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未収金への対応

企業法務

|更新日:2022.11.18

投稿日:2011.10.18

売掛金の未回収状況や不良債権化は、企業にとって深刻な問題の一つです。

例えば100万円の焦付が発生すると、仮に利益率10%の会社であるとするならば、その損失を回復するには、1000万円の売上を上げる必要があります。

さらにまた、資金繰りが悪くなり、最悪の場合は、黒字倒産(帳簿上の収支計算は黒字であるにもかかわらず、売掛金の回収不能や取引先の倒産などの事情で倒産すること)ということもあり得ます。

しかしながら、日頃の営業活動においては、売上を伸ばしたり、営業成績を伸ばすことに力点がおかれ、その売上金の回収については、後回しになってしまうことが多いのではないでしょうか。

売上金の管理回収をいかに合理的に継続的に行うかはとても大切なことです。

今回は、未収金が発生した場合の基本的対応のポイントを整理したいと思います。

売掛金の支払いが遅れている場合、まずは、次のポイントを確認する必要があります。

  1. 契約書や注文書など、取引の「証拠」となる資料があるか
  2. 相手に「支払い意思」があるか
  3. 相手に「財産」があるか
  4. 「消滅時効」は大丈夫か

1.契約書や注文書など、取引の「証拠」となる資料があるか

相手が支払をしない場合、最終的には、相手に対し訴訟を起こす必要がありますが、訴訟の結果は「証拠」で決まります。

仮に相手が、「知らない。」「商品を受け取っていない」と裁判所で述べた場合、手元に何も証拠がなければ、訴訟で負けてしまいます。

また、同じ証拠でも、契約書や注文書がきちんとある場合と、そうでない場合では、金額の立証等、訴訟における労力は大きく変わることになります。

民事訴訟の場面では、「真実ではなく証拠が全て」というところがあるのです。

よって、まずは、取引事実を証明するに足るものが手元にあるか否かを、確認する必要があります。

→ 証拠となる資料がある場合

この場合は、万一訴訟になっても、有利に進められる可能性が高いので、2.の相手の支払い意思、3.の相手の財産を検討することになります。

→ 証拠となる資料がない場合

この場合、まずは証拠資料を何らかの形で残す必要があります。

相手に、いきなり強硬姿勢をとるのではなく、まずは、合意書等を交わせるように話を進めたいものです。この際、可能であれば保証人や担保の提供を依頼します。

さらに、合意内容を公証役場にて公正証書にしておくことができれば、後日の証拠としてかなり大きな力を取得することになります。

2.相手に「支払い意思」があるか

次に、相手の状況として、話し合いの余地があるか否かです。

→ 相手に支払い意思があり、話し合いの余地がある場合

相手の状況により、支払期日を決めたり、分割払いを認めたりすることが考えられます。また、相手に担保や保証人の提供も検討したもらいたいところです。

合意が整えば合意内容を文書に記します。文書作成の際には、「解除条項」や「期限の利益喪失条項」を記載しておき、相手の信用状況によっては、即時に全額請求ができる内容にしておくことが重要なポイントとなります。

さらに、可能であれば、そのような合意内容を公証役場で公正証書に残しておくと、非常に有利になります。

公正証書を作成しておけば、確実な証拠となるだけでなく、後日、訴訟を提起し判決等を得ることなく、相手の財産に強制執行することができます。

→ 相手の支払い意思が既になくなっていて、話し合いの余地が無い場合

この場合は、やむなく、法的手続を行う必要があります。

まずは、内容証明郵便による請求を行う(※場合によってはあらかじめの請求をすべきでないケースもあります。)等して、支払請求を行った事実及び支払い遅延の事実を明確にするとともに、相手にプレッシャーを与えます。

それでも支払いがない場合、裁判所を利用することになります。

(※請求により財産が隠匿されたり、請求が全く功を奏しないと予想される場合は、即時に仮差押や本訴提起等の法的手続を選択すべき場合もあります。)

3.相手に「財産」があるか

→ 財産がある場合

交渉の段階で、まずはその財産を担保に入れてもらうことができないかどうか打診します。

交渉の余地がない場合、早めに法的手続きを行います。(相手の信用状況が悪化しており、財産が限られるような場合、迅速に、保全(仮差押)の手続きを検討する必要があります。)

→ 財産がない場合

この場合、残念ながら、訴訟等の法的手続きを行っても、差し押さえるものがないため、回収は極めて困難であり、法的手続を行なっても期待する効果は得られない可能性が高いです。

相手に今後の情報提供を求めるとともに、現実的に可能な分割弁済、他に保証人を依頼する等、少しでも支払ってもらえる様、任意で話をすることも検討すべきです。

4.「消滅時効」は大丈夫か

債権には、消滅時効があります。債権の種類にもよりますが、例えば売掛金なら2年です。

もし、時効期間満了が目前に迫っていれば、直ぐに内容証明郵便で請求する等、何らかの対応を行う必要があります。

また、時効は、単に請求しただけでは、完全には止まりません。

たとえ、内容証明郵便にて請求したとしても、とりあえず6ヶ月期間を延ばすことができるだけです。

完全に時効を止めるには、相手の承諾を得るか、訴訟等、法的手続きを行う必要があります。

以上、未収金が発生した場合の基本的な対応を類型化してみました。売掛金の管理回収にとって一番重要なことは、相手の状況(経営・財産・心理等)の把握と早め早めの対応です。

その時々の判断と行動が求められる場面も多いかと思います。だからこそ、日頃の対応をある程度定型化しておき、合理的、継続的に取り組むようにしていきたいものです。

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石井 満

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