
家を相続する時の注意点とは?知っておきたい手続きの流れや費用を解説
不動産
投稿日:2025.06.23
相続にはさまざまな手続きが必要です。
なかでも家の相続においては聞き慣れない言葉も多いため「どういう手続きをすれば良いのか」「費用はどのくらいかかるのか」などわからないことも多いのではないでしょうか。
この記事では家を相続する時の流れや必要な費用、注意点について解説します。初めて家を相続する方でも安心して進められるようにお伝えするので、ぜひ最後までご覧ください。

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目次
家を相続する時の流れ
家を相続する際の流れは、以下のとおりです。
- 遺言書があるかどうか確認する
- 相続人を確定させる
- 家について必要な書類を集める
- 遺産分割協議を行う
- 家の相続登記をする
- 相続税を申告・納付する
それぞれの流れについて解説しています。
1.遺言書があるかどうか確認する
相続が発生した際にまず行わなければならないのが、遺言書の確認です。
遺言書は被相続人(亡くなった人)の遺志を強く示す正式な法的書類として、法定相続分よりも遺言書の内容が優先されます。
相続手続きを進めている最中でも、後から有効な遺言書が見つかれば、新たに手続きを行わなければなりません。
二度手間やトラブルを防ぎ、相続手続きを適正に進めるためにも、遺言書の有無は最初に確認しておきましょう。
2.相続人を確定させる
遺言書がないことがわかったら、次は誰が相続人になるのかを確定させます。
法定相続人になれるのは配偶者と血族に限られていますが、戸籍謄本を取り寄せて正確な情報を得る必要があります。
後の相続手続きで必要になるので、法定相続人の戸籍謄本もこの段階で取り寄せておくと良いでしょう。
こちらも後から法定相続人が見つかると、手続きをやり直さなくてはならないので、きちんと確認することが大切です。
3.家について必要な書類を集める
家を相続するにあたって必要な書類は、遺言書や遺産分割協議の有無、誰が家を相続するかによって異なります。
必要なのは、以下の書類です。
必要書類 | 取得場所 | 備考 |
---|---|---|
法定相続人全員の戸籍謄本 | 市町村役場 | 被相続人が亡くなった日付以降に発行されたものが必要 |
被相続人の戸籍謄本(除籍謄本) | 市町村役場 | 除籍謄本は死亡届を出して2週間程度で取得可能 |
住民票の除票 | 住所地の市町村役場 | 戸籍の附票でも可能 |
住民票 | 住所地の市町村役場 | 戸籍の附票でも可能 |
固定資産評価書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 相続者なら取得可能だが、相続関係を証明する戸籍謄本の提示が必要になることがある |
収入印紙 | 郵便局・コンビニ・法務局など | – |
登記申請書 | 自分で作成 | 法務局のホームページからダウンロード可能 |
4.遺産分割協議を行う
遺産分割協議とは、遺産をどのように引き継ぐかを法定相続人全員で話し合う場です。
相続内容について全員の合意を得られたら、家を含む遺産を誰がどのような割合で相続するか明記した遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、法定相続人が多数いる場合や相続財産の種類が多い場合は、専門家に依頼する方法もあります。
5.家の相続登記をする
相続登記を行い、家の名義を被相続人から相続人に変更します。
あらかじめ集めておいた必要書類を用いて法務局に申請することになりますが、相続する家が複数ある場合や、代襲相続が発生している場合は手続きが煩雑になります。
書類の用意や遺産分割協議の過程において、自分で手続きするのは難しいと感じたら、司法書士に手続きを依頼することを検討するのが良いでしょう。
6.相続税を申告・納付する
遺産分割協議が済んだら、相続税の申告・納付を行います。
相続税は「相続した財産の額から、負債や葬式費用を差し引いた後の額」が、基礎控除を上回っている時に支払う税金です。
相続の開始を知った翌日から10か月以内に申告・納付を行わなければなりません。
期限を過ぎると加算税や延滞税といったペナルティを課される可能性があります。
この期限までに相続手続きを完了させることを目標にしましょう。
家を相続する方法は4種類
被相続人の財産は分割して法定相続人が受け継ぐことになりますが、家は現金のように割合で分割することができません。
そのため、家の相続には以下のような分割方法が用いられます。
現物分割 | ・家ごとに分割して相続する方法 ・2軒の家を相続人2人がそれぞれ相続するなどの場合に用いられる ・評価額の違いなどで不公平感が出るというデメリットもある |
---|---|
代償分割 | ・家を引き継いだ相続人が、他の法定相続人に相続財産に相当する額を代償金として支払うか、他の財産を譲渡する方法 ・不公平感は抑えられるが、代償金が用意できないとトラブルに発展する可能性もある |
換価分割 | ・家を売却して現金に換え、分割する方法 ・家の相続を望んでいない場合に用いられるが、必ずしも評価額とおりに売却できるわけではない ・譲渡所得税が発生する可能性がある |
共有名義 | ・家の名義を分割して法定相続人の共有財産にする方法 ・家の権利を平等に所有できるというメリットがあるが、増改築に所有者全員の同意が必要になる ・家の維持や税金の管理が煩雑になりやすい |
このように相続の方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。
法定相続人の意向や他の財産の有無、経済状態などによって最適な方法が異なるため、慎重に検討することが大切です。
今の家に住み続けられる「配偶者居住権」という制度もある
家は相続財産の一つですが、被相続人(亡くなった人)の配偶者にとっての終の棲家であるケースも少なくありません。
相続をきっかけに配偶者が住む場所を失うことを防ぐ制度として、2020年4月以降に発生した相続には「配偶者居住権」が適用できることになりました。
配偶者居住権とは、配偶者が生存中もしくは一定期間、無償で建物に居住できる権利のことです。
建物の価値を「所有権」と「居住権」に分け、配偶者は居住権を取得することで引き続き同じ家に住み続けることが可能になります。
配偶者居住権を適用するには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- ・残された配偶者が亡くなった人の法律上の配偶者であること
- ・配偶者が亡くなった人が所有していた建物に亡くなったときに居住していたこと
- ・①「遺産分割」、②「遺贈」、③「死因贈与」、④「家庭裁判所の審判」のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
引用元:法務局「配偶者居住権とは」
以上の要件を満たさない場合でも、相続開始時に居住していた配偶者には「配偶者短期居住権」が認められます。
こちらは期限が6カ月と制限が設けられていますが、期間内は無償での居住が保証されます。
ただし、いずれの場合も対象になるのは法的な婚姻関係にある配偶者のみです。
内縁の妻や事実婚の人は対象にならないので、注意しましょう。
相続に必要な費用
家の相続にかかる費用は大きく分けて、相続登記にかかる税金と書類取得などの諸経費に分けられます。
相続に必要な書類を取得する費用は1通あたり数百円~千円程度ですが、数が多いので全部で2~3万円程度必要になると考えたほうが良いでしょう。
それに加えて、かかる税金について詳しく説明します。
家の相続にかかる税金
家の相続全般にかかる税金は、主に2種類挙げられます。
家の名義を変更する相続登記には登録免許税が、実際に相続する際には相続税が必要です。
登録免許税の税率は「不動産の固定資産税評価額の0.4%」と定められています。
たとえば、固定資産税評価額が4,000万円の家を相続登記する場合の税金は、以下のようになります。
4,000万円×0.4%=16万円
さらに相続で引き継いだ財産全体にかけられるのが相続税です。
相続税は家屋だけでなく相続した財産全てを評価して課税されます。
家の場合は土地と建物それぞれを評価して税額が算出されますが、自宅を相続する人が住居を維持できる配慮として「小規模宅地の特例」という特例があります。
また、相続税全体に大きく関わる制度として「基礎控除」も挙げられます。
基礎控除
基礎控除は相続税におけるいわゆる「非課税枠」で、遺産の総額から基礎控除額を差し引くことが可能です。
基礎控除は遺産総額にかかわらず、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」と決まっています。
遺産総額-基礎控除=相続税の課税対象額になると考えれば良いでしょう。
法定相続割合で分割した場合
建物の相続税評価額が3,000万円、現金その他の財産が1,000万円、計4,000万円の遺産を法定相続割合で分割した場合、相続税がかかってくるのかいくつかのケースを紹介します。
配偶者と子ども2人で相続する場合
相続財産4,000万円-基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人3人=-800万円
この場合基礎控除が相続財産を上回っているので、相続税はかからず申告も必要ありません。
子ども1人で相続する場合
相続財産4,000万円-基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人1人=400万円
この場合は相続財産が基礎控除を上回っているので、400万円が課税対象となります。
法定相続人が1人の場合でも、遺産総額が3,600万円以下であれば相続税はかからず、申告する必要もありません。
家を相続する際の注意点
家の相続を進めるにあたり、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
注意したいポイントを4つまとめました。
トラブルにならないように話し合いをする
相続において、家は最も高額な遺産になるケースが多いです。
そのため、思いがけないトラブルに発展して、相続が複雑化してしまう事例も少なくありません。
たとえ親子や親族でも、相談や意見のすり合わせを怠らず、足並みをそろえて手続きを進めるようにしましょう。
空き家になる場合は売却や解体も検討する
「実家を相続したものの使い道がなく、空き家になっている」というケースも多くあります。
全国的に増加傾向にある空き家対策の一環として、適正に管理されていない空き家に勧告を行ったり、固定資産税の軽減措置を取り消す「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」が制定されました。
空き家法の対象になると固定資産税の負担が増加したり、近隣へ悪影響を与える可能性もあります。
活用予定がない家については、売却や解体も視野に入れた検討を進めることをおすすめします。
必ず相続登記を行う
相続で所有者が変わった場合、これまでは相続登記を行わなくても特に問題はありませんでした。
しかし制度が改定され、2024年4月1日からは相続登記が義務化されました。
相続開始を知った日から3年以内に申請を行わなければ、10万円以下の過料が課される可能性があります。
相続登記を放置すると大きなリスクやデメリットを負う可能性もあるので、期限内に必ず対応することが大切です。
相続放棄をする際は3カ月以内に手続きをする
家の相続を希望しない場合、相続放棄の申し立てを行うことになります。
ただし相続放棄の申し立ては、相続開始を知った日から3カ月以内に行わなければなりません。
期限を過ぎると相続の意思があるとみなされ、放棄することはできなくなります。
期限内に手続きを完了できるよう、スピード感を持った対応が求められる点に注意しましょう。
家の相続の際によくある質問
ここまで、家を相続する際の流れや注意点について解説してきました。
以下では、家を相続する際によくある質問についてまとめました。
相続した家に住むのにリフォームが必要。費用は誰が負担する?
実家を相続して自分たちで住む、もしくは二世帯同居を考える際に問題になるのがリフォームの費用負担です。
相続登記前に子がリフォームを行って費用を支払った場合、法的には子から親へ贈与したとみなされてしまいます。
そのため110万円を超える金額から贈与税が発生し、住宅ローン控除などの補助も受けられなくなります。
相続した家をリフォームするのであれば、相続登記を済ませてから行うのが良いでしょう。
家の相続手続きは自分でできる?
相続手続きの大半は書類を収集して、必要事項を記入して該当する部署に提出するというものです。
事務作業にある程度慣れている人ならば、さほど苦労なく手続きを進められるでしょう。
ただし、相続放棄や相続税の申告など、専門家に任せたほうがスムーズに進むことが多いです。
「これは手に負えない」と感じたら、早めに専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
家の相続を専門家に依頼したほうが良いケース
家の相続手続きは自分でも行えるものが大半ですが、専門家のサポートを受けたほうがスムーズに進むケースも少なくありません。
ここでは、専門家に依頼したほうが良いケースを3つ解説します。
相続人同士でトラブルが起きている
親子や親族の間柄でも、相続に関して意見が対立するのは珍しいことではありません。
また、誤った知識や認識をもとに話を進めているせいで、事態がより複雑になってしまうケースも考えられます。
専門家にアドバイスを受け、冷静に話合いを進めていくことが大切です。
相続関係が複雑である
被相続人の家族関係が複雑であったり、相続人同士の交流がほとんどない場合、手続きに必要な書類を集めるだけでも相当な労力が必要になります。
法定相続人が多くなるとそれだけ手続きにも手間がかかり、さらに相続登記に協力的でない法定相続人が出てくることも考えられるでしょう。
相続には期限が決められているものも多いため、難しいと感じたら早めに専門家に依頼することをおすすめします。
手続きを進める時間がない
相続手続きは書類の収集も含め、相当な時間や手間がかかります。
「仕事や家事で平日は全く時間が取れない」「書類をじっくり確認する余裕がない」という方が自分で相続を進めるのは難しいでしょう。
専門家に依頼するには費用がかかりますが、ほとんどの手続きを代行してもらえるので、時間や手間を大幅に節約できます。
家の相続に関係するご相談は杠(ゆずりは)司法書士法人へ
家の相続は、煩雑な手続きが多く、「どこから手をつければ良いのかわからない」と感じている方も少なくありません。
また、手続きが遅れることで余計なトラブルや費用が発生することもあります。
杠(ゆずりは)司法書士法人では、相続に関するあらゆる相談を受け付けています。
相続登記や相続放棄、遺産分割協議など、専門知識が必要な場面でも丁寧に対応いたしますのでご安心ください。
相続に関する疑問や不安がある方は、ぜひお気軽に杠(ゆずりは)司法書士法人までご相談ください。
専門知識と経験豊富なスタッフが丁寧にサポートいたします。
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