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銀行預金の相続手続きに期限はある?必要な書類や注意点について解説

相続

投稿日:2024.12.16

相続が発生した場合、さまざまな手続きを行う必要があります。銀行預金の相続手続きもそのうちの一つです。

これから手続きを行う方は、「銀行預金の相続手続きに期限はあるの?」「どんな書類が必要?」など、疑問を持つこともあるのではないでしょうか。

この記事では、銀行預金の相続手続きについて、期限の有無や必要な書類、注意点を詳しく解説します。よりスムーズに手続きを進めるために、ぜひ参考にしてください。

銀行預金の相続手続きに期限はある?

結論として、銀行預金の相続手続きに期限はありません。

ただし、相続発生からあまりにも月日が経ってしまうと、銀行での手続きが複雑化して手間が増えてしまいます。

たとえば、手続き完了前に相続人のうちの1人が亡くなることがあれば、亡くなった相続人の相続についても遺産分割協議をする必要がありますし、そもそも遺産分割協議が終わっていなければ相続人が増えてより関係が複雑になってしまいます。

また、いざ銀行へ手続きに行こうとしたらその銀行が合併されてなくなっていたというケースもあります。

期限がなくても早めに手続きをすることが大切です。

手続き期限のある相続手続き一覧

銀行預金の相続手続きに期限はありませんが、そのほか多くの手続きには期限があります。

期限のある相続手続きは、以下の通りです。

期限 手続き内容
5日以内 健康保険の資格喪失届
7日以内 ・死亡診断書の受け取り
・死亡届の提出
・火葬許可申請書の提出
10日以内 厚生年金または共済年金の受給者死亡届
14日以内 ・世帯主の変更届
・国民健康保険の資格喪失届
・国民年金の受給者死亡届
・介護保険の資格喪失届
3ヶ月以内 相続放棄または限定承認の申立
4ヶ月以内 準確定申告
10ヶ月以内 ・相続税の申告
・相続税の納付
・遺産分割協議書の作成(相続税の申告をする場合)
・預貯金等の解約または名義変更(相続税の納付に必要な場合)
1年以内 遺留分侵害請求
2年以内 ・高額医療費の申請
・葬祭費の申請
3年以内 ・相続登記
・死亡保険金の請求

期限を過ぎてしまうと家庭裁判所の認める特別な事情がない限り、申請ができなくなってしまうものもあります。

始めの数日~1年ほどは立て続けに期限が迫り、日々の傍らで細かい期限を確実に守りながら進めていくのは至難の業です。

このなかで遺産分割協議書の作成に期限がありませんが、遺産分割協議が終わらないと相続税の申告と納付ができません。

相続税の申告と納付の期限が10ヵ月となっているため、それ以前に遺産分割協議書の作成を終える必要があります。

手続きに不安がある方や相続人の関係が複雑な場合は、専門家に依頼するのが良いでしょう。

銀行預金の相続手続きを放置するとどうなる?

銀行預金の相続に期限がないといっても、いつまでも手続きをせずに放っておくとデメリットが発生します。

どのような不都合が起きるのか詳しく解説します。

休眠口座になってしまう可能性がある

銀行口座は10年以上取り引きがないまま経過すると「休眠口座」となり、預金が金融機関から預金保険機構へ移されます。

移されたあとの預金は、生活困難者や社会問題の解決に取り組む団体などの支援にまわされます。

そうなると手遅れのように思えますが、休眠口座となったあとでも預金の払い戻しは可能です。

ただし、手続きが複雑になり手間と時間がかかります。

「口座のある支店名がわからない」「銀行が倒産して合併された」などの事情があるとより複雑で面倒です。

そうなる前に早めに手続きを済ませましょう。

手数料がかかる場合がある

銀行によっては、一定期間以上の入出金がない口座は「未利用口座」として扱われます。

未利用口座になると口座の管理手数料や口座維持手数料が発生します。

未利用口座になる条件や手数料は銀行ごとに異なり、全ての口座が未利用口座になるとは限りません。

たとえば、ある銀行では2004年4月1日以降に作られた口座で、2年以上入出金がないと管理手数料として年間1,320円が口座から引かれます。

口座名義人が未成年であったり、残高が一定の金額以上残っていれば対象外となるなど、免除条件が決められている場合もあります。

免除条件も銀行ごとに異なるので各銀行に確認が必要です。

余分な手数料を払い続けないで済むよう、相続の手続きは早めに終わらせましょう。

相続が複雑化する可能性がある

預貯金の相続を長く先延ばしにしていると、当初の相続人が変更になってしまうケースがあります。

相続手続き完了前に相続人の1人が亡くなってしまうと、その人に代わる新たな相続人が発生して遺産分割協議自体が難航したり、相続関係が複雑になります。

新たな相続人を調べて確定させるところから始め、場合によっては亡くなった相続人の相続についても遺産分割協議が必要となります。

手続きをもう一度専門家に依頼する費用もかかってしまうので、速やかに預貯金の相続を済ませておくのをおすすめします。

銀行預金の相続手続きの手順

銀行預金の相続手続きは以下の手順で進めます。

  • STEP1:被相続人の銀行口座を特定する
  • STEP2:名義人が亡くなったことを銀行に連絡する
  • STEP3:残高証明書の発行を依頼をする
  • STEP4:遺産分割協議を行う
  • STEP5:銀行で解約手続きを行う

それぞれの内容を見ていきましょう。

STEP1:被相続人の銀行口座を特定する

まずは被相続人(亡くなった人)がどこの銀行に預金を預けていたのかを把握しましょう。

どこの銀行に口座があるのかわからない場合は、自分たちで調べなければなりません。

調べ方として、預金通帳を探すところから始めますが、最近は通帳のないネットバンクも増えています。

通帳が見つかったらそれで終わりと思わずに、ネットバンクに口座がある可能性も考えましょう。

以下を手がかりに、利用していた銀行を探します。

  • 銀行から届いた郵便物
  • 保管してあるパンフレット
  • パソコンやスマートフォンのメール

通帳もキャッシュカードもどうしても見つからないときには、心当たりのある銀行に問い合わせをして口座があるかないかの回答をもらいます。

全ての金融機関に一括で問い合わせることはできないので、各銀行を1件ずつ回る作業が必要です。

STEP2:名義人が亡くなったことを銀行に連絡する

銀行口座が特定できたら、預金のある銀行全てに名義人が亡くなったことの連絡が必要です。

連絡すると同時に故人の口座は凍結され、相続手続きが完了するまでは預金の引き出しや自動引き落としが一切できなくなります。

不便に感じますが、口座を凍結することでほかの相続人が勝手に預金を引き出したり、第三者に不正に使われたりするのを防ぐ目的があります。

市区町村役場へ死亡届を出しても自動で凍結されることはないので、安全に預金を保管しておくためにも自動引き落としの状況などの確認が出来たら、銀行への連絡を済ませましょう。

STEP3:残高証明書の発行を依頼をする

銀行への死亡届と同時に残高証明書を発行してもらいましょう。

発行の依頼をしてから1~2週間で郵送、または窓口での受け取りで入手可能です。

残高証明書には今ある預金額のほかに、ローンがあればその借入額も記載されます。

それを元に相続人同士で話し合いを進め、借入額によっては相続放棄も考えていきます。

遺産分割協議をする際に預金額と借入額がわからなければ先に進めません。

残高証明書は相続手続きをスムーズに進めるための大事な資料となります。

STEP4:遺産分割協議を行う

預金口座のある全ての銀行から残高証明書の発行ができたら、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議とは、誰が何割の財産を引き継ぐのかを相続人全員で決めることです。

相続の割合が決まったら遺産分割協議書を作成します。

銀行預金の相続は遺産分割協議書がなくてもできますが、作成をしておけばその後の手続きが楽になりスムーズです。

遺産分割協議書があれば銀行窓口での手続きを相続人全員でする必要がなく、代表の口座受取人が1人で手続きをすることができます。

預金以外にも不動産や車の相続がある場合には、遺産分割協議書がないと手続きができないので作成が必須です。

STEP5:銀行で解約手続きを行う

遺産分割協議が終わったら、遺産分割協議書と相続に必要な書類を持って銀行の窓口へ提出します。

書類については次項で解説します。

書類に不備がないよう事前に確認しておきましょう。

銀行預金の解約をする際に必要な書類

銀行預金の解約をする際には、以下の書類が必要です。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の預金口座の通帳・キャッシュカード
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書

遺言書がある場合には遺言書の提示も必要となり、そろえる必要書類も変わります。

銀行によっても違いがあるので、問い合わせをするか各銀行のホームページで事前に確認をしましょう。

【注意】遺産相続前に預金口座からお金を引き出すのはNG

口座名義人が亡くなっても銀行に死亡の連絡をするまでは口座は凍結されません。

凍結される前なら口座から預金を引き出すことが可能です。

しかし、相続が完了する前に引き出すのは避けるべきです。

その理由を詳しく解説します。

トラブルになる可能性がある

遺産分割協議を終える前に相続人のうちの1人が預金を引き出してしまうと、相続人の間でトラブルに発展する可能性があります。

故人の預金は相続人全員の相続財産となるため、そのうちの1人が勝手に引き出してしまうと使い込みを疑われ、ほかの相続人の信頼を失ってしまいます。

たとえ緊急で葬儀費用が必要だったとしても、相続人全員に知らせてから引き出すのが賢明です。

余計なトラブルを避けるため必要な費用でも同意を得てから引き出し、不要な引き出しはやめましょう。

相続放棄や限定承認ができなくなる可能性がある

相続のやり方は大きく分けて以下の3種類があります。

単純相続 財産も負債も全て相続する
限定相続 相続で得た財産の範囲内で負債も引き継ぐ
相続放棄 財産も負債も全て放棄する

もし遺産分割協議が終わる前に預金を引き出して自分のために使ってしまうと、全てを引き継ぐ単純相続をしたとみなされます。

その後、財産を調べていくうちに負債のほうが多いとわかり、限定相続や相続放棄をしたいと思ってもできなくなってしまうのです。

故人に大きな負債はないと思っていても、調査であとから負債が見つかる可能性もあります。

遺産分割協議前に遺産を使い込んでしまうのは、自分にとって余計なリスクを増やす行為になるので避けましょう。

例外として「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」がある

葬儀費用や遺族の生活費を工面するために、急ぎでお金が必要になるケースもあるでしょう。

その場合には、遺産分割協議が終わっていなくても仮払いを受けられる「払い戻し制度」を利用すると良いです。

払い戻し制度とは、次のようなものです。

  • 遺産分割前でも預金から仮払いができる
  • 相続人1人で手続きができる
  • 1人で引き出せる金額に上限がある

1人で払い戻しを受けられる金額は「預金額(口座ごと)× 1/3 × 払い戻しを受ける相続人の法定相続分」となります。

預金額が600万円で払い戻しを受ける相続人の法定相続分が1/2なら「600万円 × 1/3 × 1/2=100万円」です。

ほかの相続人の利益を害さない金額に上限が設定されています。

払い戻しの制度は法律で正当に決められたものなので、相続完了前に費用が必要なときは利用できます。

ただし、払い戻しの制度を利用したことで単純承認が成立し、相続放棄できなくなる可能性があることには注意が必要です。

銀行預金の相続手続きに関するよくある質問

ここまで、銀行預金の相続手続きの手順や注意点について解説してきました。

ここからは、よくある質問を紹介します。

銀行の相続手続きにかかる期間はどれくらい?

銀行によっても変わりますが、書類を提出してから1~4週間程度かかります。

銀行で内容確認をしてから払い戻しになりますが、書類に不備があると書類の再提出が必要になり予定より長くかかります。

書類提出前に必要書類を集めたり遺産分割協議をする期間などを考慮すると、トータルではさらに長い期間が必要です。

銀行預金の相続はすぐに終わるものではないので、余裕をもって手続きするようにしましょう。

銀行預金の相続税はいくらからかかる?

相続税には「基礎控除」というものがあり、預金や不動産などの相続財産から基礎控除額を引いた分が課税対象です。

基礎控除額は法定相続人の数によって変わり、多いほど基礎控除額が増えます。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人」で計算できます。

もし相続財産額よりも基礎控除額のほうが上回れば、相続税はかかりません。

相続財産が5,000万円のケースを例にあげると次のようになります。

法定相続人 相続税額
子ども1人 160万円
子ども2人 80万円
子ども3人 20万円
子ども4人 0円

相続財産額と基礎控除額によって相続税は変わります。

銀行預金が少額の場合、 相続はどうなる?

預金が少額なら通常の相続手続きよりも簡単な手順で済ませられます。

ゆうちょ銀行の場合は、普通預金と定期預金を合わせて100万円以下であれば簡易手続きを取ることができます。

通常の手続きで必要な相続人全員分の印鑑証明書が必要なくなり、代表の相続人1人で手続きが可能です。

ほかの相続人が知らない間に解約ができてしまいますが、後々の揉めごとにつながらないよう、相続人全員に了承を得てから手続きすることが大切です。

ゆうちょ銀行以外でも同じように簡易手続きができるとこもあるので、口座のある銀行に問い合わせてみると良いでしょう。

相続手続きは専門家に相談しよう

杠司法書士法人では、相続全般に関する相談を受け付けています。

今回紹介した銀行預金の相続は、相続関連のほんの一部に過ぎません。

これ以外にも不動産の相続登記や財産調査など、多くの手続きがあり作業量は膨大です。

時間がない方が自分で進めていくには無理があり、手続きをしなければいけない期限に間に合わない可能性もあります。

相続人の方たちの今後に大きな影響がある相続は、安心して任せられる専門家に依頼すると安心です。

不安なことやわからないことを解決するお手伝いをいたします。

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