定期借家契約のメリットとデメリット
不動産
|更新日:2022.12.10
投稿日:2012.05.28
持ち家があるが、転勤でしばらく空き家になるのでその間人に貸して家賃収入を得たい。あるいは、子供が独立して高齢の夫婦だけになり、広い一戸建ては当面は不要なので賃貸して、家賃収入で手ごろなマンションを借りて自分たちはそちらで暮らしたい・・・。
このようなケースの場合、従来の借家契約(建物賃貸借契約)では賃貸するのは事実上難しいのが実情でした。
従来型の借家契約では、契約で定めた期間が終了しても家主の側からは「正当な事由」がない限り契約の更新を拒絶することができません。「正当な事由」も、裁判上はごく限定的にしか認められていません。
実際上、従来型の借家契約は借り手の側からしか終了させることができない、といってもよいでしょう。どうしても明け渡してもらわなければならない場合は、立ち退き料を支払うこととなり、それも拒否して居座られるおそれもあります。
このような問題に対応する新しいタイプの借家契約として平成12年から導入されたのが「定期借家契約」です。
<定期借家契約の意義>
定期借家契約とは、契約で定めた期間が満了したときに更新されることなく終了する借家契約です。
(要件)
定期借家契約と認められるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 家主は、建物の借り手になろうとする者に対し、あらかじめ、契約の更新がなく期間満了により賃貸借が終了する旨の書面を交付して説明すること。
- 一定の契約期間を定めること。
契約期間に制限はありませんが、「家主が転勤で不在の間」のような不確定の期限や条件を定めることはできません。 - 書面によって契約すること。
- 期間1年以上の契約については、期間満了の1年前から6か月前までの間に、家主から借り手に対し期間満了により契約が終了する旨通知すること。
(居住用建物の借り手の中途解約権)
床面積200平方メートル未満の居住用建物の定期借家契約においては、借り手がやむを得ない事情で居住することができなくなった場合は、借り手から家主に対して中途解約を申し入れることができます。この申し入れをすると、1か月後に契約が終了します。
床面積200平方メートル未満の居住用建物以外の場合は、借り手からの中途解約を認めない旨契約で定めることもできます。
(賃料増減額請求の排除の特約)
従来型の借家契約では、一方の当事者が賃料が不相当だと考える場合には、相手方に賃料の増額または減額を請求することができますが、定期借家契約では特約でこれを排除することができます。家主にとっては、収益予測が立てやすくなる利点があります。
(再契約)
定期借家契約は期間満了により終了しますが、双方の合意で再契約をすることは可能です。
<定期借家契約のメリット>
- 家主側のメリット
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- 立ち退き料を支払う必要がなく、居座りのリスクも回避できる。
- 自分が将来利用したり、売却する予定の物件でも安心して貸せる。
- 家賃による将来の収益予測が立てやすい。
- 物件に相続が発生しても、期間が満了すれば必ず契約が終了するので、売却して相続人に分配する等の処理に支障を来さない。
- 借り手側のメリット
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- 敷金、礼金や家賃が低めに設定されていることが多い
- 従来型の契約では賃貸に出てこない広い物件や高級な物件を借りられることがある
<定期借家契約のデメリット>
- 家主側のデメリット
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- 期間が限定されているため、借り手がつきにくい
- 家賃が相場より低めになる
- 借り手側のデメリット
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- 家主が再契約に応じない限り退去しなければならない
- 再契約時に家賃が上昇する可能性がある
どちらかといえば家主にとってメリットの大きい契約ですが、学生の在学中や長期出張中の住まいとして使うなど、条件が合うのであれば借り手にとっても利用価値のある契約ではないでしょうか。
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