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アパートを相続したらどうする?手続きの流れや経営の判断のポイントなどを解説

不動産

投稿日:2025.06.23

アパートを丸ごと相続する予定があるものの「経営を引き継ぐべきか」もしくは「売却してしまったほうがいいのだろうか」と、相続したアパートの取り扱いについて、悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

相続するアパートは、状況に応じて引き続き経営するほうが良い場合と、清算してしまったほうが良い場合があります。

この記事では、経営を継続するための判断ポイントや相続する際の手続きの流れを解説します。相続するアパートの取り扱いに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

アパートを相続する前の2つの選択肢

アパートを相続する前に、考えられる2つの選択肢について説明します。

  • プラスの財産が多い場合には相続を選択する
  • マイナスの財産が多い場合には相続放棄する

詳しく見ていきましょう。

プラスの財産が多い場合には相続を選択する

アパートを相続することによってプラスとなる場合は、相続を選択します。

プラスとなる具体的なケースは継続的な家賃収入です。

ローン残債が少なく、継続的な家賃収入が見込める場合は将来的にプラスになる可能性があるため、相続したほうが良いということになります。

損益分岐点と大規模修繕の計画などを織り込んだうえで、適切な判断を下しましょう。

マイナスの財産が多い場合には相続放棄する

アパート経営がマイナスになるケースは、空室が多く、今後のアパート経営の見通しが悪い場合です。

ローン残債の金額次第では、より経営が難しくなります。

アパートを所有しているだけでマイナスになりそうな場合は、相続放棄を選択したほうが良いです。

大規模修繕の時期と金額次第では、マイナス経営が決定的になってしまいます。

大局を見たうえでアパートの相続を検討するようにしましょう。

アパートを相続するメリット

アパートを相続するメリットは、以下のとおりです。

  • 相続税の評価額を下げられる
  • 小規模宅地などの特例が使える
  • 不動産取得税など税の負担が軽くなる

それぞれのメリットを順番に解説します。

相続税の評価額を下げられる

賃貸アパートの土地と物件を相続にて継承すると、建物は貸し家、土地は貸家建付地として評価されます。

現金で相続するよりも、貸し家や貸家建付地として評価される方が相続税の評価額を低く抑えられます。

土地や建物の評価額から「借地権割合」「借家権割合」「賃貸割合」を差し引くことができるため、相続税の評価額が抑えられるという仕組みです。

結果として、賃貸アパートの評価額は自宅などの自用地よりも評価額が低くなります。

小規模宅地などの特例が使える

相続にて賃貸アパートを継承すると、土地部分に小規模宅地等の特例である「貸付事業用宅地等」が適用される可能性があります。

特例の要件をクリアできれば、最大で200㎡までの領域で相続税評価額を50%減額できます。

たとえば、200㎡の土地に賃貸アパートが1棟あるとします。

土地部分の相続税評価額は1億円です。

この場合、貸付事業用宅地等に該当すると土地部分の評価額は5,000万円まで減額されるということになります。

不動産取得税など税の負担が軽くなる

不動産を賃貸アパートとして継承した場合は、不動産取得税がかかりません。

不動産取得税が課税されるのは、不動産を購入した場合や、贈与された場合に限ります。

相続にて継承した場合は、非課税になるというわけです。

相続登記の際に課税される登録免許税も、税率は低くなります。

アパートを相続するデメリット

アパートを相続するデメリットとして、以下の2つが挙げられます。

  • 相続人を指定するために遺言書の作成が必要になる
  • ローンが残っている場合は返済も引き継ぐ

それぞれ詳しく解説します。

相続人を指定するために遺言書の作成が必要になる

1人の相続人に賃貸アパートを相続させるためには、法的な実効力をもつ遺言書の作成が必要です。

遺言書がない相続にて財産を取得できるのは法定相続人に限定されるため、法定相続を超えた相続をしたい場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

事前に遺言書を用意しておかなければ、指定の相続人に不動産を引き継ぐことはできません。

遺言書を作成するときは、遺留分を考慮した分割方法の検討が必要になるため、賃貸アパート以外の財産を精査する必要があります。

そのほかに、自筆遺言書の不備がある場合は無効となるケースもあるため、遺言書を作成する場合は司法書士を介して公正証書遺言を作成しておいたほうが安心です。

ローンが残っている場合は返済も引き継ぐ

被相続人が万が一、団体信用生命保険に入っていなかった場合は、ローン残債をそのまま引き継ぐことになります。

マイホームの購入では当たり前の団体信用生命保険ですが、投資物件でもローン借り入れの必須条件とされていることが多くなり、団体信用生命保険に加入が当たり前になりつつあります。

そうはいっても、マイホームの購入時ほど必須要項ではありません。

団体信用生命保険未加入のためにローン残債が残っている場合は、今後のアパート経営の見通しと合わせて、相続するかを決める必要があります。

アパートを相続するときの流れ

アパートを相続するときには、必要な手順を踏みながら、着実に手続きを進めていくことが大切です。

アパートを相続するときの基本的な流れについて、6つのステップに分けて解説します。

STEP1:ローン残債など相続財産を把握する

まずは、相続税を試算する前にローンの残債がないか、銀行へ確認します。

アパートの相続では、ローン残債も含めた相続が必要です。

ローンによる債務控除は認められるものの、残債は被相続人に変わって相続人が引き継ぐことになります。

返済が難しい場合は相続放棄できますが、相続人が連帯保証人になっている場合は、相続放棄をしても返済義務までは放棄できません。

被相続人が団体信用生命保険に加入していた場合は、保険金によってローンは完済されます。

保険の加入状況がわからない場合は、銀行に尋ねると教えてくれます。

今後の手続きの流れを決めるためにも、まずは残債の確認が必要です。

STEP2:必要に応じて遺産分割協議を行う

遺産分割協議は「誰がどのくらいの遺産を相続するのか」を相続人で話し合うための協議です。

法律のうえで有効な遺言書がない場合は、相続を確定するために遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議は法定相続分の決まりに拘束されることがないため、1人の相続人が全ての財産を相続することも可能です。

遺産分割協議にて出た結論は、合意内容を証明するための遺産分割協議書にてまとめられます。

その後の財産分配や相続税負担も遺産分割協議書にて行われるため、遺産分割協議の内容は重要です。

STEP3:所得税の準確定申告をする

準確定申告とは、被相続人が1月1日から死亡日までに得た所得金額と税額を計算し、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に納税を行う手続きのことです。

一般的な確定申告と同じく、所得の総額から控除額や経費を引いた課税所得分から算出される所得税の支払いが必要です。

相続人それぞれが準確定申告を行うこともできますが、申告書を提出した相続人はほかの相続人に申告した内容を通知しなければいけません。

確定申告や帳簿管理のことがよくわからない場合は、税理士に相談して正確な数字を算出するのが安心です。

STEP4:相続税の申告と納税する

基礎控除の金額を超える部分が相続税の対象です。

基礎控除の計算式は、次のとおりです。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除を超えた部分は、相続税の申告または納付を相続の事実を確認した日の翌日から10か月以内に申告しなければいけません。

申告書は、被相続人が死亡したときの住所を管轄する税務署長へ提出します。

STEP5:相続登記の完了後に入居者へ連絡する

アパートを相続したら相続登記が必要です。

遺産分割協議にてアパートを相続した場合は、相続登記申請書に記入した後に、以下の書類を添付のうえで法務局の窓口へ持参するか、郵送もしくはオンラインにて申請し、登記を完了します。

  • 遺産分割協議書
  • 戸籍関係書類
  • 相続人全員の住民票

相続登記の申請期限は相続の事実を知ったときから3年以内と決められています。

2024年4月からスタートした相続登記の義務化によって、登記をしない場合は10万円以下の過料が科せられる可能性があるので注意が必要です。

相続登記が終わったら入居者へ新しいオーナーに変わったことを知らせましょう。

その際に振込先の銀行口座の変更など、必要事項も併せて伝えておきます。

STEP6:最終的にアパート経営を続けるのか決める

全ての手続きを終えると、とりあえずアパートオーナーとなりますが、ここから先の経営をどうするか決めなければいけません。

賃料収入と管理費、修繕費用などの支出を計算のうえ、経営が成り立つかシミュレーションします。

そして、最終的に「経営の継続が良いのか」「売却すべきなのか」「ほかに有効な活用方法がないのか」といった判断を下して全ての手続きは完了です。

アパートを相続した後の4つのパターン

アパートを相続した後に考えられるのは、以下の4つの選択肢です。

  • 解体してほかの土地活用を考える
  • 売却する
  • そのままアパート経営を継続する
  • 解体して新しいアパートを建てる

それぞれのパターンについて解説します。

解体してほかの土地活用を考える

土地があればアパート経営だけでなく、ほかの活用方法を検討することもできます。

駐車場のニーズが見込める地域であればコインパーキング、単身者が多く住んでいるエリアならコインランドリー、日当たりが確保できる場所なら太陽光発電設備の設置といった具合に土地活用の選択肢はさまざまです。

自分で土地の活用方法が思いつかない場合は、複数の業者に相談して立地にぴったりの活用方法を提案してもらうこともできます。

売却する

建物の老朽化が激しく、継続した利用が難しい場合は、更地にして売却します。

解体にかかる費用は、建物の種類によってそれぞれです。

売却するときは、どの程度の資産価値があるのか把握するために、複数の不動産会社へ査定の依頼を出すことをお勧めします。

極端に高い査定や低い査定を除外した平均的な価格が売却の相場です。

大まかな相場を把握しておけば、売買取引の際に相場よりも安い金額でサインしてしまうこともなくなります。

そのままアパート経営を継続する

相続したアパートをそのまま運営する場合は、着実なアパート経営のために改めて設備周りを見直す必要があります。

築年数が古い物件の場合は、水回りを中心に新しい設備への交換も必要です。

屋根やバルコニーの修理、壁の塗装など大規模なリフォームを行うことで、新たに借り手を見つけやすくなります。

リフォームについて迷う場合は、専門家の目線で費用対効果の高い方法を提案してもらう方法も有効です。

解体して新しいアパートを建てる

老朽化が激しく、アパート経営を続けるには大規模なリフォームが必要で、かつ今の建物では空室リスクを回避できそうもないという場合はアパートを解体して新たな土地活用を考える方法も有効です。

賃貸需要が見込める場合は、新たなアパートを建築する選択肢もあります。

最新の設備を投入できれば、入居希望者を募ることは難しくありません。

土地を担保としてアパートの建築費用を借入できるため、最初から有利な条件でアパート経営の再スタートができます。

アパート経営の継続を判断するときのポイント

アパート経営の継続を判断するときに押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。

  • 毎月の収支
  • ローンの残高
  • 大規模修繕が必要な時期と費用

3つのポイントを解説します。

毎月の収支

収益の見込めるアパート経営を継続するには、ローンの返済や固定資産税の支払いを加味したうえで収益が見込めることが最低条件です。

現在の収益から管理費や光熱費を差し引いて収益が出ているのか、しっかりチェックします。

毎月の収益が見込めない場合は、アパートの売却やほかの土地活用も検討する必要があります。

ローンの残高

毎月の収益が確保できる状況でも、ローンの残債がある場合、収支がマイナスになる可能性があります。

現時点でローン残債を上回る家賃収入があったとしても、建物の老朽化に伴う賃料の減少や、退去後のリフォーム費用がかさむことが想定されます。

アパート経営を継続する場合は、ローンの返済年数と想定される収支の変化をよく考えて、今の物件でどの程度対応できるのか、よく検討しなければいけません。

大規模修繕が必要な時期と費用

アパート経営を続けていくためには退去時の室内リフォームだけでなく、外壁の修繕や水回り、ガス給湯器などの設備の手入れが必要です。

外壁塗装や外廊下、バルコニーの防水など大規模修繕は、特に大きな出費です。

毎月収益を確保できていても、大規模修繕で赤字に転じる可能性があることも念頭に置いておかなければいけません。

いつごろにどの程度の修繕が必要になるか、事前に把握しておくことが大切です。

アパートの相続手続きに関する3つのポイント

アパートを相続する際には、押さえておきたいポイントがあります。

  • 共有名義は避ける
  • 相続登記は必ず早めにしておく
  • 相続登記は司法書士に依頼する

それぞれ詳しく解説します。

共有名義は避ける

アパートの相続を検討する際、「公平性を確保するために共有名義がいいのでは?」と考える方も少なくありません。

しかし、共有名義では、売却や解体の際に共有名義人全員の同意が必要になるため、手続きが複雑になります。

1人でも反対する共有者がいれば、その手続きが全く進まなくなる可能性があります。

また、共有者の1人が死亡した場合、その権利は相続人に引き継がれるという厄介な問題が生じることもあるでしょう。

時間が経つにつれて関係性が遠い共有者が増えていき、やがては権利関係が複雑になりすぎて手がつけられない事態に陥ってしまいます。

相続登記は必ず早めにしておく

相続したアパートを売却しようと思っても、相続登記を行っていない不動産は基本的に売却することができません。

また、名義の確認が必要となるあらゆる手続きが進められず、不動産の利用や処分が事実上不可能な状態になってしまいます。

早めの対応をすることで、後々のトラブルや遅延を防ぎ、不動産の管理や活用をスムーズに進められるようになります。

相続登記は司法書士に依頼する

相続登記は自分で対応することもできますが、司法書士へ依頼するとよりスムーズに手続きを終えられます。

司法書士の担当業務は、登記申請書の作成や法務局への提出、相続登記に必要な戸籍謄本の収集など、相続登記に関するさまざまな業務の代行です。

司法書士へ依頼すると、登記申請書の作成から申請までの時間を短縮できるうえに、トラブルの防止と法的解決のためのアドバイスやサポートまで受けられるメリットがあります。

時間がない方や何から手をつけたら良いのかわからないという方は、司法書士へ依頼することをおすすめします。

アパートの相続手続きは杠(ゆずりは)司法書士法人まで

アパートを相続した後は、そのまま経営するか、売却するか、もしくはほかの土地活用を選ぶかといった判断を強いられます。

アパート経営継続の見極めポイントは、今後の見通しとローンの残債です。

毎月の収支と今後の見通しをよく検討したうえで、最善の答えを出すことが重要です。

「アパート相続の手続きについてどうしたら良いのかわからない」という方は、杠(ゆずりは)司法書士法人までお問い合わせください。

杠(ゆずりは)司法書士法人では、これまで数多くの相続案件を手がけてきた実績があり、複雑なケースやイレギュラーな状況にも柔軟に対応しております。

まずは現在の状況やご希望を詳しくお聞かせいただければ、相続の専門家として最適な解決策をご提案させていただきます。

アパートの相続手続きでお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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