
実家の相続でやってはいけないこと6選!トラブル回避ポイントも解説
不動産
投稿日:2025.04.28
実家の持ち家を相続する際に「何に気を付ければよいかわからない」「損や失敗をしたくない」とお困りの方もいるのではないでしょうか。
実家の相続では、やってはいけないことがいくつかあります。
何も知識がないまま相続をしてしまうと、取り返しの付かない失敗や後悔、お金に関する損をしてしまうことになりかねません。
この記事では、実家を相続する際に避けるべき6つの失敗例と、その回避方法を具体的に解説します。

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目次
実家の相続でやってはいけないこと6選
実家の持ち家を相続する際に、以下の6つはやってはいけません。
- 兄弟の共有名義で実家を相続する
- 相続登記(名義変更)をしないまま放置する
- 活用方法を決めずに実家を相続する
- 相続後に実家の管理を怠る
- 相続直後に実家を売却する
- 相続した実家を無計画に解体する
こうした行動は、実家の相続でよくある失敗です。
相続時には知識がなく十分な準備もできていないため、後から失敗したことに気付き、後悔へとつながります。
以下からは、なぜ後悔するのか、正しくはどう対応すればよいのかを具体的に解説します。
1.兄弟の共有名義で実家を相続する
共有名義とは、一つの不動産に対して複数人が「持ち主」として登記される状態です。
実家の持ち家を兄弟の共有名義で相続するのは、後々のトラブルになりやすいため、おすすめできません。
共有名義にしてしまうと、実家を売却するのも賃貸にするのも、所有者である兄弟全員の同意が必要になるからです。
兄弟の間で意見が分かれるケースは多く、誰か一人でも反対すれば、共有名義の実家は、売却も賃貸もできません。
また、兄弟のうち誰かが亡くなると、その人の持ち分は配偶者や子どもなど別の相続人に引き継がれ、さらに名義人の数が増えてしまいます。
人数が多くなるほど話し合いが困難になり、法的手続きも煩雑になります。
実家の持ち家を共有名義にするのは、公平な遺産分割に見えるものの、やってはいけない方法です。
2.相続登記(名義変更)をしないまま放置する
相続登記とは、家や土地などの不動産を相続する際、亡くなった方から新しい所有者の方へと名義を変更する手続きです。
2024年4月1日以降、相続登記は法律により義務化されました。
具体的には、相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。
相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
義務化される以前は、「名義は変えていないが実家は自分たちが管理している」というケースも多く見られました。
しかし、何代も前の名義(祖父母や曾祖父母)になっていると、登記の手続きが複雑になります。
そうしたケースでは、複数の戸籍を遡って調査したり、相続人をすべて洗い出したりする必要があるため、専門家(司法書士)に依頼することが一般的です。
相続登記は、「後でやろう」と先延ばしにしてはいけない、法律上の義務です。
手続きの負担を減らすためにも、早めに着手しましょう。
3.活用方法を決めずに実家を相続する
実家の相続後、その使い道を決めずに放置することは、思わぬ金銭的負担を生む原因になります。
誰も住まない家であっても、固定資産税(土地・建物に課される地方税)や修繕・管理のための費用が発生してしまうのです。
固定資産税は相続人に支払い義務が生じるため、相続人はご自身が住んでいる家と実家の2つの住宅費を負担することになります。
たとえば、空き家となった実家を所有し続ける場合、固定資産税や雑草の除去・害虫対策などの管理費だけでも年間数万円〜十数万円の支出が続きます。
数年で、数百万円に達するケースもあります。
「とりあえず相続してから考えよう」と考えるのは危険です。
実家を売る・貸す・リフォームして使うなど、具体的な活用方針をあらかじめ家族で話し合っておくことが大切です。
4.相続後に実家の管理を怠る
相続した実家の持ち家は、相続人が責任をもって管理しなければなりません。
管理を怠れば、庭に草木が生い茂り不法投棄の場となったり、野生動物や害虫の住み家となり近隣に迷惑をかけたりします。
さらに放置された建物は老朽化が進み、最悪の場合は地震や台風の際に倒壊する危険性すらあるのです。
周辺に迷惑や危険を及ぼす空き家は行政から指導が入り、改善されない場合は「特定空き家」に指定されます。
特定空き家に指定されれば固定資産税が最大で6倍にも跳ね上がる可能性があります。
こうした事態を避けるためには、相続後すぐに定期的な巡回や清掃、草刈り、防犯管理などを行い、必要に応じて地元の管理業者に委託するなどして、適切な維持管理を継続しなければなりません。
5.相続直後に実家を売却する
特定の条件を満たす場合、相続税の負担を大きく軽減できる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
そのため、相続直後、特に発生してから10か月以内に実家を売却するのは慎重になるべきです。
小規模宅地等の特例とは、持ち家のない方が実家を相続する際に、土地の相続税評価額を最大8割まで減額できる特例です。
つまり、実家の相続で相続税が発生するケースでは、支払う税額が低くなるということです。
小規模宅地等の特例を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 被相続人に配偶者や同居の親族がいない
- 相続人が相続開始の3年前から実家に住んでおらず、自分名義の持ち家を持っていない
- 相続税の申告期限(原則、相続開始から10か月以内)まで実家の土地を所有し続けている
小規模宅地等の特例は、家なき子特例ともいわれ、持ち家のない相続人が相続税が払えずに、実家を手放すことがないように制定された特例です。
ただし、こうした条件を満たさずに相続発生から10か月以内に実家を売却してしまうと、特例の適用が受けられず、数百万円単位の相続税負担が発生するおそれがあります。
相続後すぐに売却を検討している場合は、特例の適用可否を専門家に確認することが重要です。
6.相続した実家を無計画に解体する
「誰も住まないから」「古いから」といって、活用方法が決まる前に実家を解体して更地にするのはやめましょう。
なぜなら、建物が建っている土地と、建物がない更地では、固定資産税の額に大きな差があるからです。
具体的には、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、以下のように大幅な軽減措置が受けられます。
宅地の面積 | 固定資産税の軽減率 |
---|---|
土地の面積が200平方メートル以下の部分 | 更地の1/6 |
土地の面積が200平方メートルを超える部分 | 更地の1/3 |
建物を解体してしまうと住宅用地の特例が使えなくなり、結果として固定資産税が2〜6倍程度に増えることがあります。
もちろん、解体後に売却や有効活用の明確な計画がある場合は問題ありませんが、「とりあえず壊す」といった判断は税負担の増加につながる可能性が高いため、慎重な検討が必要です。
また、自治体によっては空き家の解体費用に対して補助金が出る制度がある場合もあります。
無駄な出費を避けるためにも、事前に市区町村に相談することをおすすめします。
実家を相続しないほうがよいケース
実家を何も考えずに相続してしまうと、かえって損をしてしまうことがあります。
特に以下のようなケースでは、「相続しない」という選択肢も視野に入れるべきです。
- 実家の建物や土地に資産価値がなく、現金や預貯金などのほかの財産も残されていない場合
- 今後、その家を使う予定がまったくない場合
- 相続による親族間の争い(いわゆる「争族」)に関わりたくない場合
たとえば、誰も住む予定がなく、活用する見込みもない実家を相続しても、税金や管理の負担だけが増えることになります。
築年数が古く、交通の便が悪い場所にあるような住宅は、不動産としての価値が低く、売却しようにも買い手が見つからないことがあります。
そのうえ、現金や預貯金、有価証券などほかの財産がほとんど残されていない場合、相続人にとっては「負担だけを背負う」ことにもなりかねません。
実家を相続すると、毎年固定資産税が発生し、加えて、放置すれば近隣に迷惑をかけるため、定期的な清掃や管理も必要になります。
こうした維持費や手間を考えると、使い道のない実家を無理に相続することは「負の遺産」を引き継ぐようなものです。
また、仮に実家にある程度の価値があったとしても、兄弟姉妹などほかの相続人との間で分割の争いが起きそうな場合、精神的な負担を回避するために相続を放棄するという判断もあります。
「親の家だから」と義務感だけで相続を選ぶのではなく、現実的な価値、将来的な維持費、家族との関係など、さまざまな側面を踏まえて判断することが重要です。
相続した実家の活用方法
相続が発生する前に、実家をどのように活用するかを家族で話し合っておくことは重要です。
使い道を決めずに相続してしまうと、維持費や管理の手間だけがかかってしまうこともあるためです。
実家を相続した場合は、主に次のような方法で活用することができます。
- 相続人が住む
- 賃貸住宅として貸し出す
- 更地にして土地を活用する
- 売却する
以下からは、それぞれどのようなメリットがあるのかも交えながら、具体的に解説します。
相続人が住む
もっとも手間が少なく、簡単に実現しやすい活用方法が「相続人が実家にそのまま住む」ことです。
親の死去をきっかけに、これまで住んでいた自宅を売却して実家に引っ越すという選択をする方も少なくありません。
通勤や生活に支障がなく、かつ自分名義の持ち家がない方にとっては、コストも抑えられ、気持ちの上でも実家を残せるという利点があります。
思い出の詰まった家を手放したくない方には、自然な選択肢です。
賃貸住宅として貸し出す
実家に誰も住む予定がない場合は、賃貸住宅として第三者に貸し出す方法があります。
一時的に住む予定がないだけで、将来的には戻りたいというケースでも、「定期借家契約(契約期間を定めた賃貸契約)」などを使えば、期間限定で貸すことも可能です。
ただし、築年数が経過している家や状態の悪い家は、賃貸に出す前にリフォーム(修繕・改装)が必要な場合があります。
簡単な修繕であれば数十万円で済むこともありますが、耐震補強や大規模なリノベーションが必要な場合は数百万円単位になることも珍しくありません。
収支を正確に把握するためには、リフォームにかかる費用と想定される家賃収入をシミュレーションしたうえで、投資として採算が合うかを検討しましょう。
更地にして土地を活用する
実家の建物を解体し、土地だけを更地にして活用する方法もあります。
更地にすることで、活用の選択肢が広がる点がメリットです。
たとえば、以下のような用途が考えられます。
- 相続人が自分で店舗や事務所を建て、事業用に利用する
- 土地をそのまま借地として他人に貸し出す
- アパートや戸建てを建築して賃貸経営をする
- 時間貸し駐車場として運用する
- トランクルーム(収納スペース)を設置して貸し出す
いずれの方法も、継続的に収入が得られるのが特徴です。
ただし、立地や土地の広さによって向き不向きがあるため、事前にリサーチや不動産会社への相談を行ってから決めましょう。
売却する
将来的にも実家や土地を使う予定がなく、ほかの活用方法も難しいと判断した場合は、売却して現金化するという選択肢があります。
特に、立地が悪く再建築が難しいような物件の場合、空き家のまま保有しても固定資産税や維持管理の負担がかかるばかりで、メリットがほとんどありません。
ただし、相続が発生してすぐに売却できるとは限りません。
相続登記や遺産分割協議、必要書類の取得など、売却に向けた事前手続きがあるため、一定の時間と手間がかかります。
また、売却が数年後になると、それまでにかかった維持費や管理費が積み重なり、結果的に手元に残る金額が大きく目減りしてしまうこともあります。
したがって、「売却する可能性が高い」と考えられるのであれば、相続が発生する前から売却を前提にした方針を家族で話し合い、手続きをスムーズに進められるよう備えておくことが大切です。
実家の相続トラブルを避けるポイント6選
実家の持ち家を相続する際に、トラブルを避ける方法は、次の6つです。
- 生前に相続人を決めて遺言書を残す
- 生前贈与を検討する
- 財産調査を正確に行う
- 遺産分割協議書を作成する
- 相続放棄を検討する
- 相続の専門家に相談する
相続時には、予想もできないトラブルが発生しやすいものです。
以下からは、実家の相続トラブルを事前に防ぐための対策を詳しく解説します。
1.生前に相続人を決めて遺言書を残す
現金や預貯金と異なり、不動産は分けることが難しく、誰が相続するかをめぐって争いが起きやすい資産です。
そのため、親が存命のうちに「誰が実家を相続するのか」をはっきりさせておくことが、トラブル防止につながります。
また、口頭で決めておくだけでなく、正式な形で遺言書を作成し、実家を誰に相続させるのかを明記しておくのが賢明です。
一見、円満に話がまとまっているようでも、親が亡くなった後にほかの相続人が意見を変えることは珍しくありません。
実家の相続で揉めごとを避けるためには、生前に相続人を決めることと遺言書を残すことをセットで行うことが重要です。
2.生前贈与を検討する
相続トラブルを回避する手段の一つとして、生前贈与を活用する方法があります。
これは、親が生きているうちに自宅などの財産を子などに譲る制度で、相続ではなく「贈与」として取り扱われます。
実家を生前に譲渡しておけば、死亡後に「誰が引き継ぐか」で争う心配を減らすことができるでしょう。
ただし、贈与を受けた方は、ほかの相続人に対して「遺留分」と呼ばれる、最低限の取り分を侵害していないか注意しなければなりません。
仮に遺留分を侵害していた場合、ほかの相続人から金銭による支払い(遺留分侵害額請求)を求められる可能性もあります。
こうした事情を踏まえつつ、トラブルが起きそうな場合には、生前贈与も選択肢に含めて検討する価値があるといえるでしょう。
3.財産・相続人の調査を正確に行う
相続トラブルの多くは、「知らなかった」ことから生まれます。
そのため、相続を開始する前に、財産の内容と相続人の範囲を正確に把握しておくことが重要です。
たとえば、相続が完了した後になって「ほかにも相続人がいた」「不動産や預金が別にあった」と判明すると、再度遺産分割をやり直す必要があります。
実家の相続についても、遺産分割が済んでいても新たな相続人が現れた場合、その方にも権利があるため、話し合いや手続きを最初からやり直さなければなりません。
精神的な負担はもちろん、時間や費用も再びかかってしまいます。
こうした事態を防ぐために、被相続人の財産と相続人を事前に丁寧に調査しておくことが不可欠です。
4.遺産分割協議書を作成する
相続人が複数いる中で、実家を1人が相続するような場合は、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
遺産分割協議書は、相続人全員が「誰がどの財産を相続するか」に合意したことを文書で残すものです。
相続登記や銀行口座の解約をする際にも必要です。
なお、全員で共有名義にする場合は協議書が不要なこともありますが、共有名義は後々のトラブルのもととなるため、避けるべきといえます。
また、相続する実家に住宅ローンの残債がある場合は、「誰が返済を引き継ぐか」も明記しておくと安心です。
法律上、実家を相続した方だけがローンを返済する義務があるとは限りません。
法定相続人全員に、支払い義務が発生する可能性があるのです。
したがって、相続人間で明確に分担を決め、トラブルにならないように協議書にきちんと記載しておきましょう。
5.相続放棄を検討する
相続には、財産を「受け取らない」という選択肢である「相続放棄」もあります。
相続放棄は、相続人が相続開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申述することで有効になります。
相続では、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や滞納税などのマイナスの財産も引き継ぐことも起こりがち。
もし負債のほうが多い場合、相続放棄をすれば負債の支払い義務から解放されるという大きなメリットがあります。
また、相続人同士の争いに巻き込まれたくない、実家の管理や維持費を負担したくないという理由でも相続放棄は視野に入りやすくなります。
ただし注意点として、相続放棄は「すべての相続財産」を放棄することを意味し、「実家だけ放棄する」という選択はできません。
慎重に検討したうえで、必要に応じて専門家に相談しましょう。
6.相続の専門家に相談する
相続にまつわる手続きや判断は、専門知識が求められる場面が多いため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
財産や相続人の調査、遺産分割協議書の作成、登記申請などは、慣れていないと誤りが起きやすく、その結果が後のトラブルや損失につながる可能性もあるのです。
弁護士や司法書士などに相談することで、見落としや誤解を未然に防げます。
また、相続税の計算や申告が必要な場合は、税理士に相談することが必要です。
相続は一生に何度も経験するものではないからこそ、後悔しないように信頼できる専門家に相談することが鍵となります。
実家の相続の相談は杠(ゆずりは)司法書士法人へ
今回は、実家の相続において避けるべき失敗や、トラブルを回避するための具体的な対策について解説しました。
相続は一度発生すると後戻りができないため、事前に知識を得て備えておくことが重要です。
実家を相続する際には、「やってはいけない対応」や「放置すると損になる行動」を避ける必要があります。
相続に関する知識がないまま自己判断で進めてしまうと、相続税の負担が増えたり、親族間で深刻な対立が生じたりする可能性もあります。
こうしたリスクを回避するためには、相続と不動産登記の専門家である司法書士に相談するのがおすすめです。
杠(ゆずりは)司法書士法人では、相続問題に強みを持つ事務所として、数多くの相談に対応してきた実績があります。
単に書類を作成するだけでなく、依頼者の状況や思いに寄り添いながら、最適な解決策を提案することを大切にしています。
「実家を相続するかどうか迷っている」「相続後、どう活用すればいいか決まっていない」といった方は、相続発生前の段階でも問題ありません。
早い段階から専門家に相談することで、感情的な対立や経済的な損失を避けることができます。
実家の相続について不安がある方は、まずはお気軽に杠(ゆずりは)司法書士法人までご相談ください。
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