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オーナー経営者の相続により起こり得る事業承継リスク

事業承継

2018.10.15

突然の相続発生により事業承継から相続問題へ

事業承継には、「経営の承継」と「財産の承継」という2つの側面があります。そのうち、関係者の理解や後継者教育などの「経営の承継」については早期に取り組んでいる企業が多いものの、「財産の承継」については税務コストの問題や関係者の意識などにより対応が遅れ、長期化する傾向にあります。

一方で、承継後の後継者による安定的な事業運営には、迅速でかつ自由な意思決定ができる経営基盤が必要であり、そのためにもオーナー経営者の有する株式や会社で利用する土地建物などの事業資産、特に「株式」は必要不可欠なものです。にもかかわらず、その有する株式は、オーナー経営者の自宅や預貯金などと同じように「個人の資産」です。

もし、オーナー経営者が遺言書など何ら相続の対策を講じないうちに、相続が起こってしまったら…。その予測不可能なオーナー経営者の突然の相続によりオーナー経営者の株式は「遺産」としてその「相続人」の権利の対象となってしまいます。

後継者がオーナー経営者の相続人である場合、後継者が株式を手に入れるためには、他の「遺産」と同じように「遺産分割協議」を経て他の相続人全員の同意を得なければならず、相続人間で対立、跡目争いがある場合にはスムーズにはいきません。

オーナー経営者の突然の相続により、事業承継は、たちまち個人的な相続トラブルと絡み合い複雑化します。後継者が無事に株式を取得して経営の実権を獲得するために、場合によっては多大な時間と労力を要し、スピードが要求される局面で迅速な対応ができません。

これによって会社の経営がストップすると事業存続も危ぶまれる事態となる可能性があります。

遺産分割協議は時間がかかる

遺産分割協議に至るまでに、通常は、「どのような遺産があるか」の把握、「遺産の額」の算定、そして「遺産分割に参加すべき相続人は誰か」の特定など行います。

例えば、相続人のうち普段交流がない、あるいは音信不通の相続人が存在する場合には、居場所の特定や協力の依頼を行う必要があるため協議は難航するでしょう。

そして、相続人全員の同意を得られるような分割案を検討します。全体の遺産に対する事業資産の割合によっては、他の相続人に代償金の支払いが必要な場合もあるでしょう。この場合には資金調達も必要となります。

協議をしても合意に至らなければ調停、調停も整わなければ審判に委ねるなど、遺産分割の解決までに相当な時間を要してしまいます。

遺産分割が整うまでは株式が共有状態に

遺産分割協議が整うまでの共有状態の間、オーナー株式の議決権を行使するためには、相続人のうち「権利を行使する者」を協議し決め、会社に通知します。

この「権利行使者」を誰にするのか決めるための協議は、必ずしも相続人全員の同意を要さず、相続人の「相続分の過半数」の賛成多数で行えばよいとされています。

しかし、相続人の間で全く協議をすることなく、あるいは、賛同を得られる一部の相続人だけで勝手に「権利行使者」を決めることはできず、必ず事前の協議が必要であり、また、その協議には全ての相続人に参加する機会が与えられなければなりません。

そして、相続人のうち後継者が「権利行使者」と決定し会社に通知すれば、会社に対しては、その後継者が単独でオーナー株式について議決権を行使することができます。

これについても、会社に対しては「権利行使者」が単独で議決権を行使できるものの、裁判例では、その権利行使の方法については、事前に他の相続人と協議すべきとされています。なお、この協議の方法は、直ちに株式を処分することになるような重要な決定を除いて相続分の過半数で行うべきとされています。

そして、後継者が事前の協議を経ることなく「権利行使者」として議決権を行使していることを会社側が認識している場合には、これに基づいて決定した株主総会の決議の効力が否定される可能性があります。

このように、共有状態の間には、「権利行使者」の決定や権利行使の方法に関する事前の協議など、後継者は自由な意思決定ができません。

後継者が相続人でない場合には深刻な事態に

後継者が血縁関係のない従業員などオーナー経営者の相続人でない場合には、もっと事態は深刻です。当然ながら、後継者は、相続人でないため相続によって株式を取得することはできません。まずは、株式を相続した相続人から株式を譲り受けるべく交渉しなければなりません。

そのためには、前提として相続人の間で遺産分割協議が整い株式の名義人が確定していなければなりません。また、名義人が確定しても、株式譲受につき理解が得られるとは限らず、条件面での調整に難航することも予想されます。

例えば、事業の債務負担を懸念して相続人全員が相続放棄をする可能性もないわけではありません。その結果、相続人となる者が誰もいなければ、裁判所が選任する「相続財産管理人」なる第三者との間で株式の譲渡の交渉を行う特殊な事態となります。

その間も後継者による株主総会の運営ができないため、場合によっては事業が廃業に追い込まれる事態となります。

まとめ

誰にでも訪れる相続ですが、オーナー経営者の相続は、事業継続に重大な障害となる事態に発展してしまいます。

後継者にスムーズにかつ確実に経営を承継させるために、オーナー経営者は、自身の保有する株式などの事業資産を後継者に承継させる遺言書を作成しておくのが望ましいでしょう。

そして、遺言書の内容が他の相続人の遺留分を侵害するようであれば遺留分紛争により結果として事業資産が分散してしまいますので、遺留分を考慮した遺言書あるいは遺留分の対策も合わせて検討する必要があります。

遺言書は、オーナーが単独で、かつ、後継者に秘密裏に作成することが可能です。そして、オーナーが健在でなければ作成できません。後継者へ事業資産の承継を終えるまでの保険としてすぐに実行できる対策です。是非、遺言書の作成を優先的事項としてご検討下さい。

遺言書は書き方によって法的な効力を失ってしまいます。なので、法的効力のある遺言書を用意しておきたい方は、おおさか法務事務所までお気軽にご相談ください。

(吉田 有希)

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