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中国進出企業に伴う法務について

企業法務

|更新日:2022.11.21

投稿日:2011.07.19

隣国中国の経済成長が著しい伸びを記録し続けています。

従来は人件費の安さを目当てに製造業の拠点として進出の対象となっていましたが、最近では【世界最大の消費地】としての存在感をますます大きくしており、中国人の購買力を目当てに進出を考える企業が増えています。

それに伴い、中国と関係を持つ日本企業は2つのタイプに分けられます。一つは、中国における生産拠点を撤退しさらに人件費の安いベトナムやカンボジア等の新興国を目指す、あるいは日本国内の比較的平均所得の低い地域へ移転しようとする会社です。

もう一つは現地市場で日本製品を販売するために現地法人等を設立してから進出を図ろうとする会社です。今、中国へ進出する際にどのような点が法務の観点から必要となるかにつき、以下にまとめます。

1.組織について

まずは内資企業、あるいは外資企業のいずれの形態で活動するのかを選択することになります。

外資企業として活動する場合、外国資本が株主として企業の支配に関与する唯一の方法ですが、投資条件や企業の設立許認可等において制約をうけ、また実際の取引や行政上の取扱いにおいても根拠のない不利益を受けてしまうことが多々あります。

事業を解消する際も外資企業として「合弁」の形態を選択している場合、日本への撤退をうまく完了させることができずに、現地パートナーに全ての経営権を与えざるを得ないといったケースが多発していますから、いずれの組織体として活動するかは大きなポイントになります。

そのため、日本企業の中には、絶対に信頼できる中国人パートナーがいる場合にその方を株主兼代表者として内資企業として会社設立をするものもあります。

2.税務について

昔は、「二免三減」といった税制の特典が見られました。法人税につき、2年免除した後の3年間は半額を徴収するというものです。

製造業誘致のためにとにかく国内へ外資を誘導することが目的だったことからそのような大胆な税制がとられましたが、現在は環境やハイテク事業など特定の業種にしか優遇税制は認められていません。

また最近では日本の台所事情もあって、中小企業といえど移転価格税制への対応の必要性も高まっていると思われます。

製造業を始めとする大企業が移転価格税制をめぐって、国税サイドとの見解の相違があったことに関する新聞記事を目にすることがありますが、今後は大企業にとどまらず中小企業といえども安易に親子会社間取引を進めることが禁物です。

取引後に想定外の納税をしなければならないといった事態を避けられるよう、現地法人と連結化するかどうかについては熟考が必要でしょう。

3.労務について

現在の中国の経済発展と表裏の関係で賃金も上昇しています。大連ではこの1年以内に最低賃金が50%近くもアップしました。

そういった点も踏まえ、中国における労務問題は日本と同等に考えると痛い目を見る可能性が高まります。大きく違う点は、まず中国人には「サービス残業」という感覚がないということです。

残業すればその分給与を支払ってもらって当然で法律上その権利があるのだから請求するのは当然の権利だ、という感覚をはっきりと持っています。

また、女性の勤労者としての地位がしっかりとしていることから妊娠中の女性従業員の取扱い等にも気をつけなければいけません。

4.債権回収

よく中国は「人治国家」などと言われますが、最近では「法治国家」の体をなしてきているので企業活動の障壁も下がってきているようです。

しかし、現地企業で働かれている方のお話を聞くと、人の意識が劇的に変わっているわけではないため、まだまだやりにくい点が多くあるということです。

未収金を回収するために裁判をして勝訴したとしても弁済を得られないといったケースをよくききますがほんの一例です。

また地域主義というものが強く、地方の裁判所で裁判を起こしても地元優先の論理が働き、外資企業が裁判等で勝訴することはさらに難しいと言われます。

債権回収を確実にするための一番の手法は、取引先との信頼関係構築に尽きる、という他ありません。

以上、重要と思われるポイントのさわりにつき言及しましたが、他にもおさえるべき点はたくさんあり、しかも深いと思われます。

しかし、成功している企業に共通している点は、その企業が「現地化=ローカライズ」しているかどうか、です。

そして日本における実質的な経営者、運営者の方が現地のパートナー等と信頼関係を築くための様々な工夫をされている、という点もあげられるでしょう。

そういった体制を作り込んでいくためのお手伝いを通じて今後も日本の中小企業が世界で活躍する橋渡しを続けていきたいと思います。

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石井 満

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