医療法人が附帯事業を始める場合に必要な手続き
企業法務
|更新日:2022.12.4
投稿日:2013.01.07
医療法人が本業にプラスして「附帯事業(ふたいじぎょう)」を行うためには、きちんと定められた形式に則って変更を行う必要があります。
仮に手続きを踏まずに行ってしまうと、認可が取り消される可能性も出てくることになりますので、注意が必要です。
医師が個人で運営する診療所とは異なり、「医療法」という法律に基づいて、会社のような形態で診療所や病院を開設することができます。
そのような組織形態を医療法人といい、個人で診療所を運営するときより色々なメリットを受けることができます。
そもそも医療法人という形態が認められるようになったのは、資金の調達が簡単にできるようにという趣旨と、医療機関の経営が永続的になされることを目指したことにありました。
昭和39年、昭和60年など、数回法改正がなされ、より利用しやすい制度を目指した整備が進められています。
具体的には、会計年度に関しても通常の会社と同じように決算期をいつでも定めることができるようになったり、医師の資格を持つものが1人でも医療法人化が認められるようになったり、また、昔は資産の総額の20%が自己資本でなければならなかったのですが、そのような要件が緩くなるような変更が行われています。
病院経営などの母体を医療法人の形にするメリットとしては、個人の家計と医業の経営の分離が図れることや、給与所得控除の活用、役員退職金、生命保険の活用等税務上の恩恵を受けられることが挙げられます。
また、個人で診療所を経営するときには認められなかった「附帯事業」を営むことができ、医療法の改正に伴いこの附帯事業の範囲がだんだんと拡大されてきました。
本来、医療法人は病院、診療所または介護老人保健施設を開設することを目的としています。
病院や診療所は患者に対して治療行為を行うところであり、介護老人保健施設は病院と家庭の中間のようなイメージの場所であり、治療は必要ないが自宅で生活できるレベルにまで回復していない高齢者が、リハビリを行いながら家庭復帰を目指すことを目的とする施設です。
このような業務にプラスして、医療法人であれば「定款」または「寄付行為」という組織の決まりごとの中に定めることで、さらに広い業務が行えます。
具体的には、本来業務に関連するような薬局の経営やマッサージ、あん摩などの施術所、介護保険法に規定されている訪問介護事業、通所リハビリテーションや不動産を利用した有料老人ホームの経営、サービス付き高齢者向け住宅(廃止された高齢者専用賃貸住宅に代わるもの)の運営など多岐にわたり認められています。
しかしながら、本来の業務に加えて附帯事業を行うためには、医療法人の定款又は寄付行為の変更を行い、開始しようとする事業の名称や場所を定款に記載する必要があります。
仮に定款などを変更することなく業務を行ってしまうと、医療法人の設立の認可を取り消される可能性があります。
定款などの変更は、所轄の監督機関において認可を受けることで認められます。認可を受けるために、開始する事業の収益計画や事業開始のために調達する財産を報告したり、新たに始める事業のため金融機関から借り入れを行う場合には返済計画等を作成しなければならないなど、非常に煩雑です。
また、定款等を変更しようとする医療法人は適法に運営されている必要があるため、医療法人であれば必ず行う必要がある、毎年の決算期後に行う資産総額の変更登記、2年に1度行う必要がある理事長の変更登記が適切な形で行われていなければなりません。
超高齢化社会を迎えている日本においては、医療分野だけでなく、介護事業を手掛ける医療法人はますます増加していくと思われます。
介護事業といっても、訪問介護事業など比較的初期投資が少なくて済むものもあれば、サービス付き高齢者向け住宅のように不動産賃貸業に似た大掛かりな投資が必要なものもあります。
業務拡大をご検討されている方は、くれぐれも手続きにご留意いただき、定款の整備及び登記手続きについてはプロである我々司法書士をご活用いただければ幸いに思います。
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