事業承継と士業の関わり方 おおさか法務事務所の事業承継(1)
事業承継
|更新日:2022.12.3
投稿日:2011.10.25
近年、日本人の平均年齢の上昇に伴い、日本国内の株式会社における代表取締役の平均年齢も上昇しています。
少し古いデータにはなりますが、中小企業白書からの引用によれば、2007年の株式会社における代表取締役の平均年齢は59歳となっています。
このことからも、事業承継への対策は、中小企業にとって喫緊の課題ということがいえそうです。
一方で、日本経済の低調ぶりが日々報道されており、のみならず、ギリシャ危機を背景にしたヨーロッパ経済の動揺が、ますますその不透明感を助長しているようです。
その中にあって国内中小企業がしっかりとした経営を続け、かつ事業承継への各ステップを着実にこなしていくということは困難な作業だと思いますが、日本経済の屋台骨を支えるという意味でもますます重要性を帯びているように思います。
上記については税理士を始めとする各士業が把握しており、従来から様々な形で支援がなされてきました。
節税に始まり、株主の整理や遺言書の作成、財務分析やマーケティング、そして人事権の掌握など、その切り口は多岐にわたります。
しかし、その関与する深度については、それほど深くないのではないかという気がします。
どの専門職も、自身の専門分野においては最高のパフォーマンスでの部分最適を目指すのですが、不安だらけの後継者自身の心理的状態を受け入れた上で承継事案全体を俯瞰し、やるべき事の優先順位づけをするという全体最適を目指した形で関与するケースは少ないのではないかと思っています。
ここでポイントとなるのは、後継者自身という「ヒト」の部分にスポットライトを当てるという点です。
専門職は会社を解決すべき「モノ」として見てしまう傾向にあり、財務分析、マーケティング調査、あるいは株式の所在の把握といったところから解決に入ることが多いでしょう。
しかし、事業承継の目的は対象となる企業が永続してフローを生み続けられる形で、次代に経営をバトンタッチをすることですから、全責任を負って会社に魂を吹き込んでいく肝心の後継者自身の心の状態やキャリアの在り方を把握し、そもそも本当に「承継すること」が彼にとって適切な選択肢かどうかを判断するという視点がまずは重要となります。
一般的に会社の後継者は「二代目さん」などと呼ばれ、周囲から羨望の眼差しで見られることも珍しくありません。
しかし、カリスマ性のある創業者を幼い頃から見て育ち、親と比較されることもままある中で、後継者は常に相当のプレッシャー下にあります。
「息子だから家業を継がなければならない。」、「他に継ぐ人がいないから自分が社員を護らなければならない。」、あるいは「周囲が喜んでくれるから私がやらなければならない。」というように、自分が是非やりたいという思いとは全く別のところにある、半ば脅迫的な観念に近い思いの方も多くおられるでしょう。
就職や起業、あるいは転職などのキャリアが全て事業承継への一連のプロセスとしてしか捉えられず、自分の人生を自分自身で描いているという実感が持ちにくい傾向にあるのは否めないように感じます。
一方で、その承継する責任はというと、組織のトップであるため独りで従業員、取引先、そして自身の家族を守る立場にあり、借り入れする際には連帯保証人として全財産を銀行に差し出すことを求められ、最悪の場合は破産も甘受しなければならないという、とても大きなものです。
こういった後継者がおかれた状況を踏まえると、本当に事業承継を成功させる大前提として取り組むべきは、「部分最適」に走ってしまうのではなく、まずは後継者の方々が必然的に陥りがちな「受け身の姿勢」に気付いてもらうことだと思います。
「自分が継がなければならない。」といった受け身の姿勢から「これこそが自分がやりたい、生涯をかけてやらなければいけない事業である」とか、「自分以外にこの事業はできるわけがない。」という積極的な姿勢に転換していただき、「上から降ってくる相続の一形態」というイメージから「超友好的な会社の乗っ取り」であるという感覚のパラダイムシフトを起こしてもらうことこそが重要です。
それなくして本当の意味での人事権の掌握も財務分析後の自社の現状把握もあり得ないと思います。
今回は、事業承継問題について士業が取り組むべき課題として、後継者の心の持ち様の転換ということについて述べましたが、次回は、次に後継者が直面するであろう経営上の課題について述べたいと思います。
→ 「後継者のための財務知識 おおさか法務事務所の事業承継(2)」
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