
相続不動産の売却|手続きの流れや税金、節税方法を解説
不動産
投稿日:2025.06.23
相続した不動産の売却を考えている方のなかには、「どうやって手続きしたら良いのかわからない」「税金はどうなるんだろう」といった疑問を抱え、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
不動産の売却には一連の手続きを踏んだうえで税金を支払う必要がありますが、税金には特例が用意されており、税金がかからないケースもあります。
この記事では、不動産を相続するときの流れや税金について詳しく解説します。
相続不動産の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産の相続から売却までの流れ
不動産の相続が発生したときに、慌てずに手続きを進められるように、あらかじめ全体的な流れを把握しておきましょう。
売却までのステップは、以下の8つです。
- 遺言書の確認する
- 法定相続人の確認する
- 相続する財産を洗いだす
- 必要に応じて遺産分割協議を行う
- 相続財産の名義変更をする
- 相続税の申告と納付する
- 不動産会社へ相続不動産の売却を依頼する
- 譲渡所得が発生した場合は確定申告をする
順番に解説していきます。
1.遺言書の確認する
相続が発生したときは、まず遺言書の有無を確認します。
遺言書が遺されていれば、基本的にはその流れに従って手続きを進めます。
遺言書の種類は、以下の3つです。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
遺言書の種類によっては検認の手続きを行わなければなりません。
検認なしで開封すると5万円のペナルティが課されるため注意が必要です。
2.法定相続人を確認する
遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続人で財産を分割します。
被相続人の戸籍謄本から関係者を全て洗い出して、法定相続人を確定しなければいけません。
必要書類の収集や確認作業など、手間と時間がかかるため、簡単には進まない場合もあります。
そのため、遺言書がないことを確認したら、できるだけ早めに相続人の特定作業を開始することをおすすめします。
3.相続する財産を洗いだす
相続人を特定した後は、遺された財産を確認します。
相続財産に不動産があるか確認したい場合は、市区町村から届く固定資産税の納税通知書をチェックします。
相続できないと判断した場合は、この時点で相続放棄の手続きを取ります。
相続放棄の手続きは、相続の開始を知ってから3ヶ月以内です。
家庭裁判所に書類を提出して、相続放棄の申請手続きを進めます。
4.必要に応じて遺産分割協議を行う
有効な遺言書がない場合、相続人の確認を経て、複数人が相続人となる場合には遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議は遺された財産の分割について、相続人全員で話し合う協議です。
分割内容に合意が得られた後に遺産分割協議書を作成します。
協議を重ねても合意が得られない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停を申し立てなければなりません。
遺産分割調停でも合意できないときは遺産分割審判へ移行し、最終的には裁判官があらゆる状況を考慮して遺産の分割方法を決定します。
5.相続財産の名義変更をする
不動産の相続が決まったら、相続登記を行い名義変更をする必要があります。
相続登記は不動産の所有権が被相続人から相続人へ移ったことを公に示すための大切な手続きです。
相続登記の手続きには、いくつかの必要書類と取得費用、登録免許税など、諸経費がかかります。
6.相続税の申告と納付する
相続の事実を知った日から10ヶ月以内に、税務署へ相続税の申告と納付を行います。
期限を過ぎても申告しなかったり、納税額が不足したりすると延滞税や加算税が課されるため注意しましょう。
7.不動産会社へ相続不動産の売却を依頼する
不動産相続の手続きを全て終えて相続税の申告と納付まで済ませたら、ようやく相続した不動産を売却できます。
自分で買い手を見つけて交渉できるのは稀なケースなので、特別なことがなければ不動産会社へ売却を依頼しましょう。
不動産の買い手が見つかって売却が完了するまでに、平均で半年から1年程度の時間がかかります。
8.譲渡所得が発生した場合は確定申告をする
不動産を売却して譲渡所得が発生した場合は、翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告をしなければいけません。
譲渡所得の計算では、特例制度を用いて納税額を減額できるケースがあります。
特例を使って納税額をゼロにした場合でも、確定申告は必要です。
損失が出た場合でも確定申告をした方が良いケースもあるため、不動産の売却と確定申告は一つのセットで覚えておきましょう。
不動産を相続する4つの方法
不動産を相続する方法は、大きく分けて4つの方法があります。
それぞれのメリットや注意点を一覧表にまとめました。
現物分割 | ・不動産などの遺産をそのまま分割して相続する方法 ・シンプルな相続方法である一方、建物の分割は難しいため、土地のみの相続の場合に用いられる |
---|---|
代償分割 | ・一人の相続人のみで不動産を相続して、その相続人が他の相続人へ相続分の金銭を支払う方法 ・現金が欲しい相続人がいる場合や、相続してその建物に住みたい場合に有効 ・相続分の現金を用立てできなければ、代償分割はできない |
換価分割 | ・不動産を売却して、売却代金を相続人で分割する方法 ・分割が難しい不動産や相続人が不動産の相続を希望していない場合に有効 ・市場価格によって売却金額が左右されるリスクがある |
共有名義 | ・相続人それぞれが共有持分に応じて不動産を所有する ・将来不動産を売却する際には全員の同意が必要となるため、思わぬトラブルを招く可能性もある ・相続が繰り返されるたびに、共有名義人が増えていくと余計に複雑化してしまう |
不動産を相続するときに必要な書類
不動産を相続する際には多くの書類を集めなければいけません。
簡単に考えていると思いのほか時間がかかってしまうこともあるため、注意が必要です。
相続の発生を確認した後はすぐに書類集めをスタートしましょう。
相続に必要な書類は、次のとおりです。
- 法定相続人全ての戸籍謄本
- 法定相続人全ての印鑑証明書
- 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 遺言書または遺産分割協議書
- 不動産の登記事項証明書
- 不動産の相続人の住民票
- 不動産の固定資産評価証明書
必要書類は全て原本が必要です。
相続した不動産を売却するときに必要な書類
相続不動産を得るためには、多くの書類をそろえなければいけません。
実家の土地や家を相続した場合、高確率で書類を探す時間がかかるので、できるだけ早めに着手することをおすすめします。
万が一、境界線が確定していない場合は測量を終えた後に売却することになるため、余計に時間がかかります。
マンション・戸建て・土地ごとの必要書類を一覧表にまとめました。
売却を依頼するときの必要書類は、以下のとおりです。
書類 | マンション | 戸建て | 土地 |
---|---|---|---|
登記簿謄本または登記事項証明書 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
売買契約書 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
物件購入時の重要事項説明書 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
登記済権利証または登記識別情報 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
土地測量図・境界確認書 | ⚪︎ | ⚪︎ | |
固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
物件の図面 | ⚪︎ | ⚪︎ | |
設備の仕様書 | ⚪︎ | ⚪︎ | |
建築確認済証および検査済証 | ⚪︎ | ||
建築設計図書・工事記録書 | △ | △ | |
マンションの管理規約または使用細則 | ⚪︎ | ||
マンション維持費関連書類 | ⚪︎ | ||
耐震診断報告書 | △ | △ | |
アスベスト使用調査報告書 | △ | △ |
物件引き渡しの際に必要な書類は、以下のとおりです。
書類 | マンション | 戸建て | 土地 |
---|---|---|---|
本人確認書類 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
実印 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
印鑑証明書 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
住民票 | △ | △ | △ |
銀行の口座 | △ | △ | △ |
ローン残高証明書かローン返済予定表 | △ | △ | △ |
物件のパンフレット | △ | △ | △ |
物件を購入した当時の売買契約書といった購入がわかるものがあれば、売却後に特例の申請にて節税できることもあります。
判断に迷う必要書類があれば、不動産会社へ確認すると詳しく教えてくれます。
相続後に不動産を売却するまでにかかる税金
相続不動産を売却する際にかかる税金は6種類です。
- 相続税
- 登録免許税
- 印紙税
- 譲渡所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
それぞれの税金について、詳細を説明します。
相続税
相続税は相続した財産に課せられる税金です。
相続した遺産の総額が、相続税の基礎控除を超えた場合にだけ発生します。
基礎控除の計算式は、次のとおりです。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の申告期限は相続の開始を知り得た日から10ヶ月以内です。
被相続人が生前住んでいた地域を管轄する税務署に申告して、金融機関で納付します。
延納せざるを得ない場合や物納を選ぶ場合も同様に、税務署にて期限までに申告が必要です。
登録免許税
登録免許税は不動産の所有権を相続人へ移転する場合にかかる税金です。
土地と建物を相続する場合は、両方に不動産価額の0.4%の税率がかかります。
登記の種類ごとの税率は、次のとおりです。
土地の所有権移転登記(売買によるもの) | 1.50%(特例継続中) |
---|---|
土地の所有権移転登記(相続によるもの) | 0.4% |
住宅の所有権移転登記(中古住宅を売買にて買い付けた場合) | 2.00% |
住宅の所有権移転登記(相続によるもの) | 0.4% |
参考 国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm
印紙税
印紙税は契約書や領収書にかかる税金のことです。
不動産売却では不動産の売買契約書に対して課税されます。
印紙税の金額は契約金額に合わせて200円から60万円までと幅広いです。
契約金額に対する印紙税の金額を一覧表にまとめました。
契約金額 | 印紙税額 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
10万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
譲渡所得税
譲渡所得税は不動産の売却で得た利益に対して課税される税金です。
譲渡所得を算出するための計算式は、次のとおりです。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得税の税率は不動産を所有していた期間によって異なります。
所有期間が5年以下なら短期譲渡所得となり、税率は30%です。
その一方で、5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率は15%になります。
住民税
住民税の税率は、譲渡所得税と同じく不動産の所有期間によって変わります。
所有期間が5年以下なら税率は9%、5年以上なら税率は5%です。
復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災の復興に必要な財源を確保するための税金として設けられています。
2037年までの所得税に2.1%加算されます。
相続不動産を売却時に節税できる5つの特例
相続不動産の売却には、以下の5つの特例が用意されています。
- 取得費の特例
- 居住用不動産売却時の3,000万円控除
- 10年を超えて所有する不動産への軽減税率
- 居住用不動産買い替え時の特例
- 相続した空き家を売却する際の3,000万円控除
それぞれの特例について、詳細を説明します。
取得費の特例
取得費の特例とは、相続にて取得した土地や建物を一定期間内に売却したときに、売却時にかかった相続税を取得費として計上できる制度です。
控除額が増えることになるため、結果として所得税の節税につながります。
取得費加算の特例の適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 相続または遺贈によって財産を取得した人
- 財産を取得した人に相続税が加算されている
- 取得した財産を相続開始日の翌日から申告期限日の翌日3年以内に売却している
取得費の特例の計算式は、次のとおりです。
その人の相続税額×その人の相続税課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の課税価格÷(その人の相続税の課税価格+その者の債務控除額)
居住用不動産売却時の3,000万円控除
3,000万円の特別控除は、不動産売却時に課税される譲渡所得税を軽減させるための特例制度です。
売却する家が居住用のマイホームである場合に限って、譲渡所得に対して3,000万円までは課税対象から除外できます。
したがって、売却益が3,000万円以下であれば譲渡所得税は0円ということになります。
10年を超えて所有する不動産への軽減税率
家を10年以上長期保有していた場合は、税金が安くなる制度が設けられています。
前述の3,000万円控除と併用ができるため、譲渡所得税の支払いが発生している場合はうまく活用すると良いでしょう。
譲渡所得が6,000万円以下では税率14%に抑えられますが、6,000万円を超えると税率は20%になります。
居住用不動産買い替え時の特例
居住用不動産買い替え時の特例は、マイホームを売却した場合に、買い替えたマイホームの価格が元の家よりも高い場合は課税されない制度です。
ただし、厳密には税金の免除ではなく、譲渡所得税が買い替えた不動産に引き継がれる仕組みとなっています。
また、譲渡資産の取得費は買い替え資産に引き継がれますが、取得日は引き継がれません。
相続した空き家を売却する際の3,000万円控除
相続、もしくは遺贈によって被相続人が住んでいた家を譲り受けた場合は、一定の要件を満たすことで、譲渡所得の3,000万円控除を受けることができます。
基本的な要件を一覧表にまとめました。
適用期間 | 相続した日から3年目の12月31日まで、かつ2027年12月31日の期間内 |
---|---|
相続した家屋の適用要件 | ・相続開始の直前まで被相続人が一人で居住していた ・1981年5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物でないこと ・相続時から売却時まで、事業に使われることなく、誰にも貸付していないこと ・相続により土地及び家屋の両方を取得すること |
そのほかの適用要件 |
・譲渡益の総額額が1億円以下 ・共有物件や店舗併用住宅は売却物件全体の譲渡価額が1億円以下 ・引渡しの翌年2月15日までに、家屋の取り壊しもしくは耐震リフォームの予定がある |
特に家屋には細かい適用要件が設定されているので、制度を利用しようと考えている方は、今一度内容をよく確認しておきましょう。
相続に関する相談は杠(ゆずりは)司法書士法人まで
不動産の売却には細かな手続きと書類の用意が必要ですが、相続不動産の場合は相続手続きも必要になるため、余計に手続きが大変です。
これから不動産を相続する予定の方や、すでに相続が発生している方は、事前に手続きの流れや必要書類を確認しておくことをおすすめします。
相続手続きには期限が定められており、放置してしまうと手続きが困難になる場合もあるので、早めの対応が重要です。
「何から始めれば良いのかわからない」「専門知識がないため不安」という方は、ぜひ、杠(ゆずりは)司法書士法人にご相談ください。
土地や建物の名義変更をはじめ、不動産売却に伴う契約手続きや各種ご相談にも幅広く対応しています。
複雑で手間のかかる事案でも、経験豊富な専門スタッフがスムーズな解決に向けて全力でサポートいたします。
安心してお任せいただける体制を整えていますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
本記事に関する連絡先
TEL: 06-6253-7707
メールでのご相談はこちら >>