オーナーさん必見!賃貸借契約するとき知っておきたい注意点
不動産
|更新日:2022.11.28
投稿日:2013.04.15
新しい学期を迎えると、新生活をスタートする人が増えます。なかには引っ越しをともなうケースも少なくないでしょう。
もともと賃貸物件の場合、解約時には「敷金返還」と「原状回復義務」が生じます。
しかし、入居者の使用状況が悪く、退去時部屋が大変な状況だった場合、その修繕費はオーナーと店子のどちらの負担となり、実際にお金を払うのはどちらになるのでしょうか。
本コラムでは、そのリスクと対策について記述していきたいと思います。
最近は入居者の回転を早くするため、敷金をとらない契約も増加しており、オーナーの原状回復についてのリスクは高くなっているといえるでしょう。
もしオーナーの立場にいらっしゃるとしたら、以下に記載する対策がとれているかどうか、現在の賃貸借契約を締結している店子との現況をぜひ確認してみてください。
賃貸借契約が終了する時には、借り始めた状態で持ち主に返しなさいという「原状回復義務」が法律で定められています。
とはいえ、一定の期間で人が居住することで、自然と家も傷んできます。
それは「通常の生活において発生する損耗」といわれ、借り手側の店子が修繕する必要はなく、オーナー側が修繕費用を負担するべきとされています。
どこまでが通常の使用で生じる損耗なのかは、国交省のガイドラインにも考え方や事例が示されています。
しかしながら、ガイドラインで細かく定められていても、原状回復義務をめぐり店子とトラブルになるのが現実です。
そもそも、通常の使い方を全く守っていなかった入居者ですから、ガイドラインを提示して「国が指針を示してますので払って下さい」と持ちかけても、すんなりを修繕分払ってもらえる可能性は決して高いとはいえないでしょう。
たとえば、明らかに通常使用の限度を超えていて、店子の落ち度がある状況を想定してみましょう。
過去に実際にあったケースでは、部屋が汚物まみれであるとか、ペット禁止物件にもかかわらずペットを飼育していた場合などがありました。
こういった状況で、店子に対して根拠を示しても、話合い(内容証明による通知等)だけでは店子はお金を払わないことも少なくありません。
さらに、敷金を預かっていない場合や、敷金だけでは現状回復費用に足りない場合は、新しい入居者を入れるために必然的にいったんオーナーの支出で修繕することとなります。
<そうなると、出て行った店子から原状回復費を回収するためには、訴訟を提訴して判決を取り、その後に差押等を行って、退去した店子から費用を回収しなければなりません。
しかも実務上では、時間と費用をかけて訴訟を行って判決が出たとしても、相手方から実際に回収することは難しく、ほとんど回収できずに泣き寝入り・・・などというケースも少なくありません。
以上のようなことから、原状回復に関して、貸し手であるオーナー側のリスクは、下記の2つだと考えられます。
(1)損耗の度合い、価格の証明に関するリスク
→ 訴訟においては、オーナー側から部屋の損耗の状態を証明する必要があります。
(2)店子からの費用回収実現性のリスク
→ 訴訟に勝ったとしても、実際に回収ができるかどうかはまた別の問題となります。
この2点への対応策として、下記1.から7.までの対策を取っていただく必要があると考えられます。
- 空室時の部屋の写真を残しておく
さらに、事前に業者に入ってもらい内装工事を行っているときは、その請求書及び領収書、工事の内訳書を保管しておきます。 - 内装工事にかかる材料等の単価を店子とオーナーの双方で確認しておく
上述の国交省ガイドライン27ページに参考のフォームが提示されています。 - 入居時の部屋の設備、状態についての記録をのこす
どのような状態であったのか、店子自身に確認してもらいます。ガイドライン4,5ページに参考のフォームが提示されています。 - 退去時の部屋の写真を残しておく
部屋の図面を用意して、どの箇所にどのような傷が残っているのか記録しておきます。 - 退去時内装工事の記録を残しておく
内装工事の見積書・請求書について、施工業者から工事内容・材料の単価等を細部にわたり詳細に説明を受け、その記録を残しておきます。 - 入居者の情報を記録しておく
勤務先の名称、住所、連絡先、勤務年数、給与振込口座等の情報を記録に残しておきます。 - 契約時に連帯保証人を立てる
また、保証人に関してもさきほどの6.の情報の聞きとりを行っておきます。
上記1.~5.については、裁判上オーナー側に有利になる項目についての資料となるものです。6.7.については、裁判終了後、判決により、実際に店子に工事代金を支払ってもらうときに有効となるものです。
通常、オーナーさんは賃貸仲介業者や管理会社などに物件管理を任せきりにされていることも多いかと思いますが、少なくとも上記1.から4.について記録を残しておかなければ、立て替えた修繕費分を店子から全く回収できないという事態にもなりかねません。
裁判では、改修工事にかかった費用が適正であるかどうかを裁判官が問題としますので、2.のような書面を取り交わしておくと、事前に店子も承諾していたという記録となり、裁判が有利になる可能性もあるように思います。
最近は賃貸契約書とは別に、入居者名簿という名目等で上記6.の内容を聴取されているケースもあるでしょう。
賃貸期間が長くなると、勤務先など変わっていることがあるため、契約更新の際に新しく名簿を更新するなど、できるだけ入居者の最新の状況を把握しておきたいところです。
また、可能であれば本人名義の金融機関の口座を把握しておきたいため、家賃の支払につき銀行口座自動引き落としのみ対応することにして、相手方の口座情報を入手するとか、敷金の返還口座という名目であらかじめ店子名義の口座を届け出てもらう等の方法をとることが望ましいのではないでしょうか。
新しい店子と賃貸借契約を締結する場合に、上記のような点に気をつけていただくことは、オーナーのリスク軽減のために有益となります。
仲介業者や管理会社側の立場にとっても、上記のような点に注意して手続きを進めることが、オーナーの役に立つサービスとなることでしょう。
また、当然の前提となる問題かも知れませんが、店子である入居者(借り主)の属性の調査を、より一層しっかりしていただく必要もあるのではないでしょうか。
本記事に関する連絡先
フリーダイヤル:0120-744-743
メールでのご相談はこちら >>