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自己株式取得の方法による株式買取とは

その他

2011.08.02

主から自己の株式を買い取ってほしい旨の申し出があった場合、基本的に会社にはこれに応じる義務はありません。しかし、会社によっては、株式買取に応じて株主関係を整理するよい機会となるかもしれません。

会社が買取に応じる場合、代表取締役や他の役員などの個人で買い取ることもありますが、会社で買い取る選択も考えられます。会社で株式を買い取ることは、自己株式取得に当たりますが、この自己株式取得には法的にどのような規制があるのでしょうか。

代表取締役や他の役員などの個人で買い取る場合、売主である株主と買主との間で売買価額などの条件を検討し、株式の売買契約を行います。一方、会社で買い取る場合は、自己株式の取得となり、株主を平等に取り扱う法律上の義務から自由に売買ができず一定の規制がなされています。

この一定の規制とは、買取について株主総会の決議が必要であること、買取資金には財源規制があること、あと、売主たる株主を除く他の株主から売主追加請求を受けた場合にこれに応じる必要があること、です。

まず、自己株式の取得には、買取対価と買取株式数の枠(上限)について、株主総会の特別決議(議決権を有する株主の3分の2以上の賛成多数で可決)による承認が必要です。会社が自己株式を取得することについて株主総会が必要とされている理由は、自己株式の取得において売主たる株主に対価を支払うことが剰余金の分配にあたるからです。

会社の剰余金は、株主に分配され、還元されます。いわゆる「配当」も剰余金の分配にあたります。株主に配当されるべき剰余金から対価を支払うのですから、会社はその判断で勝手に行えず、対価の支払について株主の了解が必要となります。

次に、財源規制ですが、そもそも配当は制限なく行えるわけではありません。配当には、財源が必要です。自己株式の取得もこの財源の範囲内で行う必要があります。この財源は、分配可能額といい、純資産額から資本金、準備金を除いた残額がこれにあたります。

分配可能額の範囲を超えた自己株式の取得については、取締役が会社に対してこれを補う責任を負うこととなりますので、取得の時点でその財源の存在には注意が必要です。

最後に、売主追加請求ですが、会社法は、自己株式を取得する際、売主となる株主以外の株主に、自己の株式も買い取ってもらうよう会社に請求する権利を認めています。

これは、すべての株主に、株式の換金の機会を平等に与えるためです。他の株主から売主追加請求があった場合、請求にかかる株主も売主として扱う必要があります。しかし、売主追加請求をした株主からも買取るとなると、株主総会で承認を受けた取得予定株式数の上限を超えてしまう場合も想定されます。

このような場合には、最初に買い取りを希望していた株主の買取株数と、売主追加請求によって追加した株主の買取株数を合計して、それぞれの買取希望株式数の按分で取得することとなります。この結果、意中の株主から確実に株式を買い取ることができなくなります。

この事態を想定して買取枠を多めに設定することもひとつの策ですが、財源を考慮すると買取枠も限界があります。

上記のように、売主追加請求の関係で、特定の株主からは自由に行えない自己株式取得ですが、例外として、売主追加請求を排除できる場合が二つあります。

まず一つ目は、定款に売主追加請求を排除する規定を設けることです。ただし、規定を加える定款変更には、総株主の同意が必要ですので、すべての会社で可能とはいえません。

次に二つ目は、すべての株式の譲渡を制限している会社(非公開会社)において、相続人等から自己株式を取得する場合です。売主である株主が、相続後一度も株主総会で相続株式について議決権を行使していなければ、当該株主から自己株式を取得する際には売主追加請求が排除されます。

よって、非公開会社においては、相続人から会社が株式を買取る場合には、確実に株式を取得できるチャンスといえます。ただし、当該売主である株主が、相続後の株主総会で議決権行使をした後は、他の株主に売主追加請求の権利を認める必要がありますので、ご注意ください。

自己株式取得の際には、上記のような規制があり、枠の設定、売主希望株主の追加請求権の有無など想定して検討を行う必要があります。また、買取価額の上限について株主総会の承認を得ることによって、買取条件が他の株主に知られてしまうので、これについても注意が必要です。

とはいっても、取得後も自社の株式を継続して保有することができますし、買取資金の都合で、個人による株式買取ができないような場合には利用が考えられます。株式買取の際は、選択肢としてご一考下さい。

(吉田 有希)

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