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司法書士法人 おおさか法務事務所

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高次脳機能障害と成年後見制度

成年後見

2012.12.17

成年後見制度を利用されるご本人は、加齢による認知症の高齢者の方が大半を占めています。しかし、生まれつき知的障害をお持ちの方や、後発的な病気や事故を原因として、 成年後見制度の利用が必要な方も存在してます。

例えば、交通事故により脳に損傷を受け、高次脳機能障害の認定を受けた方などが後者にあたるでしょう。脳の機能については、知覚機能や運動機能をつかさどる一次機能と、一次機能を統合してより複雑な思考判断を行う高次機能の2つの機能があります。そのうちの高次機能についての、脳損傷による認知機能の障害の総称が高次脳機能障害と呼ばれています。具体的な症状としてはさまざまで、新しい物事が覚えられない、道を忘れてしまう、人格が変化してしまうなどの症例があります。

ここで注意が必要なのは、脳損傷は外傷に限られないという点です。脳梗塞や脳出血などの血管障害、感染症などの原因によっても、高次脳機能障害となる可能性があります。こうした場合、本人の様子には外傷がないため、脳に機能障害を持っているということが他者から分かりにくく、社会的な支援を受けにくいといわれています。しかしながら現実としては、医療による支援、交通事故加害者による損害賠償としての支援、労働者への補償としての支援、行政による福祉サービスの支援など、様々な社会支援が必要です。

成年後見制度は、高次脳機能障害者にとって重要な支援方法であるといえます。ことに、交通事故や労災事故による損害賠償金、補償金、保険金として多額の金銭が一時金ないし年金として高次脳機能障害者に支給されることも多く、後見人の財産管理の役割への期待は大きいといえるでしょう。賠償金等は、高次脳機能障害者が事故後の長い人生を全うするために必要な生活資金ですので、受け取った金銭を適切に管理することが重要です。

また、交通事故などにより、若年で障害を持つことになる方もいます。多くの場合は、親族の支援を中心として若年障害者の生活は成り立っていますが、その親族が病気や死亡により援助をできなくなった、いわゆる「親なき後問題」も検討する必要があります。成年後見人には、財産管理のみならず、身上看護も担う役割が大きいといえます。

このような背景から、高次脳機能障害者が成年後見制度の利用がしやすくなるためには、以下のような改善が必要になってくると考えます。

1.訴訟における成年後見人の必須化

高次脳機能障害者が交通事故により損害賠償請求訴訟を提起する場合、訴訟を行う能力がない場合があります。そのような場合は、成年後見制度を利用のうえ、後見人による訴訟遂行が必要となります。しかし、訴訟内容を理解できないまま、形式的に訴訟の原告となり、訴訟が続けられていることも珍しくありません。高次脳機能障害者が訴訟を行うには、成年後見人の選任を必須とする運用が必要であると考えます。

2.成年後見人の定期的な更新制度の導入

高次脳機能障害の特性として、症状固定までに長期間を要する場合もあるとともに、次第に機能が回復することもあることが指摘されています。時間的な経過に応じた支援が必要で、後見制度の類型の変更(例えば、症状が良くなれば、「後見」から「保佐」に変更する)、審判の取り消しなど現行の後見制度を柔軟に運用することが必要と考えます。

 「後見は一度使うと一生」という意識が、支援を受ける本人、支援する家族、法律専門家、家庭裁判所など皆にあるのが事実です。しかし、高次脳機能障害者の成年後見については、定期的な年数を設けて、医師の診断書や家庭裁判所の調査に基づき、本人に必要な後見類型(後見・保佐・補助)の認定、審判の取り消しなどを行うべきです。そうすれば、制度利用の促進につながるのではないでしょうか。

3.本人のための賠償金の支払方法の検討

交通事故による高額な賠償金は、一時金として受領することがほとんどです。しかし、一時金として多額の金銭を受取ると、悪質商法による消費者被害や親族等による不動産や金融商品の購入、消費などの問題が生じやすくなります。

成年後見制度を利用して、成年後見人による高額の賠償金の管理は必要ですが、後見人にとっても高額の金銭の管理は容易ではありません。

そこで、介護費用、事故がなく本来であれば得られたであろう収益などの将来にわたる損害の賠償金については、定期金賠償方式の検討が必要と考えます。ただし、加害者側が長期にわたる賠償金の支払いを余儀なくされることから、実際の裁判でも賠償金の定期的な支払いは避けられる傾向にあります。

しかし、あくまでも本人の支援が充実されることが重要であり、定期金による賠償補償は必要です。現状として、定期金の実現が困難であれば、信託制度の利用も有用となるでしょう。

私自身も、司法書士として成年後見業務に携わるようになって、高次脳機能障害に苦しむ方の存在を知りました。社会的な支援が必要であるにも関わらず、まだまだ苦しむ方の認識がされていない現状を変えていく必要があると感じています。

坂西 涼

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