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取得条項付株式を応用した強制的な株式の転換

企業法務

|更新日:2022.12.12

投稿日:2009.06.12

取得条項付株式(強制的な株式の転換における応用)

先に従業員株主における対策で『取得条項付株式』の利用を挙げました。この『取得条項付株式』は、買取の対価を工夫することで、ある時点で強制的に他の株式又は社債に変えるという応用が可能です。

『取得条項付株式』とは、予め定めた時が来ると会社がその株式を持っている株主から強制的に株式を買取ることができるというものであることは「取得条項付株式の導入と手続きの流れ」で紹介しました。

この買取の対価は、金銭ではなく、他の種類の株式や社債とすることができます。これによって、会社側の主導でその株主の持つ株式を強制的に他の種類の株式や社債に変えることが可能となります。

例えば、『取得条項付株式』の買取のタイミングを「相続」と定めたとします。会社が、株主から買取の際に、株主に対して交付する対価を他の株式とした場合と社債とした場合と2通りを例に挙げてご紹介します。

他の種類の株式を対価とする場合

対価として交付する株式を議決権のない株式とします。通常、株主が死亡すると、株式は相続人に相続により引き継がれます。

しかし、株主の死亡によって、会社が強制的にその株式を買取れるように定めておけば株式は相続人に引き継がれません。代わりに、買取の対価が相続人に引き継がれます。

対価を議決権のない株式としておけば、相続人は議決権のある『取得条項付株式』を相続することなく議決権のないという種類の株式を相続することとなります。

これは会社の強制により行いますので、相続人から議決権のない株式を相続することを拒むことはできません。

もちろん、買取を行うかは会社の自由です。これによって、当初の株主の相続人は、原則として会社の株主総会に参加することはなく、会社は、その相続人を除いて通常の株主総会の運営を変わらず行えます。

変わったのは、亡くなった株主が株主総会に出席しなくなったということだけです。予め相続というタイミングを定めておくことで、会社とは関係の薄い株主が会社運営に参加することを避けることができます。

相続人にとっては、議決権のない株主となりますが、会社が配当をする場合、その配当金は他の株式と同様に受け取れます。株主総会に出席したがらない株主にとっては不利益のない結果でしょう。

社債を対価とする場合

社債とは、会社が資金を借り入れるために債権者へ発行する債券(有価証券)です。

株式と同じ有価証券ですが、株式を持っていることで株主となりますが、社債を持っていても単に債権者という立場にとどまります。債権者は、株主総会に出席して会社の決定に関わることはありません。

『取得条項付株式』の買取の対価を社債とした場合、相続人は株式の代わりに社債を相続します。相続人は株主とはならず、会社の債権者となります。

会社は相続人に対して、予め定めた返済期間内に、予め定めた元金と利息を返済することになります。

会社にとっては、利息の負担はありますが、支払う利息は会社の経費となりますし、一度に金銭で買取る場合と違って分割で株式の対価を支払うことが可能です。

相続人にとっても、全額が返済されれば会社に無関係となってしまいますが、会社が配当できる状態か否かに関わらず、決められた利息と元金を期日に受け取れますので場合によっては有利と考えるかもしれません。

また、お金を貸した場合と同じですので、元本と利息は回収できます。

もっとも、会社の財務内容が悪くなって倒産ということになれば全額の回収は保障されません。しかし、会社が倒産した場合の財産の回収の面においては、株主よりも債権者が優先しますので、有利なこともあります。

種類株式導入における留意点

『取得条項付株式』の対価は、定款において、対価は何になるのか、その額はどのように算定されるのかを定めておく必要があります。よって、導入の際に株主総会の決議時点で既に決めておかなければなりません。

なお、買取の時点において、その対価の価額の分だけ会社に配当できる留保金がなければ買取は行えないという制限がありますが、その対価として他の種類の株式とした場合には、この制限はありません。

社債や金銭を対価とする場合には、株主に対して会社が株式を払い戻すことになりますが、一方、他の株式を対価とする場合には、財産の払い戻しはなく、変わらず会社の株主のままであるからです。

このように、対価を何にするのかについても、それぞれのメリットデメリットはありますので、自社に合った内容を検討の上導入いただくことをお勧めします。

会社の規模や状況、株主との関係によって好ましい方法を工夫することで、より有効な対策となるでしょう。

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吉田 有希

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