「契約書」って何で必要なの?(契約書の重要性について)
その他
|更新日:2022.12.11
投稿日:2012.04.16
1.契約書ってそもそも何なの?
一部例外を除き、契約は当事者が合意するだけで成立します。例え、口頭だけでも、メールやFAXのやりとりでも、そこにお互いの合意があったのならば、契約は成立しています。契約が成立すると、その合意内容に従った権利と義務をお互いが持つことになります。
たとえば、不動産の売買契約ならば、
「Aの不動産を○○円で売ります!」
「その不動産を○○円で買います!」
と合意できれば、契約は成立したことになります。契約が成立すると、売主は、買主に不動産を引き渡して登記の変更をしなければなりません。
買主は、売主にお金を支払わなければなりません。それぞれが合意内容に従った権利と義務を取得することになるのです。
しかしながら、合意が口頭だけであった場合、もし、相手が「そんな合意なんかした覚えはない」と言い出した場合、どうなるでしょう。
たとえ実際に合意があったとしても、合意を証明する手段がありません。メールやFAXのやりとりがあったとしても、何の合意があったのか、明確にしにくい場合もあるでしょう。
また、売買の合意自体はそれらで明確にできたとしても、
- 引渡しや代金の支払をいつまでにするのか
- 引渡しまで不動産が壊れたらどうするか
- それぞれの義務を怠ったらどうなるのか
等について取り決めをしておかないと、スムーズに不動産の売買取引が進まなくなる恐れがあります。
契約書は、このような合意内容を明確に証拠として残すために作成されるものです。契約書の意義、それは「当事者の合意の有無・内容の証拠」なのです。
2.契約書って何で必要なの?
さらに、契約書を作成することは、「当事者の合意の有無・内容の証拠」のためだけではありません。「契約書」って何のために作成するのでしょう?
その①
後々の争い・トラブルを防止する(言った言わないを防ぐ)ためです。後々になって、「言った、言わない」の争いが起こらないように、またお互いの誤解が生じないように、合意内容をきちんと契約書に書いておくことで、将来の紛争・トラブルを防ぎます。
その②
争い・トラブルで訴訟になった時、重要な証拠になるということです。訴訟の行方は証拠で決まります。
民事訴訟では、基本的に、自分に有利な主張を認めてもらうには、証拠などで証明しなければなりません。証明できないと、いくらそれが真実であっても裁判では負けてしまうのです。
契約書は、万一の争いになったときの重要な証拠になります。明確で的確に合意内容を記した契約書に、きちんと署名捺印がなされていれば、契約書だけで、立証が十分になる可能性が高くなります。
その③
契約内容を、契約書という文書にしていく過程で、お互いの合意内容が明確になっていく、また、内容が充実していくことになります。
口頭だけでは、細かい点までは明確に決められていなかったり、行き届いていない場合が多いものです。文書作成の過程で、お互いに気付いていき、内容が精査されていくことで、充実した契約内容となっていきます。
さらに、契約書を作成する過程において、当事者の契約への意識が高まり、履行がきちんとなされ、業務が円滑に進むことにつながります。
3.契約書の重要性(「代理店契約」を例に)
たとえば、ある会社(A会社)が新たに新商品を開発しました。この会社は元々営業力に難があるため、独自の販売網を有する別の会社(B会社)に新商品の販売を託したいと考えました。
そこで、A会社の新商品についての「販売代理店」として、B会社に新商品を販売してもらうためにB会社との間で「代理店契約」を締結したいと考えました。
ところで、「代理店契約」と一般的に良く耳にするこの契約ですが、実はその内容によって、それぞれの立場や責任、契約の効果が、法律上大きく変わってくることになります。
一口に「販売代理」=「代わりに販売する」と言っても、B会社が、
- A会社から商品を継続的に仕入れて、B会社の判断と計算の下で販売していくのか
- A会社の判断と計算の下で、A会社のためにB会社の名で販売していくのか
- A会社の商品をA会社の代理人としてA会社のために販売していくのか
- A会社と顧客との媒介(紹介)のみ行うのか
によって、大きく法的な立場や責任が変わってくることになります。例えば、在庫リスクや価格下落リスク、また顧客から修理請求や返品請求のリスクは、1.の場合はB会社が責任を負い、2.3.4.の場合はA社が負うことになります。
また、B社は、1.の場合は転売益を、2.3.4.の場合は手数料を得ることになります。さらに2.と3.では、契約当事者が誰なのか、法律上競業避止義務があるか否かに違いがあります。1.?4.それぞれの形態により、B社の販売活動における法的な立場は大きく違うこととなります。
法的には、
- 売買(継続的)契約
- 問屋契約
- 代理契約
- 媒介契約
と分類されています。
紛らわしいことに、これら1.?4.のどの場合においても一般的な用語として「代理店契約」という名称が使用されていることが多いのです。
当事者間の合意はおおまかに一致しているようでも、そうでない場合が多々あります。当事者がそれに気付いていない場合もあるかもしれません。
これらの合意内容について「契約書」を作成することで、その作成過程において、当事者が期待する取引内容、将来起こり得る状況を踏まえて、合意内容を確認、精査、進化させていき、そして契約成立後の確実な履行に繋げていくことが非常に大切です。
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