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事業承継における後継者問題

事業承継

|更新日:2022.10.26

投稿日:2018.10.31

後継者問題の実情

会社法が平成18年に施行され、10年以上が経過いたしました。会社法施行前に設立された企業の中には、事業承継なども考え始めている企業もあるのではないでしょうか。

事業承継時における様々な問題点の1つであり、大きな問題点であるものとして「後継者」の問題があります。財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レヴュー」平成29年第3号(通巻第131号)にもありますように、事業承継を考えている企業の中で、「後継者候補が複数おり、誰を選ぶかまだ決めかねている」「後継者にしたい人はいるが、本人がまだ若い」「現在、後継者を探している」「後継者にしたい人はいるが、本人が承諾していない」といった「後継者は決まっていない」企業は、事業承継を希望している企業の約63%になります。

また、総務省統計局「統計データ」「日本の統計」「本書の内容」「第2章人口・世帯」「2ー1人口の推移と将来人口」(http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.html)によると、12年後の生産年齢人口(15〜64歳)は、現在より約700万人ほど減少すると予想されてます。

つまり、現在ですら、約63%の会社が後継者を確定できていないにもかかわらず、今後はさらに後継者に適した年齢の人口が減っていきそうなのです。これからは、より一層後継者の問題が困難を極めそうです。

後継者の負担を減らすための方策の一つとしての組織の見直し

事業承継の場面において、後継者にとって引き継ぐ会社の役員構成等の組織体制は非常に重要な意味を持ちます。

事業承継を行うにあたっては、一度組織の見直しをしておくことも重要な事項です。会社法施行前の株式会社は、取締役会が必置の機関でした。取締役会のある会社では、取締役が3名以上、監査役が1名以上が必要とされました。

したがって、この要件を満たすために親族や、従業員の方等を名目上の役員として置かれているような会社も多数あります。名目上の役員であったとしても法律上の権限は有しますし、取締役会に参加してもらい押印等をもらう必要があります。

後継者にとってこれが大きな負担となります。(なお、取締役会を開催していないのに開催したことにすること、役員の印鑑を勝手に押印することなどは後日大きな問題となる場合がございます。)

しかし、現在の会社法では取締役会を廃止することが認められるようになり、取締役会を廃止すれば、取締役1名以上を置けば足りることになるため、無理に取締役3名以上、監査役1名以上を置くが必要がなくなりました。

取締役会を廃止する際の検討事項

では、取締役会を廃止することが自社にとって最善の策なのでしょうか。組織の見直しの際に検討すべき事項の1つとして、会社の決定機関を役員に主を置くのか、株主に主を置くのかという問題があります。

取締役会がある会社では、株主総会は、会社法に規定のある事項か、定款で定めている事項しか決議をすることができないとされていますが、取締役会のない会社では、そういった規定はありません。

つまり、取締役会のある会社のほうが株主総会の決議事項は限定的であり株主の関与は少なくなり、取締役会のない会社のほうが株主総会の決議事項が増えることになり株主の関与が増えることになります。

例えば、取締役が会社と不動産の売買を行う場合、会社に対して貸付を行う場合において取締役会のある会社においては取締役会の承認が必要となり、取締役会のない会社においては株主総会の承認が必要となります。

仲の悪い株主がいる場合や外部株主がいる場合に取締役会を廃止してしまうと、仲の悪い株主等に対して諮らなければいけないことが増えてしまうことになります。

まとめ

取締役を廃止するかは、組織体制を決定するにあたっての一部の事項にすぎません。後継者にとっては自分が社長として経営を行っていくなかで自分にどれだけ権限があるか、また、誰に物事を諮らないといけないかは重要な意味を持ちます。

一方で、現経営者にとっては後継者が事業承継後に暴走しないかは非常に心配な事項です。組織体制のバランスが崩れてしまうと会社の経営が成りたたなくなってしまいます。

事業承継の場面においては、株式の承継にどうしてもスポットがあたりますが、どのような組織体制を作るかも非常に重要なものとなりますので、現在の体制により将来生じうるリスクや対応方法について、一度専門家に意見を聞くことも大事な準備のひとつです。

当事務所には会社実務の専門部署がございますので、お気軽にお問合わせください。

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西川 宜輝

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