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遺言書の効力はどの範囲まで認められる?無効になるケースや有効期間を解説

遺言

投稿日:2025.06.24

相続において、遺言書はもっとも強い効力を持つ法的な書類として知られています。

しかし、どのような範囲まで効力が認められるのか、無効になるケースはないのかなど、具体的な内容についてはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、遺言書で指定できる範囲や内容、無効にならないために知っておきたいポイントについて詳しく解説します。

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遺言書の種類別に見る効力の強さ・争われやすさ

遺言書は要件を満たせばどの種類でも有効とされます。

しかし、作成方法や不備の少なさなどから、自筆証書遺言よりも公正証書遺言のほうが有効性という面では優れているといえるでしょう。

秘密証書遺言は公証役場で認証を受けるという点では公正証書遺言と同じですが、中身が密封されているので公証人も確認していません。

そのため、形式的な不備が残るリスクがある点で、有効性がやや劣ります。

遺言書の種類 効力の強さ 争われやすさ
自筆証書遺言 弱い
公正証書遺言 強い
秘密証書遺言 やや強い

遺言書が効力を発揮するための条件

遺言書が効力を発揮するには、以下の五つの条件を満たす必要があります。

  • 遺言能力(意思能力)があること
  • 法定の方式に従って作成されていること
  • 内容が法に反しておらず、実行可能であること
  • 検認(自筆証書・秘密証書遺言のみ)手続きが行われていること
  • 遺言執行者が決まっていること

※なお、「遺言執行者が決まっていること」は遺言の効力発揮の必須条件ではありませんが、実務上はスムーズな相続処理のために指定されていることが望ましいといえます。

ここからは、それぞれについて詳しく解説していきます。

遺言能力(意思能力)があること

遺言をするには、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 15歳以上であること
  • 遺言の内容と、その結果を理解できる能力を有していること

遺言をするには、民法第961条民法第963条により「15歳以上であること」が必要です。

(遺言能力)

第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

引用元:民法第961条

(遺言能力)

第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

引用元:民法第963条

また、遺言の結果を理解し、判断できる意思能力が備わっていることも求められます。

遺言書は、本人の意思で作成されることが大原則です。

つまり、認知症や高熱、精神疾患など意思能力がなかったと判断される状態で作成した遺言は、無効になる可能性があります。

法定の方式に従って作成されていること

遺言書には三つの方式があり、以下のような特徴があります。

最も手軽に作成できるのは自筆証書遺言ですが、内容の不備により無効になってしまうケースも少なくありません。

一方、公正証書遺言は若干ハードルが高いですが、公証人と二人以上の証人立ち合いで作成するため有効性においては優れているといえます。

遺言書の種類 方式
自筆証書遺言

・全文を自筆(パソコン作成は不可)
・日付・署名・押印が必要
・財産目録のみパソコン出力でも可(令和元年法改正以降)

公正証書遺言 ・公証役場で公証人に口述し作成
・証人2名の立ち会いが必要
・作成後は検認不要で、最も安全性・信頼性が高い形式
秘密証書遺言 ・内容を秘密にしたまま封書で公証人に提出
・実務上はあまり使われない

内容が法に反しておらず、実行可能であること

遺言書に記載される内容は、法律の範囲内で実行可能なものでなければなりません。

たとえば、違法な行為を要求するものや、「財産は●●と〇〇で適当に分けて」など明らかに不合理で不明確な内容の遺言書は無効になる可能性があります。

また、相続人には遺留分と呼ばれる最低限の割合が保証されています。

遺言書で遺留分を侵害した場合、民法第1046条第1047条により、侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」を受遺者または受贈者に対し行うことで、金銭による補填を求めることが可能です。

検認(自筆証書・秘密証書遺言のみ)手続きが行われていること

検認とは、民法第1004条に基づき、遺言書の保管者または発見者が、遺言者の死亡を知った後に家庭裁判所へ遺言書を提出し、相続人に対し通知と内容確認を行う手続きです。

(遺言書の検認)

第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

引用元:民法第1004条

検認が必要なのは自筆証書遺言と秘密証書遺言で、公正証書遺言は必要ありません。

なお、法務局で保管された自筆証書遺言も、2020年7月の法改正により検認が不要とされています。

(遺言書の検認の適用除外)

第十一条 民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

引用元:遺言書保管法 第11条

検認が済むまで遺言書を用いた相続手続き(例:相続登記や預金解約)を進めることができないため、速やかに対応すべき部分です。

ただし、検認手続き自体は遺言書の有効性を判断するものではありません。

遺言書を見つけ次第、早急に申し立ての準備を始めることをおすすめします。

遺言執行者が決まっていること

遺言執行者とは、遺言の実行を主導する役割を担う人です。

遺言執行者の指定は必須要件ではありませんが、指定されていない場合、相続人全員で遺言を実行していくことになります。

家庭裁判所に申し立てて遺言執行者を指定してもらうことも可能。

しかし、いずれにしても相続人に負担をかけることになるので、あらかじめ遺言執行者を指定しておくほうが良いでしょう。

遺言書の効力が無効になる主なケース

遺言書が無効になる主なケースとして、以下のような例が挙げられます。

  • 遺言作成時に遺言能力がなかったと判断される
  • 相続人全員に不公平・偏った内容があると判断される
  • 遺言書の内容に不備がある
  • 相続財産の内容や受遺者が明確に記載されていない
  • 遺言者以外が書いた部分があると判断される

ここからは、それぞれのケースについて詳しく解説していきます。

遺言作成時に遺言能力がなかったと判断される

遺言能力については、民法第961条では「15歳以上であること」が明記されています。

加えて判例上、「遺言の内容とその結果を理解・判断できる程度の意思能力があるかどうか」が問われ、精神状態・認知症の程度・診断書などが総合的に考慮されます。

具体的に定義されているものではありませんが、一般的には「遺言者自身が遺言の内容を理解し、遺言によってどのような結果をもたらすか理解している」状態だと考えれば良いでしょう。

遺言能力を争われることが多いのは認知症ですが、それ以外では病気や未成年者なども挙げられます。

いずれの場合も認知症や未成年だからという理由だけで無効になることはなく、遺言作成時の判断能力、精神状態、医師の見解などを踏まえて複合的に判断されます。

相続人全員に不公平・偏った内容があると判断される

遺言書の内容が著しく偏っていたり、公序良俗に反しているものは無効とみなされることがあります。

ここでいう偏りや公序良俗とは「財産をすべて福祉施設に遺贈する」「長男には財産を相続させない」といった遺産分割上の不公平を指すものではありません。

こういったケースでおもに争われるのは、不倫相手に財産を譲る趣旨の遺言です。

法定相続人は遺留分を請求できるだけでなく、公序良俗に反する遺言であるとして、遺言書の無効確認調停を申し立てることもできます。

ただし、この場合も不貞相手への遺贈だからといって、一律に無効とされることはなく、遺贈に至った経緯や状況などを考慮して判断されます。

遺言書の内容に不備がある

自筆証書遺言が無効になるケースで最も多いのが、以下のような要件を満たしていないケースです。

  • 財産目録以外の全文を遺言者が自筆で書く
  • 作成日を自筆で書く
  • 戸籍上の氏名を自筆で書く
  • 名前の後に押印する
  • 訂正には印鑑を用い、変更箇所に署名と変更内容を記載する

こうした要件に誤りや漏れがあると、遺言書として認められなくなる可能性があります。

自筆証書遺言は自分ひとりで作成できるものですが、それだけにミスが生じやすく、無効になるリスクがある点にも注意が必要です。

書き方に自信がない場合は、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

相続財産の内容や受遺者が明確に記載されていない

遺言書は「誰に」「どの財産を」「どのくらい」譲るのかが、明確に記されていなければなりません。

被相続人の意思を汲んで、できる限り有効となるよう解釈するのが通例ですが、遺贈する相手が確認できない、所有する不動産の情報が大幅に誤っているなど、内容が不明確な場合は遺言書として認められない可能性があります。

遺言者以外が書いた部分があると判断される

遺言書は遺言者単独で作成されるものなので、共同遺言は法律で禁止されています。

たとえば夫婦連名で遺言書を作成することは、認められていません。

また、第三者の誘導や圧力、脅迫などによって作成された自筆証書遺言も無効となります。

遺言書が無効かどうか判断するには、内容の不自然さや合理性、当時の状況などを踏まえて総合的に判断されます。

とはいえ遺言者が亡くなっている以上、誘導や圧力、脅迫があったことを立証するのは困難です。

遺言書に疑いがあると感じた場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

遺言書の効力を確実にするためのポイント

遺言書の効力を確実にするポイントとして、以下のような点が挙げられます。

  • 公正証書を利用する
  • 医師の診断書や作成時の録画・証人を残す
  • 内容を定期的に見直し、最新状態にしておく
  • 相続人に「遺言の存在」と「理由」を伝えておくことで争いを減らす

ここからは、それぞれについて詳しく解説します。

公正証書遺言を利用する

公正証書遺言を利用する利点のひとつとして、公証人が作成するので要件不備による無効がほぼないという点が挙げられます。

ただし、公証人が作成した公正証書遺言であっても、遺言者に意思能力がなかったと判断された場合や、公証人に虚偽の事実を伝えて作成された場合には、無効とされることがあります。

また、作成には公証人と二人以上の証人が立ち合い、本人に内容を確認しながら手続きを進めていきます。

公的な場で本人の意思を確認していることから、遺言能力や真意に反したものであるという争いが起きにくいため、より確実性が高くなるといえるでしょう。

医師の診断書や作成時の録画・証人を残す

遺言能力の有無を争う際に重視されるのが、遺言者の当時の病状や認知症の程度です。

遺言者が亡くなったあとで遺言能力に疑問が生じた際に、有力な判断材料となるのが医師の診断書や遺言書作成時の動画などの客観的資料です。

認知症の場合は介護サービスを利用する際に作成される「介護認定記録」にも、遺言者本人の心身の状態が詳しく記録されています。

こういったものを残しておき、遺言書の有効性を立証していくことが大切です。

内容を定期的に見直し、最新状態にしておく

遺言書には有効期限がないため、何年前に作成した遺言書でも効力は変わりません。

しかし、時間が経つうちに相続人が亡くなっていたり、財産の状況が変化していることもあるでしょう。

遺言の内容と現状があまりに異なっていると、内容が不明確であるとして無効になってしまう可能性もあります。

遺言書の内容は手続きを踏めば、いつでも変更することが可能です。

何年かに一度は遺言書の内容を見直して、現状に合ったものにしておきましょう。

自身で保管している自筆証書遺言の場合は、手続きなしで変更することができますが、訂正方法が複雑なので新たに書き直すほうが確実でしょう。

その際は古い遺言書を人目に触れない方法で、確実に破棄しておくことも大切です。

相続人に「遺言の存在」と「理由」を伝えておくことで争いを減らす

相続トラブルでよくみられるのが、遺言書の内容を知らなかった相続人が、内容に納得できず争いに発展するというものです。

財産をどのように引き継がせるかは遺言者の自由ですが、法定相続分とは違う割合で財産を分けたり、相続人以外に全財産を譲るなどの遺言は、相続人にとって心情的に納得しがたいものです。

しかし、本人の口から真意を聞けることで、気持ちをおさめられることもあるでしょう。

遺言書をきっかけにした争いを減らすには、遺言者が元気なうちに遺言書とその内容について明らかにしておくのもひとつの方法です。

遺言書の効力についてよくある質問

遺言書の効力についてよくある質問として、以下のようなものが挙げられます。

  • 遺言書が複数出てきた場合はどちらが有効?
  • 認知症の人が作成した遺言書の効力は認められる?
  • 遺言書の有効期限はある?
  • 遺言書を勝手に開封したら効力はどうなる?

ここからは、それぞれについて詳しく回答していきます。

遺言書が複数出てきた場合はどちらが有効?

遺言書が複数出てきた場合、基本的には日付が新しいものが優先されます。

ただし、新しい日付の遺言書が要件を満たしていないときは、要件を満たしている日付の遺言書が有効とされます。

この時、自筆証書遺言と公正証書遺言で優先度に差はありません。

あくまで、最新の日付のものが優先されるという点に注意しましょう。

遺言書が複数あることに気づかず手続きを進めてしまい、あとから最新の遺言書が発見された場合、相続登記や相続税申告などの内容が変更される可能性があり、追加対応が必要となることがあります。

金融機関の手続きや相続登記、相続税の修正申告などで、二度手間以上の負担がかかる可能性も。

遺言書の書き換えや変更を行った際は、古い日付のものは確実に処分しておくことが大切です。

認知症の人が作成した遺言書の効力は認められる?

認知症の方が作成した遺言書は、遺言能力の有無が争われる可能性があります。

ただし、認知症と診断されていても、遺言の内容を理解する能力があれば、本人の意思で作成されたとして効力を認められるケースが多いようです。

また、遺言の内容が本人の意思に基づいていると推測できるかという点や、作成時の状況などを総合的に判断して遺言書の効力が判断されます。

遺言書の効力をより確実にする対策として、公正証書遺言を作成したり、作成時の状況を記録や診断書とともに残しておくという方法もあります。

いずれにしても、遺言書の作成時にしっかり対策を立てておくことが重要です。

場合によっては、司法書士や弁護士のサポートを受けることも検討しましょう。

遺言書の有効期限はある?

遺言書には有効期限がないので、何年前のものでも効力は失いません。

ただし、もう亡くなった相続人の名前が記載されていたり、財産の状況が異なる場合は内容が不正確であると判断されるおそれもあります。

遺言書の内容は定期的に確認して、現状に合ったものに更新することをおすすめします。

遺言書を勝手に開封したら効力はどうなる?

遺言書を勝手に開封しても、効力を失うことはありません。

遺言書は改ざんや変造、隠匿を防ぐため、検認手続きを経て開封する旨が民法で定められています。

この手続きを踏まずに開封するのは法律違反にあたるため、5万円以下の過料が科される可能性も。

遺言書を見つけてもその場で勝手に開封せず、速やかに検認の申し立てを行うことが大切です。

もし誤って開封してしまったり、そもそも封がされていなかった場合も、検認申立書にその旨を記載する欄がありますので、正直に記載しましょう。

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預貯金の解約や相続登記といった手続きについても、当法人でサポート可能ですので、ぜひご相談ください。

平日夜間や土日祝のご相談にも対応可能です。

遺言書の作成をお考えの方は、ぜひ杠(ゆずりは)司法書士法人までお気軽にご相談ください。

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