一般法人や公益法人の「新制度のルール」での運営ポイントは”定款の利用”
企業法務
|更新日:2022.12.1
投稿日:2013.02.12
公益法人(社団法人や財団法人)について、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の施行に伴い、新制度が施行されて既に4年が経過しました。
従来の民法に基づいて設立された既存の社団法人や財団法人は、平成25年12月25日までに、一般法人・公益法人に移行するための移行認可・移行認定申請を行わないと、法人を解散しなければなりません。その期限は、年内に迫っています。
限られた時間の中で、一般法人又は公益法人への移行の選択、新しい会計基準へ移行、移行認可や認定申請の準備など優先すべき準備が多く、移行後の「新制度のルール」に合わせた運営への理解や、関係者への周知まで、なかなか準備されていない法人も少なくありません。
とはいえ、無事期限内に移行認可、認定を受けて、一般法人や公益法人の移行による設立登記をされた法人は、移行後は、「新制度のルール」に合わせた運営が求められます。
それでは、「新制度のルール」では、これまでとどのように変わるのでしょうか。
これまでのルールは、「民法」において定められていましたが、そのルールは非常に最低限なものに留まり、運営に必要なルールはそれぞれの法人の主務官庁の監督のもと主務官庁の裁量に委ねられていました。そのため、法人ごとにルールが様々で、統一されていませんでした。
しかし、「新制度のルール」は、法律によって詳細に定められ、これまで法人ごとで異なっていたルールが一定のレベルで統一されるとともに、今までの暗黙のルールのようなものが明確化されました。
例えば、これまでは、「理事会」が法律上根拠を持たないものでしたが、これからは、法律上の機関として定められ、3ヶ月に1回、会の開催が要求されたり、理事の会への出席が委任状によることができなくなるなど、運営面で制約が増えます。
ほかには、理事のうち法人を代表することができる理事が「代表理事」という肩書きの理事と定められ、理事会を置く場合には、この代表理事は理事会で選ぶことが要求されます。
これまでのように総会や評議員会では、代表権を持つ理事を直接選ぶことができません。また、役員の責任もこれまでより重くなり、責任が問われる場面が増え、さらに明確になりました。
法人の運営に関与される方々、特に理事、監事、評議員の方々には、「新制度のルール」を認識いただき、これまでの法人運営との違いについて留意いただくことが重要です。
その周知する一つの方法として、留意すべき「新制度のルール」を、関係者に分かるように「定款」に記載し、書面化しておくという方法があります。
記載する内容は、年間を通した法人運営の流れや、備え置くべき書類、その他役員や機関運営に関するルールです。
例えば、予算や決算の手続きは、誰が何をいつまでに作成し、どこの決議を経て、どの書類を何年間保存するのか、また、決議を経た書面のうち何をどこに届け出る必要があるのか、などです。
移行の準備で、移行認可や移行認定の審査機関によっては、移行後の定款内容を、なるべく内閣府のモデル定款と揃えるよう指導があります。
この内閣府のモデル定款は、一般的な内容であるため、法律に記載されている「新制度のルール」は、あえて定款に記載をしておらず詳細なものは省略されています。
たしかに、定款に記載すると、その規定を変更する際に、その都度、定款変更の手続きが必要となり、面倒な場合もあります。
しかし、定款は、法人に法律上も常備が義務付けられた書類であり、かつ、法人でも重要な書類として認識されているため、保管の面や変更の検討過程において関係者の周知に適しています。
また、定款変更にはこれまで監督官庁の認可が必要でしたが、一部の変更を除き不要となり、移行後は総会や評議員会などの内部機関で承認を得ることで定款を変更できますので、移行後は面倒な手続きも少し簡単になります。
もっとも、やはり定款ではなく理事会で変えることのできる方法で書面化したい、という法人では、定款とは別に「定款の細則」という書面に記載しておくのも方法です。
細則は、定款と違って変更するために必ずしも総会や評議員会の決議を要するわけではなく、理事会の決議で変更することも可能ですので、法人の規模に応じてご検討下さい。
法人の運営をご担当される方につきましては、どのように「新制度のルール」を関係者に認知させるのか、悩ましいですが、このコラムでは「認知させるために効果的な書面化」をその方法としてご紹介させていただきました。
最後に、書面化される場合は、せっかく書面化した「ルール」が「新制度のルール」そのものに違反していては無効ですので、「新制度のルール」に沿っているかどうかは事前に専門家にご相談下さい。
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