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合同会社と株式会社の比較

企業法務

|更新日:2022.12.3

投稿日:2011.11.29

平成18年に施行された会社法により、会社には「株式会社」と「持分会社」の2種類が認められています。

個人の方が起業され会社を立ち上げる場合、「株式会社」の設立を希望される方が一般的に多くおられます。

このコラムでは、「持分会社」の中でも「合同会社」という会社形態について説明させていただきたいと思います。

合同会社とは、会社法の施行に伴い新たに認められるようになった会社形態で、株式会社と同様に1円の出資でも会社を設立することができ(実際には登録免許税がかかるため1円だけでは不可能ですが)、その出資者の事を株式会社では「株主」(会社設立時は発起人)と呼ぶのに対して、合同会社は「社員」といいます。

合同会社の一番の特徴は、出資者(社員)と業務の執行者が同一である点です。

これに対して株式会社は、株主がお金を出し合い、自分たちは会社のルールである定款を定め、それに基づいて株主総会で会社の方針等を決め、その大きな枠組みの中で、取締役に会社の業務執行を委任することで会社の運営がなされます。

会社法上で想定されている株主の目的は、会社の運営決定および会社の得た利益の配当を受けることにあります。

ただ、この特徴は上場企業や一定規模以上の大きな会社を想定したものであり、日本に多くある中小企業では、株主=取締役となっているため、株主が業務権限を有して会社経営を行っているケースが通常です。

合同会社では、出資者である社員が原則として会社の業務執行を行い、例外的に、社員の中で業務執行を行う社員を制限することができます。つまり、経営と所有が一致しているということが原則となります。

また、株式会社では法人が出資して株主となることは可能ですが、業務を執行する取締役は、必ず自然人、つまり人でなくてはなりません。

しかし、合同会社の場合、法人が出資し、その法人が業務執行者となることが可能です。法人が業務執行者に就任した場合、法人の中で実際に業務執行にあたる職務執行者を決めることが求められ、その職務執行者の氏名住所は合同会社の登記事項になります。

したがって、株式会社の場合、役員報酬は必ず個人に支払われますが、合同会社で業務執行者に法人が就く場合、合同会社の役員報酬は法人に対して支払われることになるのです。

今の日本の中小企業は、ほとんどが譲渡制限の規定がつけられている株式会社で、株主=取締役となっている会社が大半です。

その、譲渡制限がつけられている株式会社と、合同会社との比較を以下で確認してみたいと思います。

<株式会社(譲渡制限あり)>

 ↓

<合同会社>

出資者
株主
 ↓
社員
社員の数
1人から可能
 ↓
1人から可能
出資者責任
有限責任(出資した金額の範囲)
 ↓
有限責任(出資した金額の範囲)
業務執行
所有≠経営 株主総会の決議により重要な事項を決定し、実際の業務は取締役が行う
 ↓
所有≒経営 業務執行をしない社員を定款で定めることができる
資本金
いくらでも可能(登記事項)
 ↓
いくらでも可能(登記事項)
役員
個人のみ
 ↓
個人・法人がなれる 役員の任期もなし
損益の分配
株主平等の原則 出資額に応じた分配 異なる分配は可能
 ↓
柔軟な定款の定めが許される 定款の定めがなければ、出資した額に応じた分配あり
 ↓
なし
定款変更
株主総会特別決議 議決権の過半数を所有する株主出席、出席した株主議決権の3分の2以上の同意
 ↓
総社員の同意
出資の譲渡
譲渡制限規定による
 ↓
原則、他の社員全員の承諾
設立時の登録免許税
15万円
 ↓
6万円
公証役場における定款認証
必要 約5万円 紙で作成した場合、プラス印紙代4万円
 ↓
不要 紙で作成した場合、プラス印紙代4万円

おそらく、会社設立、法人成りを考えている方が株式会社を選択する理由としては、株式会社しか会社形態になじみがなかった、もしくは、合同会社という名前は社会的認知が低いからという理由が多いのではないでしょうか。

上記のとおり、株式の譲渡制限がつけられた株式会社と比較すると、実質的にはほとんど変わらない部分もあることがわかります。

合同会社は、設立の際にかかる登録免許税が株式会社と比べ格段に安く設立登記ができ、なおかつ公証人役場での定款認証も不要のため、公証役場に支払う定款認証費用5万円が不要となります。

また、当事務所を含む電子認証の対応事務所に定款作成を依頼すると、電子定款を作成するため、定款に貼らなければならない収入印紙4万円もかかりません。

また、株式会社と同様に、増資や減資をすることも、株式会社への組織変更をすることも可能です。(別途、登録免許税等の費用はかかります。)

資産管理のための会社や、自らが出資して個人事業主から法人成りしようと考えておられる方の場合、起業時の経費は少しでも抑え、課税対象を法人にしたいという目的があるかと思います。

そのような目的の会社に関しては、合同会社の設立も選択肢の一つとしてご検討されてみてはいかがでしょうか。

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