長い?短い?相続放棄の熟慮期間「3カ月」
相続
|更新日:2022.11.30
投稿日:2013.03.11
「お父さん、借金たくさん残したまま死んじゃったけど・・・私たちが払わないといけないのかな?貯金はいくらあったのかな?」
インターネットで調べれば、すぐに「相続放棄」「裁判所」「弁護士」「司法書士」などのキーワードが見つかります。こういった専門家はその道のプロですから、依頼をすれば手続を確実に進めてくれることに間違いはありません。
しかし、そもそもこの相続放棄にはタイムリミットがあり、このタイムリミットを過ぎれば、いくら専門家でも手のつけようがありません。
今回は、相続放棄の際にご注意いただきたい「相続放棄の熟慮期間」について、そしてこの期間は「思いのほか短い」ということをお伝えいたします。
まず、「相続放棄」とは?そして「熟慮期間」とは何でしょう?
「相続放棄」とは読んで字のごとく、相続する立場、つまりプラスの財産(例えば預貯金、株式など)とマイナスの財産(例えば銀行、消費者金融からの借入など)の双方の全てを受け継ぐ立場を放棄する(捨ててしまう)ことです。
具体的には家庭裁判所に相続放棄申述書という書類を提出することで手続自体は終了します。この相続放棄をするかどうかを熟考する、よく考えるための期間、これが相続放棄の熟慮期間です。
この熟慮期間は法律で自分のために相続があったこと知った日から「3カ月」と決められているのですが、この期間についてはさまざまな感覚があるかもしれません。
「平日は仕事で忙しいし、休みの日に手続することを考えたら思ったより短いんじゃないかな?」
「よく考えるための時間だったら、もっと時間をくれればいいのに・・・。」
たしかにその通りなのですが、例えば借金を例に取れば、借りる側の立場もあれば、貸した側の立場もあります。お金を貸した側からすれば、借主の相続人が早く借金を返すのか返さないのかを決めてもらわなければ、その後の目処が立ちません。
また、こんな意見もあることでしょう。
「3カ月だったら、結構余裕があるんじゃない?」
「そもそも何をしなくちゃいけないのか分からないから、短いか長いかなんてわかんないよ。」
では、相続放棄の熟慮期間内に何をしなければいけないのでしょうか?また、なぜ上記でこの期間が「思ったより短い」とお伝えしたのでしょうか?
さきほどもお伝えしたように相続放棄の熟慮期間とは、相続放棄をするかどうかを決めるための時間です。
相続放棄の制度は、亡くなった方にはかなりの借金がある、その借金を残された相続人が返さないで済むようにしたい、こういった場合に用いられる事がほとんどです。
ということは、借入のマイナスと預貯金などのプラスを秤にかけてみて、マイナスがプラスより大きければ相続放棄をするべきですし、逆の場合であれば、相続放棄はしないほうがよいということになります。
親族がお亡くなりになった場合、すぐに遺産分けということになればいいのですが、お通夜やお葬式、その他必要な手続もあり、なかなかそうは行きません。
また、財産・資産が多岐にわたる場合、ご家族には内緒で借金をされている場合など、その概要を把握するだけでもかなりの時間が必要な場合があります。
また、近年は法定利息を超えて貸し出しを行っていた金融機関に対して、超過分の利息を金融機関に返還請求する事ができる、いわゆる「過払い金の請求」ができる可能性もあります。つまり、プラス財産が新たに見つかる可能性もあるわけです。
この場合、金融機関に対して亡くなった方の取引履歴、つまり、今まで、いつ、いくら借入をして、どれだけ返済しているのか、返済していないのか、その履歴を開示するように請求するのですが、この請求をして金融機関からの回答を得るまでにおおよそ1カ月程度の時間がかかります。
こういった事情を考えていくと、3カ月という期間は決して短くありません。
相続放棄の手続きは、シンプルに言えば書類を家庭裁判所に提出するだけでよいのですが、相続放棄をするか否か、その判断材料の収集や整理に思った以上の時間がかかる場合があります。
3カ月の考慮期間の延長の申立てという方法もあるのですが、常にその申立が認められるわけでもなく、一定の要件をクリアしなくてはいけません。
親族がお亡くなりになって、相続放棄をするメリットがあると感じる場合、また、その判断が難しいと思われる場合、少しでも早く専門家にご相談されることをお勧めいたします。
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