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分割払いの借用書を作る際に必ず押さえておきたいポイント

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|更新日:2022.11.7

投稿日:2011.08.09

個人間でのお金の貸し借りは信頼関係にもとづき行なうケースが多く、金額が多額になった場合でも、商人間で作成される金銭消費貸借契約書のような詳細な契約を交わさずに、簡単な借用書が用いられることがあります。

万一のために作られる借用書ですが、ポイントを押さえておかないと、十分に機能しないことがありますので注意が必要です。

知人に分割返済の約束でお金を貸したケースを考えてみます。

最初の返済期限を過ぎても返済がないため借主に催促したところ、借りた事実は認めるものの、返済については待って欲しいとの一点ばりで要領を得ないものでした。

貸主は不安になり、貸付の際に取っていた下記の借用書をもとに、貸した金額全額について回収を図ろうとしました。

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       借 用 書

貸主 ○○ 様

  1. 平成23年1月1日、借主は貸主より
  2. 金100万円を確かに借り受けました。
  3. 利息は年5%とします。
  4. 借主は次の期限までに貸主に返済します。

平成23年6月末日までに金30万円と同日までの利息

平成23年12月末日までに金30万円と同日までの利息

平成24年6月末日までに金40万円と同日までの利息

平成23年1月1日

            借主 ○○ (実印)

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貸付の事実、当事者の表示、金額、利息、返済日の記載があり、実印まで押印されており、貸付の事実の証拠としては十分なものといえます。しかしながら、直ちに全額の回収を行なうには重要な条項が欠けています。

それは、一般に「期限の利益の喪失条項」(きげんのりえきのそうしつじょうこう)と呼ばれる条項です。

貸主は最初の返済日を過ぎた時点で直ちに全額の回収を行ないたいと考えましたが、その時点で請求できる金額は、30万円とその時点までの利息のみです。残りについては、それぞれ各返済期限まで待たなければ請求できません。

相手方が信用不安に陥っているときには、一刻も早く法的回収を図る必要がありますが、このケースでは、裁判上での全額一括請求ができず、裁判外で期限前に返済してもらうように交渉するほかありません。

このような事態を避けるため、分割払いの際には、借主が一回でも支払いが遅れたときには、直ちに残りの全額についての支払いをしなければならないという「期限の利益の喪失」に関する下記のような条項を設ける必要があります。

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4.借主が第3項の支払いを一回でも遅滞したときは、貸主から通知催告がなくても当然に期限の利益を失い、借主は残りの元利金全額を支払う。

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借主は契約により期限までの返済を猶予してもらうという「期限の利益」を有しています。法律上、借主が破産したときなどには、この期限の利益が失われますが(民法第136条)、分割金の支払いの遅れは当事者に約定がない限り、期限の利益に何ら影響を与えません。

つまり、最初の期限に支払いがされなかったとしても、当事者間に上記の特約がない限り、残りの全額を直ちに請求することができないことになってしまいます。

はじめに述べたように、個人間での金銭の貸し借りは信頼関係にもとづき行なわれることが多く、貸し付けの際に滞納されたときのことまでは中々想定しないものです。

しかしながら、貸し付けた金銭を法的に回収するという債権回収の局面にいたった場合には、当初の貸付時の対応により回収可能性は大きく異なってきます。

この他にも貸付の際に連帯保証人や自宅などを担保にとっておく、勤務先や給与の振込先などの財産の所在を予め届け出てもらうなど、貸し倒れを予防する様々な手段がありますので、このような場合は一度ご相談下さい。

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