
相続放棄の手続きは司法書士に依頼すべき?費用や弁護士との違いを解説
相続
投稿日:2025.03.25
相続放棄は、故人の負債を引き継ぐリスクを回避するための重要な手段です。
しかし、相続放棄の手続きは複雑で期限も定められており、一般の方が自分で申述するのは難しい場合があります。
相続放棄の手続きをスムーズに進めて確実に遺産を手放すなら、司法書士に依頼するのがおすすめです。
本記事では、相続放棄を司法書士に依頼するメリットや費用相場、具体的な手続きの流れなどについて詳しく解説します。
目次
相続放棄を司法書士に依頼する費用相場
相続放棄を司法書士に依頼する場合、費用の相場は3〜8万円程度です。
これは司法書士への報酬であり、手続きに必要な書類の取得費用が別途発生します。
相続放棄を自分で行えば書類の取得費用だけで済むため、コストを抑えられるでしょう。
一方で、司法書士に依頼すれば、書類の取得や作成にかかる時間と手間を省けます。
相続放棄の手続きには期限があるため、忙しくて時間が取れない方や書類の準備に不安がある方は、司法書士への依頼をおすすめします。
費用の内訳
相続放棄の手続きにかかる費用の内訳は、次のとおりです。
収入印紙 | 800円 |
---|---|
郵便切手 | 400〜500円程度 |
被相続人の住民票除票または戸籍附票(1通あたり) | 200〜300円 |
戸籍謄本(1通あたり) | 450円 |
除籍謄本または改製原戸籍謄本(1通あたり) | 750円 |
収入印紙と郵便切手は家庭裁判所に納付する費用で、それ以外は提出書類の取得にかかる費用です。
必要書類の数にもよりますが、3,000〜5,000円程度に収まることがほとんどです。
自分で相続放棄をする場合は、この実費のみがかかります。
また、司法書士に支払う依頼費用の内訳は、次のとおりです。
相談料(1時間あたり) | 0〜5,000円 |
---|---|
申述書作成費 | 3,000〜10,000円 |
代理手数料 | 2〜7万円 |
上記の金額は目安なので、事前に司法書士に問い合わせて確認する必要があります。
費用が高くなる場合もある
以下のケースでは、相場以上の費用が発生する可能性があります。
- 相続放棄が可能な期限を過ぎている
- 相続財産の調査を依頼する
- 相続財産清算人を選任する
相続放棄には、相続開始を知った日から3か月以内という期限があります。
この期限を過ぎた場合、原則として相続放棄は認められません。
ただし、上申書を家庭裁判所に提出し、期限が過ぎた理由や事情が認められれば、相続放棄ができることがあります。
上申書の作成も司法書士に依頼できますが、追加で費用が発生します。
また、被相続人が所有する財産の全容を把握するために司法書士に財産調査を依頼する場合も、追加費用が必要です。
さらに、相続人全員が相続放棄をするようなケースでは、相続財産清算人を選任しなければなりません。
相続財産清算人は相続人の代わりに相続財産を管理する役割を担う人であり、必要書類を用意して家庭裁判所に申し立てを行うことで、選任手続きが可能です。
この手続きも司法書士に依頼できますが、追加費用が加算されます。
相続放棄は司法書士と弁護士、どちらに依頼すべき?
相続放棄は司法書士だけでなく、弁護士にも依頼可能です。
以下では、それぞれの専門家に依頼すべきケースについて解説します。
費用を抑えたい場合は司法書士
相続放棄を司法書士に依頼する場合の費用相場は3〜8万円程度である一方、弁護士の場合は5〜15万円程度かかります。
したがって、費用を抑えたい場合は司法書士がおすすめです。
ただし、司法書士が対応できる範囲には制限があります。
司法書士は、必要書類の取得や作成などは代行できますが、依頼者の代理人として相続放棄の手続きを進めることはできません。
そのため、家庭裁判所に申述したり照会書を受け取って返答したりするのは、依頼者が行う必要があります。
相続トラブルが起きる可能性がある場合は弁護士
弁護士は、必要書類の収集や作成だけでなく、依頼者の代理人として相続放棄の手続きを行うことが可能です。
また、訴訟にも対応できるため、相続放棄によりほかの相続人とトラブルが発生した場合でも、適切に事態を収めてもらえます。
相続人とのトラブルが不安な場合は弁護士への依頼を検討すると良いでしょう。
相続放棄を司法書士に依頼するメリット
相続放棄を司法書士に依頼するメリットは、依頼費用を抑えられることだけではありません。
ほかにも、以下のようなメリットがあります。
- 必要書類の収集や作成を任せられる
- 不動産を含む遺産の相続放棄をスムーズに進められる
- 照会書に対する回答のサポートを受けられる
- 相続放棄のスケジュールを管理してもらえる
- 債権者への通知についてアドバイスを受けられる
- 手続き期限が過ぎても相続放棄できる可能性がある
- 相続放棄以外の解決策も検討してくれる
それぞれ詳しく解説します。
必要書類の収集や作成を任せられる
相続放棄を司法書士に依頼した際の中心となる業務は、必要書類の収集と作成です。
相続放棄の手続きには、次のような書類を取得して家庭裁判所へ提出する必要があります。
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 被相続人の戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
- 相続放棄する人の戸籍謄本
- 親族の死亡が分かる戸籍謄本(該当する場合のみ)
戸籍謄本の取得範囲はケースによって異なり、多くの書類を集めなければならないこともあります。
司法書士に依頼すれば、必要な戸籍謄本の判断も含めて、書類の取得を代行してもらえます。
また、書類の取得だけでなく「相続放棄申述書」の作成も必要です。
相続放棄申述書は家庭裁判所に提出する申請書であり、書式が決められています。
不備のない申請書を作成するなら、法的書類の作成に詳しい司法書士に任せるのが安心です。
不動産を含む遺産の相続放棄をスムーズに進められる
相続財産に土地や建物などの不動産が含まれる場合は、相続放棄を司法書士に依頼するのがおすすめです。
相続放棄をすると、遺された不動産について管理責任や名義変更の問題が生じることがあります。
不動産登記の専門家である司法書士に依頼すれば、相続放棄後の不動産に関する対応についても的確なアドバイスを受けられます。
照会書に対する回答のサポートを受けられる
家庭裁判所へ相続放棄申述書を提出すると、相続放棄する人のもとに照会書が届きます。
照会書には相続放棄する人に対する質問事項が記載されており、その質問に回答して返送しなければ、相続放棄は認められません。
回答に不備があると相続放棄が認められない可能性もあるため、慎重に記入する必要があります。
照会書の回答は相続放棄する人が記入して返送する必要がありますが、回答の内容や書き方については司法書士からアドバイスを受けられます。
司法書士のサポートがあれば、自信をもって照会書に回答できるでしょう。
相続放棄のスケジュールを管理してもらえる
相続放棄の手続きには3か月以内という期限があります。
自分で相続放棄の手続きを進めていると、仕事などで忙しくて書類の収集が進まず、期限が過ぎてしまうことも少なくありません。
しかし、司法書士に依頼すれば、期限内に相続放棄が完了できるようにスケジュールを管理しながら手続きを進めてもらえます。
3か月は意外とすぐに過ぎてしまうものですが、司法書士に依頼することで期限切れのリスクを回避できます。
債権者への通知についてアドバイスを受けられる
相続放棄の手続きを進めている最中に、被相続人の債権者から借金の返済を求める連絡が届くことがあります。
この際、被相続人に代わって少額でも返済すると、借金を引き継いだと判断されて相続放棄が認められなくなる可能性があります。
とはいえ、債権者からの連絡が繰り返されると、不安やストレスを感じるでしょう。
基本的には、債権者へ相続放棄をする旨を伝える必要はありませんが、連絡を止めてほしいといった場合は相続放棄することを知らせる必要があります。
司法書士に相談すれば、債権者への対応についてもサポートを受けられるので、適切に対処することが可能です。
手続き期限が過ぎても相続放棄できる可能性がある
基本的に、相続放棄の手続き期限は3か月以内ですが、特別な事情がある場合は期限を過ぎても相続放棄が認められることがあります。
ただし、上申書を家庭裁判所へ提出して、手続き期間の延長を申し立てる必要があります。
上申書の作成には専門的な知識が必要であり、一般の方が作成しても期間の延長が認められる可能性は高くありません。
司法書士には上申書の作成も依頼できるため、3か月の期限が迫っている方や3か月の期限が過ぎた方も一度相談してみると良いでしょう。
相続放棄以外の解決策も検討してくれる
相続放棄は、必ずしも最良の選択肢であるとは限りません。
司法書士は相続の専門家であるため、依頼者の状況に応じて相続放棄以外の手段も提案できます。
たとえば、被相続人には負債があると思っていたのに、実際にはプラスの資産の方が多かった、というケースもあるでしょう。
ほかにも、プラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐ「限定承認」という方法もあります。
安易に相続放棄をすると、本来受け取れるはずの財産を失う可能性があります。
司法書士に相談して、自分にとって最適な選択肢を見つけることが重要です。
司法書士に依頼して相続放棄する流れ
司法書士に依頼した場合、次のような流れで相続放棄の手続きを進めます。
- 相続放棄するかどうかを決める
- 必要書類の収集と作成を依頼する
- 家庭裁判所に相続放棄を申述する
- 照会書に回答する
- 相続放棄申述受理通知書を受け取る
それぞれの内容について解説します。
相続放棄するかどうかを決める
まずは相続放棄の必要性があるのか、司法書士に相談しましょう。
前述のように、相続放棄以外の解決策を提案してもらえるかもしれません。
相続財産には、預貯金や不動産などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産があります。
どちらの財産が多いか分からない場合は、被相続人の財産を全て洗い出す「財産調査」を司法書士に依頼することも可能です。
司法書士と話し合い、相続放棄が本当に必要か判断しましょう。
必要書類の収集と作成を依頼する
相続放棄を行うことが決まれば、家庭裁判所に提出する書類を収集し、相続放棄申述書を作成する必要があります。
司法書士に相続放棄を依頼すれば、この作業をまるごと任せられます。
書類が不足していたり申述書に不備があったりすると、相続放棄が却下されるかもしれません。
しかし、公的証明書の収集や法的書類の作成に精通している司法書士であれば、確実に手続きを進められます。
家庭裁判所に相続放棄を申述する
用意した書類を家庭裁判所へ提出し、相続放棄を申述します。
申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続放棄の期限である3か月以内に相続放棄申述書を提出できれば、ひとまず手続きを進められます。
司法書士に依頼すると、余裕をもったスケジュールで申述できるため、期限を過ぎる心配はありません。
照会書に回答する
申述書を提出してから約1〜2週間後に、相続放棄する人のもとに照会書が届きます。
照会書には、以下のような質問が記載されています。
- 被相続人が亡くなったことをいつ知ったか
- 相続財産を使ったか
- 相続放棄をする理由は何か
- 遺産分割を行ったか
これらの質問に正しく回答しなければ、相続放棄が認められない可能性があります。
「回答の書き方が分からない」「回答の内容に不安がある」といった場合でも、司法書士に相談するとアドバイスを受けられます。
ただし、回答の記入と返送は、相続放棄する本人が行う必要があることに注意しましょう。
相続放棄申述受理通知書を受け取る
照会書の回答を返送して問題がなければ、約1〜2週間後に裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
これは、相続放棄が正式に認められたことを知らせる書類です。
この通知書が届けば、相続放棄の手続きは完了となります。
司法書士に相談してから相続放棄の手続きが完了するまでの期間は、1〜2か月程度が目安です。
相続放棄と司法書士に関するよくある質問
ここでは、司法書士に相続放棄の手続きを依頼する際によくある質問に回答します。
司法書士への依頼前に知っておきたいポイントを解説するので、確認しておきましょう。
司法書士への依頼費用を抑える方法はある?
相続放棄を希望する相続人が複数いる場合、同じ司法書士にまとめて依頼すると、一人あたりの依頼費用を抑えられる可能性があります。
必要書類の収集などの作業を一括で行えば、司法書士の負担が軽減されるためです。
被相続人の負債が多く、遺産総額がマイナスであれば、相続人全員が相続放棄を選択することは珍しくありません。
このような場合は、同じ司法書士への依頼を検討してみましょう。
司法書士に費用を支払うのはいつ?
司法書士事務所によって異なりますが、書類の収集や作成が完了した時点で支払うケースが一般的です。
ただし、業務開始前に着手金の支払いが求められたり、実費のみを先に請求されたりする場合があるため、事前に確認しておきましょう。
相続放棄の手続きをスムーズに進めるなら専門家に依頼しよう
相続放棄を司法書士に依頼すると、費用を抑えられる可能性があります。
さらに、不動産の相続放棄をスムーズに進められる、照会書の回答や債権者の通知などについてアドバイスを受けられるなどの数多くのメリットがあります。
専門知識をもつ司法書士のサポートがあれば、安心して相続放棄の手続きを進められるでしょう。
相続放棄について専門家に相談したい方は、杠(ゆずりは)司法書士法人までお問い合わせください。
杠(ゆずりは)司法書士法人では、相続に関する豊富な知識と経験を活かし、相続放棄をはじめとするさまざまなご相談に対応しています。
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