」という書類で代替可能です。
法定相続情報一覧図とは相続関係が一覧になった書類であり、公的証明書として機能します。
法定相続情報一覧図は事前に作成し、必要書類とともに法務局に届け出なければなりません。
しかし、一度作成しておけば相続不動産の名義変更以外にも、預金の払い戻しや相続税の申告などのさまざまな用途に使えます。
相続関係の手続きが煩雑になりそうな場合は、作成を検討しても良いでしょう。
相続不動産の名義変更にかかる費用
相続不動産の名義変更では、必要書類の取得費用と登録免許税がかかります。
必要書類の収集にかかる費用
相続不動産の名義変更で必要な書類の取得費用は、次のとおりです。
登記事項証明書 | 600円 |
---|---|
固定資産税評価証明書 | 300円(市区町村により異なる場合があります) |
戸籍謄本 | 450円 |
印鑑証明書 | 300円 |
住民票 | 300円 |
住民票の除票、戸籍の附票 | 200円〜400円 |
登記事項証明書は書面で請求すると600円かかりますが、オンライン請求を利用した場合は480円または500円で取得できます。
印鑑証明書と住民票は、コンビニエンスストアの交付サービスを利用すると200円で取得可能です。
住民票の除票と戸籍の附票の交付手数料は、自治体により異なります。
また、上記は一通あたりの手数料なので、相続人が多いほど書類の取得費用も増加します。
配偶者や子が法定相続人になる典型的なケースでも、数通の戸籍謄本が必要です。
さらに複雑な相続になると、数十通の戸籍謄本が必要になる場合もあります。
登録免許税
登録免許税は、不動産を登記する際に国に納めなければならない税金です。
相続不動産の名義変更では、対象となる不動産の固定資産税評価額の0.4%が登録免許税額となります。
つまり、固定資産税評価額が1,000万円の不動産の登録免許税は4万円です。
この登録免許税の金額を決定するために、固定資産税評価証明書を用意する必要があります。
相続不動産の名義変更をすると相続税がかかる?
財産の相続が発生すると相続税がかかる場合がありますが、相続税と相続不動産の名義変更には直接的な関係はありません。
故人から財産を相続した場合、その財産には相続税がかかります。
ただし、相続税には「3,000万円+(600万円×法定相続人)」の基礎控除額が定められており、この控除額を超えた分に対して税金が課されます。
反対に、相続財産の総額が基礎控除額以内に収まれば、相続税を納付する必要はありません。
したがって、相続税が課税されるか否かにかかわらず、不動産の相続が発生した場合は名義変更が必要であるといえます。
相続税は、故人が亡くなった日から10ヶ月以内に申告しなければなりません。
期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が課される場合があるため、相続税の申告も相続不動産の名義変更とともに早めに準備を進めましょう。
相続不動産の名義変更は専門家に依頼できる
相続不動産の名義変更は自分でも手続きできますが、司法書士に依頼することも可能です。
司法書士は不動産登記のエキスパートであるため、相続不動産の名義変更にも対応できます。
自分で手続きする場合、必要な書類の判断に迷ったり書類の収集に手間取ったりするでしょう。
しかし、司法書士に依頼すれば書類の収集から遺産分割協議書や登記申請書の作成、法務局への申請まで全てを任せられます。
司法書士に依頼する場合の費用相場は、15万円前後です。
相続不動産の名義変更手続きを自分で行うことに不安がある方は、司法書士への依頼を検討してみましょう。
相続不動産の名義変更を確実に行うなら専門家に依頼しよう
不動産を相続した場合は、故人から相続人への名義変更が必要です。
名義変更をしなければペナルティが課されたり、後にトラブルへ発展したりする可能性があるため、適切に手続きを行うことが求められます。
しかし、相続不動産の名義変更手続きを自分で行うとなると、必要書類の収集や作成に時間と手間がかかります。
相続不動産の名義変更をスムーズに進めるなら、専門家へ依頼しましょう。
杠(ゆずりは)司法書士法人では、不動産の名義変更をはじめとした相続に関するご相談を承っています。
相続の手続きを安心して進めたい方は、杠(ゆずりは)司法書士法人までお気軽にご連絡ください。
本記事に関する連絡先
フリーダイヤル:0120-744-743
メールでのご相談はこちら >>