【2024最新】相続登記の義務化・簡素化|押さえておきたいポイントと相談先
投稿日:2025.01.08
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
これに伴い、一部の手続きが簡素化、そして新しい制度も創設されています。
これから相続登記を進める方やまだ手続きを済ませていない土地を持っている方は「具体的に何が変わったの?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、相続登記の義務化で押さえておきたいポイントや相続登記について相談できる専門家について詳しく解説します。スムーズに手続きを完了するために、ぜひ参考にしてください。
相続登記が義務化|押さえておきたい7つのポイント
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
相続登記が義務化されたことで、これまでとは異なる点があるため、これから手続きを進める方はしっかりと理解しておきましょう。
相続登記が義務化されたことに伴い、押さえておきたいポイントは以下の通りです。
- 過去に相続した不動産も登記義務の対象
- 相続登記の申請期限は3年
- 登記義務を果たさないときは10万円以下の過料
- 相続人申告登記制度の新設
- 相続土地国庫帰属制度の創設
- 登記手続きの一部が簡素化
- 法務局が死亡情報を記録できる
それぞれ詳しく解説します。
過去に相続した不動産も登記義務の対象
相続登記の義務が生じるのは2024年4月1日からですが、それ以前の相続もさかのぼって相続登記の義務が適用されます。
相続登記は「相続により所有権を取得したことを知った日」を起点として、3年以内に申請することが決められています。
施行日以前に相続が発生していた場合は、相続により所有権を取得したことを知った日または施行日である2024年4月1日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
相続したものの評価額が低く、売却のめどが立たずに放置しているという場合でも、相続登記は必要です。
正当な理由なく期限内に相続登記を行わないと、過料の対象となります。
相続登記の申請期限は3年
相続登記の申請期限は「相続によって不動産を取得したことを知った日」から3年以内とされています。
被相続人(亡くなった人)の死亡を把握していても、不動産の取得を知らなければ相続登記を行う義務はありません。
登記義務を果たさないときは10万円以下の過料
定められた期限内に相続登記をしなかった場合、10万円以下の過料が課されるおそれがあります。
相続登記の申請期限は、以下のように決められています。
- 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内
- 過去に相続が発生している場合は、相続により不動産を取得したことを知った日または施行日である2024年4月1日のいずれか遅い日から3年以内
この申請期限内に相続登記を行わないと、登記官から登記を行うよう催告が送付されます。
相続人同士の争議や、申請義務者が病気や経済的困窮を抱えているなど、申請が困難な事情がある場合は、登記官が個別事情に基づき判断します。
個別事情が正当であると認められた場合は、申請義務違反は通知されません。
そうでない場合は、法務局から裁判所へ過料事件の通知が行われます。
ただし、この場合の過料は行政罰と呼ばれるもので、刑事罰でいう前科にはあたりません。
相続人申告登記制度の新設
相続人は、定められた期間内に相続登記を行わなければなりません。
しかし、さまざまな事情により、期間内に登記を完了させるのが難しいケースもあります。
そこで、救済制度として新設されたのが「相続人申告登記」です。
たとえば、以下のようなケースで相続人申告登記が有効です。
- 長期間にわたり登記がされておらず、相続人を探し出すのに時間がかかる場合
- 遺産相続に争議が起きており、期間内に終結する見込みが立たない場合
このような場合「自分が不動産の相続人である」と届け出れば、相続登記を免れることができます。
メリットとして相続人それぞれが単独で申告できる点、提出書類や手続きが簡素な点が挙げられます。
ただし、これは権利関係を明らかにするものではないので、相続人申告登記をしただけでは売却はできません。
また、遺産分割協議が成立したあとに相続人が改めて相続登記を行う必要がある点に注意しましょう。
相続土地国庫帰属制度の創設
相続しても売却や活用のあてがない土地を国庫に帰属させる制度として「相続土地国庫帰属制度」が新設されました。
土地または土地の共有持分を取得した相続人であれば、不要な土地を国庫に引き渡すことができる可能性があります。
相続人側は不要な土地を管理する必要がなくなり、国としても所有者不明の土地を減らすという大きなメリットがあります。
ただし、土地を国庫に帰属させるには法務局による審査があり、以下のようなケースは申請できません。
- 建物がある土地
- 担保権などが設定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 所有権について争議中の土地
- 通路などが含まれている土地
ほかにも申請に必要な条件があるので、事前に専門家によく相談することをおすすめします。
登記手続きの一部が簡素化
これまでの相続登記は、相続人同士の交渉や合意がまとまらなかった場合、手続きが進められませんでした。
相続登記の期限に間に合わないケースも多かったことから、今回の義務化に伴い、一部の手続きが簡略化されました。
具体的には、以下のようなケースで手続きが簡略化されます。
相続人への遺贈
相続人に対して遺贈する旨の遺言書が残されていた場合、遺言執行者を定めていなければ、これまでは法定相続人全員の協力が必要でした。
今回の簡略化によって、不動産を取得した相続人単独での遺贈の登記ができるようになりました。
遺贈
被相続人が遺言書によって、不動産を遺贈する意向を遺していた際に、遺言執行者を定めていない場合、名義変更には法定相続人全員の協力が必要でした。
しかし、今回の簡略化によって、遺贈される人が単独で相続登記の申請ができるよう変更されました。
法務局が死亡情報を記録できる
「住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)」が被相続人が亡くなっているという情報を反映した時点で、法務局が登記簿に死亡情報を記録できる制度が令和8年4月1日から始まります。
ただし、これは死亡したという事実を記録するだけのものなので、登記とは別のものです。
相続登記は、相続人が別途行わなければならない点に注意しましょう。
相続登記が義務化された背景
相続登記が義務化された背景として、所有者が分からなくなっている土地が全国で増え続けているという問題が挙げられます。
「土地を相続しても使い道がない」「売却するあてもないので放置するしかない」という方は年々増え続けています。
そのため、所有者が亡くなったあと放置され、周辺環境や開発の妨げになっているケースが少なくありません。
国土交通省によると不動産登記簿上で所有者が確認できない、いわゆる「所有者不明土地」の比率は約2割にのぼるという結果も出ています。
これらの問題を解決する策の一つとして、相続登記が義務化されることになりました。
相続登記をしないとどうなる?
相続登記が義務化されたものの「面倒だから相続登記はしたくない」「そのまま放置しても問題ないのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、手続きを怠ったり、先延ばしにしたりすることで思いがけない問題が生じる可能性があります。
相続登記をしなかった場合に生じる具体的なリスクは、以下の通りです。
不動産の売却や贈与ができない
不動産の売却や贈与には、名義を買主や不動産を受け取る人に変更する必要があります。
しかし、相続登記をしていない被相続人の名義のままの不動産は、法的に所有者と認められないため、売却や贈与ができなくなります。
相続してすぐに売却するという場合でも、相続登記をしなければ売却を進められません。
相続して3年以内は「相続税の取得費加算の特例」や「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」などの控除や特例の適用範囲内になっており、この期間に売却を済ませてしまいたいと考えている方も多いでしょう。
しかし、相続登記を済ませていないと期間内に売却が進められず、控除や特例が受けられなくなる可能性もあります。
抵当物件として利用できない
相続登記していない土地を担保にして、融資を受けることはできません。
相続登記は土地の所有者が誰なのかを、正式に示すものです。
担保設定を行う際、金融機関は登記簿によって所有者が誰なのかを確認しています。
その際、相続登記がされておらず被相続人のままになっていると、正式な所有者が誰なのか把握できません。
そのため、抵当権が設定できず、融資が受けられなくなってしまいます。
土地を相続できない可能性がある
長年にわたり相続登記が放置されている不動産には、相続人からみて何代も前の名義で登記されているものが少なくありません。
こういった場合は、代替わりによって相続人がねずみ算式に増えているため、相続登記が煩雑になります。
相続登記がされていないままなので、相続権を持つのは誰か、そして土地の持ち分がどのくらいあるのかを不動産登記簿で確認することができません。
登記されている人の戸籍謄本を辿り、前の相続人を確定したうえで改めて遺産分割協議を行う必要があります。
長い年月で権利が移動している経緯を順に追って登記していかなければならないので、かなりの時間と労力が必要です。
もし被相続人が土地を譲るという遺言を遺していても、調査の過程で遺言と異なる事実が出てきた場合、相続するべき財産を正しく指定できていないとして、遺言が無効にされてしまう可能性もあります。
相続登記は、必ず誰かが行わなければならない手続きです。
登記を怠ることで、自分だけでなく次の世代まで負担をかけることになってしまいます。
相続登記の相談先はどこ?
相続登記は不動産の権利に関する重要な手続きです。
自分で行うことも不可能ではありませんが、見慣れない大量の書類を取り寄せ、細かいルールにのっとって申請を行うのは手間と労力がかかります。
自分で相続登記を行った際に起きやすいのが、登記すべき物件を見落としてしまう「登記漏れ」です。
たとえば、敷地と隣接している私道や集合住宅の共有部分に設定された持ち分など、手続きに慣れていないと見落としてしまう部分が数多くあります。
未登記の不動産をそのままにはできないので、再度登記を行わなければならず、二度手間になってしまうこともあります。
手続きの進め方に少しでも不安を感じる方は、専門家に相談するのがおすすめです。
相続登記の代行は弁護士や司法書士に相談するのが一般的です。
それぞれの得意分野や費用相場について解説しています。
弁護士
弁護士は法律の専門家として、さまざまな法律相談を受け付けています。
相続登記代理業務は司法書士の分野だと思われがちですが、弁護士が代行することも可能です。
また、幅広い分野の法律トラブルに精通しています。
相続人同士で争議が起きていて解決が難しい場合は、併せて弁護士に相談できるのがメリットです。
弁護士に相談する際の費用相場
弁護士に相談する際の相続登記にかかる費用の内訳は、以下の通りです。
- 不動産調査費用
- 戸籍謄本や住民票など必要書類の取得費用
- 登録免許税
- 弁護士への報酬
上の3つは必要経費なので、弁護士に依頼しても自分で手続きしても必ず必要になる費用です。
不動産調査費用と必要書類の取得費用はだいたい1~2万円程度ですが、登録免許税は固定資産税評価額によって異なります。
弁護士への報酬も相続人の数や不動産の状況によって異なりますが、着手金で10~15万円程度が一般的です。
相続人同士の争議など、ほかの依頼も行う場合は報酬が加算されます。
依頼をする前の相談は時間報酬制になっており、初回は30分5,000円からが相場です。
司法書士
司法書士は、不動産登記や法人登記、供託業務といった分野を専門にする「法律事務のプロフェッショナル」です。
相続登記は専門分野なので、幅広い事例を取り扱っています。
相続人が複数いたり、遠方の不動産に関する相続登記を行う場合は、司法書士に依頼するほうがスムーズでしょう。
司法書士に相談する際の費用相場
司法書士に依頼して相続登記を行う場合も、「必要経費+司法書士への報酬」という費用の内訳になります。
相続人の数や不動産の状況にもよりますが、司法書士への報酬は8~12万円程度が一般的です。
相続登記を行っていない場合は早めの相談を!
2024年4月1日から相続登記が義務化され、長年登記が行われていない不動産も相続登記の対象になりました。
手続きを怠ると相続や売却において不利になるだけでなく、10万円以下の過料を科される可能性もあります。
相続登記には必要な書類や申請方法が細かく決められているため、スムーズに手続きを行うにはプロに相談することをおすすめします。
杠(ゆずりは)司法書士法人では、相続登記に関するご相談を随時受け付けております。
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