相続放棄の費用相場|司法書士や弁護士に依頼するケースと費用を抑える方法
投稿日:2024.12.02
亡くなった家族に多額の借金があった場合、相続人にとって大きな負担となります。
そのようなときに検討するのが相続放棄です。相続放棄は、手続きが複雑なため、専門家のサポートが必要となるケースも少なくありません。
しかし、「どれくらいの費用がかかるのか」「できれば費用を抑えて手続きを済ませたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、相続放棄の費用相場について、司法書士や弁護士に依頼するケースと費用を抑える方法について詳しく解説します。
相続放棄にかかる費用
相続放棄にかかる費用は、自分で手続きを行う場合や司法書士に手続きを依頼する場合、弁護士に依頼する場合で異なります。
状況に合わせて適切な方法の選択が必要です。
一般的には、以下の費用が目安です。
- 自分で手続きをおこなう場合:3,000円~5,000円程度
- 司法書士に手続きを依頼する場合:3〜8万円程度
- 弁護士に依頼する場合:5~10万円程度
それぞれの費用について、詳細を説明します。
自分で手続きを行う場合|3,000円~5,000円程度
自分で手続きをする場合、書類の取得費用といった諸経費しかかかりません。
おおよそ3,000〜5,000円程度で済みます。
ただし、被相続人(亡くなった人)の父母や兄弟姉妹が相続放棄をする場合、被相続人の出生時から死亡時に至るまでの全ての戸籍謄本が必要となるため、費用はもう少しかかります。
手続きに必要な書類を取得するための費用は、次の通りです。
必要書類 | 費用 |
---|---|
収入印紙 | 800円(1人つき) |
被相続人の住民票除票 | 300円 |
申述人(放棄をする方)の戸籍謄本 | 450円 |
被相続人の死亡の記載のある除籍謄本 | 750円 |
連絡用の郵便切手 | おおむね400~500円 |
連絡用の郵便切手は家庭裁判所によって内訳が異なるため、申請先の家庭裁判所へ確認するか、ホームページをチェックしましょう。
自分で手続きを進める場合、諸経費のみで安く抑えることはできますが、思わぬ手間と時間がかかるケースが想定されます。
時間と費用のどちらを選ぶのか、よく考えたうえで選ぶことが大切です。
司法書士に手続きを依頼する場合|3〜8万円程度
司法書士へ依頼する場合の1件あたりの報酬費用相場は、おおよそ3〜8万円です。
報酬の内訳は、次のとおりです。
内訳 | 費用 |
---|---|
相談料 | 無料または5,000円程度(1時間あたり) |
申述書の作成代行費用 | 3,000~6,000円程度(戸籍の取得費用含む) |
代理手数料 | 3万~8万円程度 |
戸籍謄本といった必要書類の取得まで依頼すると、代行手数料として1通1,000円程度の費用がかかることもあります。
また、申し立て期限の3ヶ月を過ぎて依頼する場合、別料金が加算されることもあります。
司法書士へ依頼するときは、できるだけ時間に余裕を持つようにしましょう。
なお、複数人でまとめて依頼する場合、費用が安くなることもあります。
弁護士に依頼する場合|5~10万円
弁護士へ依頼する場合、相続放棄1件につきおおよそ5〜10万円程度の費用が必要です。
依頼費用の内訳は、以下の通りです。
内訳 | 費用 |
---|---|
相談料 | 無料または1万円程度(1時間あたり) |
申述書の作成代行費用 | 5,000~1万円程度(戸籍の取得費用含む) |
代理手数料 | 5~10万円程度 |
弁護士への依頼費用はおおよそ5~10万円程度です。
司法書士に比べるとやや割高に設定されています。
弁護士は一般的な相続放棄の手続きに加えて、職権によって揉めごとの仲介にも対応できるので、専門性の高さから費用は高めに設定されているようです。
費用だけ見ると自分で手続きを進めたほうが良いように思えますが、思わぬトラブルへの対処などを考慮すると専門家へ依頼したほうが良いケースもあります。
相続放棄の手続きは司法書士と弁護士どちらに依頼する?
相続放棄の手続きについて、司法書士と弁護士の違いを一覧表にまとめました。
司法書士 | 弁護士 | |
---|---|---|
業務範囲 | 相続放棄の手続きに関する書類作成や法務相談 | ・相続放棄の手続き ・遺産分割や紛争対応など全般的な法的助言・代理 |
代理権限 | 家庭裁判所への書類提出の代行は可能だが、代理交渉や訴訟代理は不可 | 代理交渉・裁判での代理・訴訟代理が可能 |
費用 | 比較的安価 | 高額になりがち |
相談範囲 | 主に手続きに関する相談が中心 | 相続に関する総合的な法的助言や紛争対応が可能 |
専門知識の範囲 | 相続に関する手続きや書類作成が専門 | ・法律全般 ・相続紛争や複雑な法的問題の対応が得意 |
対応可能なケース | 紛争性のない相続放棄のケースに適している | 複雑なケース、債権者対応が必要な場合など |
相談時間や手続きの柔軟性 | 比較的柔軟 | 忙しい場合、相談時間の調整が難しいことがある |
弁護士には本人に代わって相続放棄の手続きを行う代理権限を持っているため、戸籍謄本の取得、申述だけでなく債権者対応まで全てを委任できます。
相続放棄についてほとんど時間が取れないという方は、弁護士へ依頼したほうが良いでしょう。
時間が確保できて自分でもある程度対応できそうな場合や、シンプルに放棄だけできれば良い場合は、司法書士へ依頼しても問題ありません。
相続放棄を専門家に依頼すべきケース
具体的に相続放棄を専門家に依頼すべきケースは、以下があります。
- 相続放棄の期限が過ぎているケース
- 相続財産の調査も依頼するケース
それぞれ詳細を説明します。
相続放棄の期限が過ぎているケース
相続放棄は「相続を知った日から3ヶ月以内」という期限が設けられています。
うっかり3ヶ月を過ぎてしまうと相続放棄は認められません。
しかし、諸事情を考慮して例外的に相続放棄が認められるケースもあり、その場合は家庭裁判所の判断に委ねられます。
裁判所が公開している相続放棄のQ&Aには「相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3カ月以内に申述すれば、相続放棄の申述が受理されることもあります」との記載があります。
曖昧な表現ですが、要は相続財産の存在を知り得た日から改めて3ヶ月カウントしても良いという意味合いです。
期限を過ぎてから相続放棄をしたい場合、家庭裁判所に提出するための上申書を作成しなければいけません。
上申書には、期限経過後に相続放棄が認められる理由をしっかり記載する必要があります。
上申書は自分でも作成できますが、確実に通したい場合は専門家へ依頼したほうが良いでしょう。
相続財産の調査も依頼するケース
相続放棄を検討するために、被相続人の財産がどの程度あるのか、債務はないのかなど事前に把握しておく必要があります。
相続放棄の期限が3ヶ月以内ということを考えると、財産調査は2ヶ月以内をめどに完結したほうが良いです。
必ずしも期間に余裕があるわけではないため、初七日が終わったら直ちに財産調査に取りかかりましょう。
財産調査を早めに行うメリットは、次の3つです。
- 相続手続きを早めに進められる
- 予想外の借金問題などに早く対処できる
- 相続放棄の検討を早めにできる
預貯金や不動産のほかに有価証券、債務など、調査をしてみると思いのほか、知らなかった借金や財産が判明するのはよくあることです。
被相続人の財産を把握できていない場合、早めに調査して特定したほうが良いでしょう。
見つかる可能性が高い財産は、主に動産・不動産・債券・借金の4つです。
自分で財産調査をしても時間がかかるうえに、把握しきれないケースもあるため、最初から専門家へ依頼したほうが安心です。
相続放棄を専門家に依頼するメリット
多忙な方や手続きそのものに自信がない方は、専門家へ依頼するメリットが十分にあります。
専門家へ依頼するメリットと比べて、自分で手続きを進める場合とどちらが良い選択なのか検討してみましょう。
専門家へ依頼するメリットは、次の2つです。
- 自分の作業負担が軽減できる
- 期限内に確実に相続放棄できる
それぞれのメリットを解説します。
自分の作業負担が軽減できる
相続放棄の手続きは、相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きを進めなければいけません。
しかし、相続が発生した直後は葬式や役所関連の手続きが続くため、1ヶ月から1ヶ月半は相続関連の時間が取れないこともよくあります。
残り2ヶ月程度で戸籍の収集や財産調査を行うことになりますが、素人の手続きでは戸籍の収集だけでも精一杯になりかねません。
また、平日に時間が取れない方は、書類の準備すら完了しない可能性もあります。
3ヶ月という短い期間に自分にかかる大きな負担を考慮すると、専門家に依頼したほうが大きなメリットを得られます。
期限内に確実に相続放棄できる
専門家へ相続放棄を依頼すると要件の違反チェックも抜かりなく、不備のない書類を作成してくれるため、期限内に確実に相続放棄が完了します。
自分で相続放棄をした場合、書類に何かしらの不備があれば却下となり、2週間以内に即時抗告することはできますが、再度相続放棄の申述をすることはできません。
相続放棄の申述後は家庭裁判所から相続放棄照会書が届きますが、回答次第では相続放棄が認められなくなります。
確実に相続放棄を完了させたい場合は、専門家へ依頼したほうが良いでしょう。
相続放棄の費用を抑える方法
「何かと費用がかさみがちな相続放棄の手続き費用をできるだけ抑えたい」という方も多いのではないでしょうか。
相続放棄手続きの費用を抑える方法として、以下の2つの選択肢があります。
- 法テラスを利用する
- 司法書士に依頼する
それぞれ詳しく説明します。
法テラスを利用する
法テラスが受け付けている「民事法律扶助業務」を利用すると、弁護士費用を50%程度抑えられる可能性があります。
民事法律扶助業務は、法律相談が必要な状況にも関わらず、弁護士に依頼するための経済的な余裕がない人を助けるための制度です。
ただし、民事法律扶助業務が適用されるために、次の3つの条件をクリアして審査を通す必要があります。
- 月収または資産が一定額以下である
- 勝訴または紛争解決の見込みがある
- 報復や宣伝、権利濫用のためではない
これらの条件に当てはまる方は、割安で相続放棄に関する相談ができます。
「相続放棄の費用がどうしても捻出できない」という方は、法テラスを使って相談費用を抑えてみるのも選択肢の一つです。
司法書士に依頼する
弁護士に比べて司法書士の報酬は割安です。
相続手続きに関する費用を抑えたい場合、弁護士でなく司法書士へ依頼するという選択肢があります。
司法書士が扱える業務は弁護士に比べて制限がありますが、司法書士は相続手続きの専門家なので手続きが滞るようなことはありません。
債権者対応が不要な場合や相続放棄を決めている場合は、初めから司法書士へ依頼しても何ら問題はないでしょう。
相続放棄の相談なら杠(ゆずりは)司法書士法人
自分で手続きを進める場合、相続放棄にかかる費用は3,000円〜5,000円程度に済ませられます。
司法書士へ依頼する場合では3〜8万円程度、弁護士への依頼では5~10万円程度が相場です。
シンプルな相続放棄であれば自分で進めても問題ありませんが、状況が複雑化している場合は、専門家へ依頼したほうがスムーズに進みます。
特に以下のようなケースでは、専門家に依頼するのがおすすめです。
- 相続放棄の期限が迫っている
- 財産調査が必要な状況
専門家へ依頼すると、自分の負担を大幅に削減できるだけでなく、期限に遅れてしまうこともありません。
杠(ゆずりは)司法書士法人では、お客さまにとってのよりどころであり続けるために、専門家らしい解決力を提案し続けています。
相続放棄のご相談はぜひ、杠(ゆずりは)司法書士法人へお問い合わせください。
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