最低資本金の未達成による会社解散みなしとは
企業法務
|更新日:2022.11.16
投稿日:2011.06.07
現在、株式会社は資本金1円でも設立できます。これは、平成18年5月1日以降のことで、同日施行された会社法によって資本金のハードルがなくなったことによります。
会社法が施行される前の商法においては、株式会社は1000万円以上、有限会社は300万円以上の資本金が要求されていました。
これを、最低資本金規制といいます。最低資本金規制は商法が定められたときから存在したわけではなく、平成2年の商法改正によって設けられた規制です。
平成2年の商法改正により、改正法施行時点で最低資本金に達しない会社については、施行日から5年の猶予期限までに、最低資本金に達するよう資本増加させるか、又は組織を変更するか、が要求されました。
そして、期限である平成8年3月31日までに最低資本金に達しない会社は、解散したものとみなされました。事前に解散とみなしますよ、という予告はされますが、みなされた後は登記簿に勝手に(登記官の職権で)解散した旨記載されます。
この場合、登記簿には、『平成8年6月1日平成2年法律第64号附則第19条第1項の規定により解散』と記載されます。
この記載があれば、平成2年の商法改正による最低資本金規制の導入に基づく解散みなしであることが判断できます。
最低資本金を満たすことができずに解散とみなされた会社は、解散みなしの日から3年以内に限り、会社を解散前の状態に戻す(継続)という途が残されていました。
しかし、現在残っているみなし解散の会社は、解散してから既に3年が経っているため、継続の途が絶たれ、このまま清算するしかありません。
最低資本金を満たすことができず解散みなしとなった日から3年経ってしまうと、会社の継続もできなくなります。
現在みなし解散のままで会社が残っていても、継続の途が絶たれているため、このまま清算するしかありません。
最低資本金が廃止された今となっては継続が許されそうですが、あくまで、みなし解散となった時点における法規制に従うため、やはり継続できません。
ちなみに、みなし解散と違い、会社の意思(総会の決議)によって解散した会社は、解散から何年経っても清算中であれば継続することができます。
解散みなしの会社でも、通常の解散した会社と同様、清算の目的の範囲内であれば会社として存続します。
清算の目的の範囲に含まれることとは、会社の事業の結了、事業の譲渡、債権の取立、債務の弁済、残余財産の分配などがあります。
清算中は、このような清算の範囲でしか行為ができないため、もし代表者が、清算の範囲に含まれない行為をしても、その行為は会社には帰属しません。
最低資本金規制によるほか、法律では、会社が休眠状態である場合に解散とみなす扱いをしています。
休眠状態と判断される基準は、『会社であれば定期的に行うはずの登記をしていないこと』です。
まず、商法においては、取締役の任期が最低でも2年に1回行う必要があったことから、最後の登記をしたときから5年間経過した時に解散したものとみなされていました。
この場合の登記簿には、『商法406条ノ3第1項の規定により解散』と記載されます。
また、現在の会社法においては、役員の任期が10年に伸長できるようになったことから最後の登記をしたときから12年経過した場合に同じように解散したものとみなされます。
この場合の登記簿には、『会社法第472条第1項の規定により解散』と記載されます。
前述のとおり、解散した後でも、会社財産をすべて清算して『清算結了』の登記をしない間は会社は存続していますし、登記簿も取得できます(管轄法務局でしか取得できない場合もありますが、必ず登記簿は存在します)。
取引される相手会社の事前調査において、会社の登記簿の謄本を取得できて法人であることが分かっても、注意して謄本を確認してみると『みなし解散』の登記がされているかもしれません。
もし、前述の最低資本金の未達成を理由に解散みなしがなされた会社であるときは、現在においてはすでに清算の途しか残されていませんので、その会社と取引することは差し控えるべきでしょう。
また、自社がみなし解散となることを避けるためにも、最後に登記してから12年経ってしまわないよう、役員変更登記は忘れずに行うようにご留意下さい。
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