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新公益法人制度の留意点

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|更新日:2022.12.5

投稿日:2008.12.01

明治29年以来、手がつけられて来なかった公益法人制度が改革されます。平成20年12月1日をもって「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を始めとする公益法人改革三法が施行されます。

営利法人である株式会社などに関する法体系整備はすでに完了している一方で、非営利法人である公益法人の法体系は未整備であったところ、ようやく一段落を迎えることとなりました。

公益法人はその名のとおり公益を目的とする非営利法人で、その名称中には「社団法人」あるいは「財団法人」という文言が使用されます。

その種類の具体例として、各業界でつくるもの(ex.社団法人大阪公共嘱託登記司法書士協会など)や資格制度を維持運営するもの(ex.財団法人社会福祉振興・試験センターなど)、あるいは国家や地方自治体が保有する不動産等の資産を保有管理するもの等が挙げられ、多様な性質を有し、その機能もかなり多岐にわたっています。

中には、歴史的にその役割を終えたもの、重複した役割をもつもの、国・地方自治体職員の天下りの温床として、あるいは多額の助成金を吸い取る受け皿として存続するものなど、その存在価値に疑問のある法人が数多く存在します。(公益法人2万6千以上あるなか、5000前後がこのような法人ではないかといわれているようです。)

国家財政が疲弊している中で批判の多い公益法人を整理することが今回の制度改革の主目的です。

さて、この制度全体についてここでは詳述しませんが、制度の懸念事項について少し触れておきたいと思います。

1点目は、公益法人に対する一般人の高い信頼を利用して、一般社団法人や一般財団法人を悪用するケースが多発するのではないか、という点です。

従来の公益法人は監督官庁の許可が必要であったため、設立するにはかなりハードルの高い組織体でしたが、逆に行政の厳しい監督により犯罪に利用されることはほぼ皆無でした。

新法施行後においては自由に設立することができるようになり、行政の監督も及ばないため、「一般財団法人○○○協会」などの名称を利用した犯罪が起きないか危惧されるところです。

おそらく、「公益社団法人」と「一般社団法人」の違いが世に認知されるまでかなり時間がかかると思います。

次に、「公益性認定」についてその判断に公正さがきちんと担保されるのかという問題もあげられます。

そもそも、公益性認定を受ける最大のメリットは、「みなし寄付金」という税制上の優遇措置を受けられる点です。

公益法人の事業収入には、公益事業と収益事業によるものがあり、後者の収益事業としての収入に対しては公益法人といえども課税されるのが原則です。

ところが、その収益事業による収入等の資産を公益目的事業等のために支出(この支出が寄付とみなされます。)した場合には、その部分を所得の20%を上限に非課税扱いにするという制度が「みなし寄付金」制度の概要です。

この「みなし寄付金」制度が利用できるか否かは、安定的に大きな利益を計上し続ける公益法人の内部留保にとっては大きな影響があります。

公益性を認定するのは、各所轄官庁ではなく内閣府に設置される「公益等認定委員会」(都道府県では「合議制の機関」)という有識者7名の第三者機関になります。

しかし、いくら第三者機関とはいえ管轄していた所轄庁の意見を聴取した上で認定作業にあたることになることから、第三者機関の独立性がどこまで守られるのかという点は重要です。

以上のような懸念につき、専門職として職務に関わる傍ら、注視していきたいと思います。

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石井 満

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