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借地権付き建物を相続したら?手続きの流れや注意点について解説

不動産

投稿日:2025.06.23

借地に建つ家を相続する場合、「どうやって手続きを進めれば良いのか」「どんなことに注意すれば良いのか」など、さまざまな疑問がでてくるのではないでしょうか。

それに加えて、借地権付き建物の相続では、地主との関係にも十分な配慮が求められます。

借地権付き建物の相続は通常の不動産相続とは異なる点が多く、事前にポイントを理解しておくことが大切です。

この記事では、借地権付き建物の相続について詳しく解説します。地主の承諾が必要となるケースや相続手続きの流れなども取り上げるので、ぜひ参考にしてください。

借地権は相続財産として扱われる

被相続人が借地に建つ家を所有していた場合、家だけでなく、その土地の借地権も被相続人の財産として扱われます。

借地権とは、建物を建築する目的で土地を借りる権利のことです。

実際の土地は地主が所有していますが、契約を結ぶことで借地権が設定され、借地人はその土地に建物を建てられるようになります。

借地権は相続財産に含まれるため、現金や株式などの財産と同様に相続の対象となり、相続税も課税されます。

借地権付き建物の相続は地主による許可が必要?

実際に土地に家を建てているのは借地人ですが、土地の所有権は地主にあります。

そのため、借地権付き建物を相続する際は「地主に報告したり、許可を得たりする必要があるのではないか」と考える方もいるかもしれません。

結論として、地主の許可が必要なケースと不要なケースがあります。

以下では、それぞれのケースについて詳しく解説します。

法定相続人による借地権の相続では地主の許可は不要

法定相続人が借地権付き建物を引き継ぐ場合、地主の許可は必要ありません。

法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を引き継ぐ権利がある人を指し、被相続人の配偶者・子ども・親・兄弟姉妹などが該当します。

一般的に、借地人が借地権を第三者へ譲る際は、譲渡承諾料(名義変更料)を支払う必要がありますが、法定相続人が引き継ぐのであれば譲渡承諾料の支払いも不要です。

ただし、トラブルを避けるために、地主に借地権を相続した旨を伝えておいたほうが安心です。

借地権を法定相続人以外に遺贈する場合は地主の承諾が必要

遺贈により借地権付き建物を法定相続人以外の人が引き継ぐ場合は、地主に承諾を得る必要があります。

遺贈とは、遺言により財産を無償で譲ることであり、法定相続人以外の第三者の指定も可能です。

第三者が借地権付き建物を引き継ぐことになれば、地主に許可を求めなければなりません。

その際、地主から譲渡承諾料を請求される場合があります。

譲渡承諾料の相場は借地権の価格の10%程度とされていますが、実際は個々の事情を考慮して金額が決定されます。

譲渡承諾料は基本的には支払うべきお金であるため、適切に対応していきましょう。

借地権を相続後に売却するには地主の承諾が必要

相続した借地権付き建物を第三者へ売却する場合は、地主の許可が必要です。

すでに自宅を所有している、相続した建物が遠方にあり管理が難しいなどの理由で、相続後の売却を検討する方もいるでしょう。

この場合も借地権と建物を第三者へ譲渡することになるため、地主に承諾を得る必要があり、譲渡承諾料の支払いにも応じなければなりません。

地主の許可を得ずに売却すると、契約違反とみなされて借地契約を解除されるおそれがあります。

借地権付き建物を相続後に建て替える際は契約内容や条件の確認が重要

相続後に借地に建つ家を建て替える場合は、契約時の条件により対応を検討する必要があります。

契約内容に増改築や建て替えを制限する事項が含まれていると、地主に許可を得なければなりません。

一方で、契約内容に従った増改築や建て替えであれば、地主に許可を得る必要はありません。

また、外壁のひび割れの補修や鍵の修理など、建物の維持に最低限必要な修繕も地主の許可は不要です。

ただし、いずれのケースでも、地主とのトラブルを避けるために事前に知らせておくほうが良いでしょう。

借地権付き建物の相続手続きの流れ

被相続人の財産に借地権付き建物が含まれる場合、次の流れで手続きを進めます。

  1. 借地権の内容を確認する
  2. 借地権付き建物の相続人を決定する
  3. 相続が発生したことを地主に伝える
  4. 借地権付き建物を相続登記する

それぞれの手続きについて詳しく解説します。

1.借地権の内容を確認する

借地権の詳細を確認するために、法務局で土地と建物の全部事項証明書を取得します。

不動産の相続が発生した際は相続登記が必要ですが、通常は建物の登記のみを行えば問題ありません。

しかし、まれに借地権も登記されているケースがあります。

その場合は、借地権と建物の両方について相続登記が必要になるため、土地と建物の登記内容を確認しておきましょう。

2.借地権付き建物の相続人を決定する

被相続人の遺言がある場合は、その内容に従って借地権付き建物の相続人を決定します。

遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が引き継ぐかを決めます。

その結果をもとに遺産分割協議書を作成しましょう。

3.相続が発生したことを地主に伝える

トラブルを防ぐために、相続が発生したことは地主に報告しておくことが重要です。

前述のとおり、法定相続人が借地権付き建物を引き継ぐ場合、地主の許可は必要ありません。

しかし、今後は相続人が地主と関係を築いていくため、借地人が亡くなり、借地権と建物を引き継ぐことになった旨は伝えておくと良いでしょう。

4.借地権付き建物を相続登記する

相続人が決まれば、必要書類を準備して相続登記を行います。

以下の書類を用意し、借地権付き建物の所在地を管轄する法務局に申請します。

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本類
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 借地権付き建物を相続する人の住民票
  • 固定資産税評価証明書

上記に加え、遺言がある場合は遺言書を、遺産分割協議により相続人が決まった場合は遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を用意します。

なお、法務局への登記申請は窓口のほか、郵送やオンラインでも受け付けています。

借地権を相続する場合の注意点

借地権付き建物の相続では、トラブルが起こりやすいポイントがあります。

以下では、借地権付き建物の相続における5つの注意点について解説します。

借地権には更新料がかかる

法律上、借地権の契約更新時に更新料を支払う義務はありません。

しかし、実際には借地人が地主に更新料を支払う慣習は広く行われています。

そのため、被相続人が更新料を支払っていたのであれば、相続人も更新料の支払いを継続するのが無難です。

相続により借地人が変わったからといって更新料の支払いを拒否すると、地主との関係が悪化する要因になりかねません。

借地権の更新料の支払いにはできる限り対応しましょう。

地主から地代の引き上げを求められる場合がある

相続をきっかけとして、地主から地代の増額を求められることがあります。

借地権の相続はこれまでの契約内容をそのまま引き継ぐものであるため、基本的には地代の増額に応じる必要はありません。

ただし、正当な理由があれば値上げを受け入れざるを得ない可能性があります。

地代が周辺の相場と比較して非常に安価な場合に、地代の増額を請求できる「地代等増減請求権」が認められているためです。

地主から地代の増額を求められた場合は理由を確認し、慎重に判断しましょう。

建物が消失すると借地権も失効するリスクがある

地震や水害、風害などの天災、火災や取り壊しなどの人為的要因により借地に建つ家が消失すると、借地権が失効する可能性があります。

ただし、天災や人為的要因により建物がなくなっただけで、借地権が直ちに失効するわけではありません。

なお、借地権の最初の存続期間(借地契約満了までの期間)内であれば、天災や人為的要因により失われた建物の再建築について、地主の許可を得る必要はありません。

消失した家の再建築は、借地人の生活を維持するうえで重要なことであると考えられているためです。

しかし、借地契約の更新後は地主の許可が必要になることに留意しましょう。

建物の名義を子どもに変更する場合は地主の承諾が必要になる

借地権付き建物の名義を親から子どもへ変更する際は、地主に許可を得る必要があります。

将来の相続への配慮や子ども夫婦との同居を理由に、借地に建つ家の名義を親から子どもへ変更することもあるでしょう。

建物の名義変更自体に地主は関わりません。

しかし、借地権は借地に存在する建物に付随すると考えられているため、借地に建つ家の名義変更に伴い、借地権の名義も変更されることになります。

したがって、借地権付き建物の名義を変更する際は地主の承諾が必要です。

地主の許可なく建物の名義を変更すると、勝手に借地権が譲渡されたとみなされて、借地契約を解除される可能性があります。

借地権の共有はトラブルになりやすい

借地権の共有はトラブルをまねきやすいため、できる限り避けるほうが安心です。

借地権を相続する際、相続人の中の誰か一人が引き継ぐことが一般的ですが、兄弟など複数の相続人での共有も可能です。

しかし、借地の管理や変更に借地権を共有する全員の同意が必要になるため、借地に関する問題をスムーズに解決できなくなる可能性があります。

また、原則として地代や税金は借地権の共有者全員が負担します。

共有者の一部が地代や税金を支払わない場合、ほかの人が負担することになり、共有者同士の関係が悪化しかねません。

このように、借地権を複数人で共有するとトラブルが生じやすいため、借地権は特定の一人が相続するように協議を進めましょう。

借地権付き建物の相続に関するよくある質問

ここまで、借地権付き建物の相続で地主の許可が必要・不要なケースや借地権付き建物を相続する場合の注意点などを解説してきました。

以下では、借地権付き建物の相続についてよくある質問に回答します。

借地権付き建物は相続放棄できる?

借地権と借地に建つ家はどちらも相続財産となるため、相続放棄が可能です。

一般的に相続放棄は、相続財産に負債が多い場合に行われます。

また、建物が遠方にある場合や建物が老朽化して解体が必要な場合など、相続後の借地権付き建物の管理が困難なケースでも、相続放棄は選択肢の一つになります。

ただし、相続放棄をすると借地権と建物だけでなく、ほかの財産を相続する権利も失うことになるため、慎重に検討してください。

借地権付き建物に固定資産税はかかる?

借地人は、借地に建つ家の固定資産税を負担する義務がありますが、借地の固定資産税を支払う必要はありません。

借地の固定資産税は、所有者である地主が負担します。

ただし、借地人は地主に対して地代を支払う必要があります。

地主から地代の値上げや立ち退きを求められたら応じるべき?

借地人の変更を理由に地代の値上げや立ち退きを求められても、原則として応じる必要はありません。

借地権付き建物の相続において、借地契約の内容はそのまま引き継がれるためです。

したがって、地代の値上げや立ち退きを求める正当な理由がない限り、地主の申し出を拒否しても問題はありません。

借地権付き建物に相続以外の選択肢はある?

被相続人が借地権付き建物を所有していた場合、相続以外で取り得る選択肢は主に次の4つです。

  • 底地を地主から買い取る
  • 借地権を売却する
  • 相続放棄する

地主から底地(借地人が借りている土地)を購入すれば、建物だけでなく土地も相続人の所有となり、地主との賃借関係は解消されます。

この場合も地主と借地人の賃借関係は解消され、建物や土地の活用の幅が広がることが期待されます。

3は、借地人が借地権を建物と共に売却するケースです。

第三者へ売却するほか、借地権を地主に買い取ってもらい、土地を地主に返す方法もあります。

また、地主との合意のうえ、借地権と底地を第三者へ売却するのも方法の一つです。

相続放棄する場合は、前述の通り、借地権付き建物以外の財産も引き継げなくなる点に注意しましょう。

借地権付き建物の相続は専門家に依頼できる

借地権付き建物を相続する場合、専門家に依頼することをおすすめします。

借地権付き建物の相続登記については、司法書士へ依頼しましょう。

司法書士は登記のプロであるため、相続登記に必要な書類の準備を全て任せられます。

地主やほかの相続人とのトラブルが生じた場合は、弁護士に依頼すると解決をサポートしてもらえます。

借地権付き建物の相続を自分だけで進めようとすると、書類の準備や地主との調整に時間がかかり、大変な負担を感じるかもしれません。

また、意図せず借地契約に違反するリスクもあります。

借地権付き建物の相続は司法書士や弁護士などの専門家に依頼して、スムーズに進めましょう。

借地権付き建物の相続に関するお悩みは専門家に相談しよう

借地権は財産として扱われるため、相続の対象となります。

一方で、借地権付き建物の相続には、地主へ連絡したり相続登記の手続きを行ったりと、多くのやるべきことがあります。

また、トラブルの発生を防ぐために注意が必要な点も少なくありません。

借地権付き建物の相続に際して不安がある方は、専門家に相談しましょう。

杠(ゆずりは)司法書士法人では、専門知識と豊富な経験を活かして、相続に関するお悩み解決をお手伝いしています。

借地権付き建物の相続について気になることがある方は、お気軽にご相談ください。

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