相続登記の手続きは自分でできる?流れや必要書類、費用感などを解説
相続
投稿日:2024.11.05
相続登記は、不動産を相続する際にその名義を変更する手続きです。
一般的には司法書士に依頼することが多いですが、自分で手続きを行うことも可能です。
しかし、相続登記は何回も経験するものではないため「どのように手続きを進めれば良いか」「費用はどのくらいかかるのか」など、わからないこともあるのではないでしょうか。
この記事では、相続登記の手続きを自分でする際の流れや費用、専門家に依頼すべきケースについて解説します。
【結論】相続登記は自分でもできるが、時間と労力がかかる
相続登記は自分でも可能ですが、手間と時間がかかる作業です。
専門的な知識が必要なため、初心者には難易度が高いといえます。
手続きの流れや必要書類を詳しく理解しておかないと、思わぬミスやトラブルが発生する可能性があります。
相続登記を自分で行うかどうかの判断基準
自分で相続登記の手続きを行うのは難易度が高く、時間と労力がかかります。
しかし、以下のような条件を満たすような内容であれば、自分でもできる可能性が高いです。
- 相続人が少ない(例:配偶者と子供だけ)
- 相続登記手続きに割ける時間的余裕がある
- 相続する財産が少ない
続いては、相続登記を専門家に依頼したほうが良い場合について見ていきましょう。
専門家に依頼すべきなのはこんな場合
相続手続きは複雑で、法律に詳しくない方が自力で行うには困難な場面が多くあります。
専門家に依頼すべき具体的なケースは、以下の通りです。
想定される相続人が多い、相続関係が複雑な可能性がある場合
配偶者と子どもだけの遺産相続に比べ、兄弟姉妹の相続や代襲相続は、相続登記を行ううえで集める書類が多くなりがちです。
また、相続人を特定するには広範な戸籍謄本の取得と詳細な調査が必要なため、専門家に依頼するのが安心です。
相続人同士の仲が悪い場合相続人同士の関係が悪い場合、遺産分割協議が難航し、相続手続きが長期化する可能性があります。
このような状況下では、専門家の介入が不可欠です。
専門家に依頼すれば、感情的な衝突を避けられ、スムーズに手続きを進められます。
不動産の相続登記が想定される場合
不動産を相続した場合、必ず行わなければならないのが相続登記です。
相続登記は、亡くなった方の名義になっている不動産を相続人の名義に変更する手続きです。
不動産の相続登記を専門家に依頼することで、登記の手続きに手間をかけずに済み、速やかに手続きを完了させられます。
また、不動産の評価や必要書類の準備もスムーズに進めることができます。
過去に相続登記していない未登記の不動産を持っている場合
未登記の不動産を相続する場合、通常の相続登記よりも複雑な手続きが必要になることが多くあります。
また、相続登記の際には戦前の旧民法を持ち出さなければならないケースもあるので、専門家に聞いた方が安心です。
さらに、2024年4月から相続登記が義務化されました。
未登記の不動産を持っている場合は3年以内に手続きをする必要があり、期限を過ぎると罰則が科されるため、注意が必要です。
相続登記手続きを行う手間・労力を割けない場合
相続登記の手続きには多くの時間と労力がかかります。
専門家に依頼することで、その負担を軽減できます。
特に、仕事や家庭の都合で時間が取れない場合には、専門家のサポートが有効です。
遠方に相続する不動産がある場合
不動産の相続登記は、その不動産がある地域の法務局で行う必要があります。
住居地と不動産所在地が異なる場合や、手続きに関しての不安や時間的制約がある場合は、司法書士に依頼することで、結果的に時間と費用を抑えられます。
相続する資産が何なのか、全く見当がつかない場合
相続財産が不動産だけの場合、代償分割や換価分割を利用するケースもあります。
遺産分割協議書の書き方を誤ると贈与税が発生するため、自分でやるよりも専門家に依頼するのがおすすめです。
相続登記を自分で行うメリット
相続登記は、専門家である司法書士に依頼するのが一般的ですが、自分で行うこともできます。
最大のメリットは、専門家に支払う報酬を節約できることです。
専門家に支払う報酬の節約
相続登記は、司法書士に依頼すると数万〜十数万円程度かかるのが一般的です。
自分で手続きを行う場合は、この費用を節約できます。
相続登記を自分で行うデメリット
相続登記を自分で行うデメリットとして、以下が挙げられます。
- 時間と労力がかかりすぎる
- 必要な登記手続きの漏れがでやすい
- 手続きの期限を過ぎると後々面倒になる
一つひとつが素人にとってクリアしづらい内容です。
以下からは、こうした相続登記を自分で行ううえでのデメリットについて、詳しく解説します。
時間と労力がかかりすぎる
相続登記の手続きには多くの時間と労力がかかります。
特に初めて行う場合、手順を把握するのに時間がかかり、必要な書類をそろえるのも大変です。
なかでも、戸籍謄本や住民票などの書類を収集する作業は、手間がかかります。
必要な登記手続きの漏れがでやすい
相続登記には多くの手続きを伴います。
手続きを誤ると、後々の修正が必要になり、さらに手間がかかります。
必要な書類をそろえたり、正確な情報を記載することが求められるため、初心者には難しい作業です。
手続きの期限を過ぎると後々面倒になる
相続登記は、3年以内に手続きを行わなければなりません。
この期限を過ぎると、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
特に、2024年4月から相続登記が義務化されたため、期限内に手続きを完了させることが重要です。
相続登記を自分でやる場合の流れ
相続登記を自分で行う場合は、以下の手順で進めるのが一般的です。
- 相続する財産の調査・特定
- 相続人の調査、戸籍の収集
- 必要書類の収集・作成
- 遺産分割協議書の作成(遺言がない場合)
- 登記申請書の作成
- 法務局への申請
- 登記識別情報通知の受領(完了)
続いて、相続登記の手順をステップごとに細かく見ていきましょう。
STEP1:相続する財産の調査・特定
まずは、相続する財産を調査し、特定します。
相続財産としては、以下が挙げられます。
相続財産 | 具体的な財産 |
---|---|
不動産 | 家、アパート、マンション、土地など |
預貯金 | 現金、銀行口座、証券口座など |
投資資産 | 株式、債券、投資信託など |
動産 | 家具、家電、車、貴金属、美術品など |
事業財産 | 会社の株式、営業権など |
負債 | ローン、借金、未払いの税金など |
こうした財産を正確に把握するためには、被相続人の財産目録を作成することが重要です。
財産目録には、各財産の詳細や評価額を記載し、相続人全員で確認します。
そのため、相続人の範囲も確認しておくことが大切です。
配偶者は常に相続人となりますが、血縁者には相続の順番が定められています。
第1順位は子ども、第2順位は親、第3順位は兄弟や姉妹です。
こうした情報をもとに、相続する財産と相続人の確認を行う必要があります。
STEP2:相続人の調査、戸籍の収集
次のステップは、相続人の調査と戸籍の収集です。
被相続人の戸籍謄本や住民票、相続人全員の戸籍謄本や住民票を取得し、法定相続人を確定させます。
相続人が多い場合や親族関係が複雑な場合は、膨大な量の書類を収集する必要があるため、相続手続きのなかでも特に時間と手間がかかります。
STEP3:必要書類の収集・作成
相続登記を行うためには、以下の書類が必要です。
必要書類は、法定相続・遺産分割・遺言の各ケースで異なります。
<画像>
※事例によっては上記以外の書類が必要になることもあります。
この表を参考に、必要書類を正確に収集することが重要です。
書類の収集には時間がかかるため、早めの準備を心がけましょう。
法定相続分どおりに行う相続登記
法定相続分に基づく相続は、民法で定められた割合に従って相続財産を分割します。
具体的には、以下のような割合で分割されます。
<画像>
たとえば、被相続人の財産が1億円で、配偶者と2人の子どもが相続人である場合は、配偶者が半分(5,000万円)、子どもはそれぞれ4分の1(2,500万円)ずつを相続することになります。
この方法は、相続人全員が法定相続分に従うことに同意している場合に適用されます。
もし、誰かがこの割合に納得できない場合は、遺産分割協議という手続きが必要です。
法定相続分に基づく相続登記は、相続人全員が協力できる場合に適しており、手続きが比較的簡単なことがメリットです。
遺産分割をして行う相続登記
亡くなった方の財産を相続人全員で話し合って分けることを遺産分割といいます。
この話し合いの結果をまとめたのが遺産分割協議書です。
全員の署名・押印が必要で、この協議書に基づいて相続登記を行います。
遺言に従って行う相続登記
遺言書がある場合、その内容に従って相続財産を分割します。
遺言書の内容が法的に有効であることを確認し、遺言執行者が手続きを進めます。
STEP4:遺産分割協議書の作成(遺言がない場合)
遺言書がない場合、相続について確定するには遺産分割協議が必要です。
そのためには相続人が誰かを確定し、被相続人の財産全体を把握しなければなりません。
そのうえで遺産分割協議書を作成し、相続人全員が合意した内容を記載します。
STEP5:登記申請書の作成
登記申請書を作成し、必要な情報を正確に記載します。
登記申請書には、相続人の情報や相続財産の詳細を記載し、必要な添付書類をそろえましょう。
申請書の内容が正確であることを確認し、誤りがないように注意が必要です。
STEP6:法務局への申請
法務局に登記申請書を提出し、相続登記の手続きを進めます。
法務局では、提出された書類の内容を確認し、手続きが適正に行われているかを審査します。
書類に不備がある場合は、修正を求められることがあるため覚えておきましょう。
STEP7:登記識別情報通知の受領(完了)
登記識別情報通知を受領すれば、相続登記が完了します。
登記識別情報通知は、相続登記が完了したことを証明する書類であり、今後の不動産取引に必要です。
通知を受け取ったら、大切に保管してください。
相続登記を自分でやる場合にかかる費用
相続登記には、必要書類の取得費用や登記申請時の登録免許税などの費用がかかります。
各書類の取得費用は、以下の通りです。
自治体によっても費用が異なることがあるため気をつけてください。
- 被相続人の戸籍謄本:450円~750円
- 被相続人の住民票の除票:300円
- 法定相続人の戸籍謄本:450円
- 法定相続人の住民票:300円
- 法定相続人の印鑑証明書:300円
- 固定資産評価証明書:300円
- 収入印紙:登録免許税の税額による
また、登記申請にかかる登録免許税は、不動産の評価額に応じて計算されます。
登録免許税は、不動産の評価額の0.4%が基本ですが、特例や控除が適用される場合もあります。
申請前に確認しておきましょう。
相続登記を自分で行う際の注意点
相続登記は個々の事案に応じて、必要な書類や登録免許税、申請書の内容などが異なります。
また、免税・減税措置は申請する側が申し出ないと受けることはできません。
そのため、登記に関する事前知識がないと、相続登記を自身で進めるのは難しいです。
こうした相続登記を自分で行う際の注意点について、詳しく見ていきましょう。
【罰則あり】不動産の相続登記が2024年4月1日から義務化
2024年4月1日以降は、相続登記をしないまま3年以上放置すると罰則が科せられるおそれがあります。
具体的には「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に手続きを完了しないと、10万円以下の過料が科せられることになります。
そのため、期限内に確実に手続きを完了させることが重要です。
相続登記を放置すると余計に手続きが複雑化
相続登記を放置すると、時間が経つにつれて手続きが複雑になり、修正が困難になることがあります。
相続人が増える可能性や相続財産の状況が変わることも考えられるため、早めに手続きを進めるのがおすすめです。
財産の見落とし、把握漏れ
相続財産を見落としたり、把握漏れがあったりすると、後々の手続きが大変になります。
全ての相続財産を正確に把握し、遺産分割協議書に記載することが重要です。
負の財産の把握漏れ
相続財産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産である「負の財産」も含まれます。
借金や未払金などが代表的な例です。
負の財産を把握しないまま相続すると、相続後に予期せぬ負担が発生する可能性があります。
相続する前に全ての負債を確認し、必要に応じて相続放棄を検討しましょう。
相続放棄は全部の財産が対象(一部のみ放棄は難しい)
相続放棄をする場合、全ての財産が対象となります。
特定の財産だけを放棄することは原則としてできません。
たとえば、「預金だけを受け取り、借金は放棄したい」というような申請は認められないケースがほとんどです。
特定の財産のみを放棄することはできないため、慎重に判断してください。
相続登記は自分で無理に行わず、司法書士に依頼するのがおすすめ!
この記事では、相続登記の手続きを自分でする際の流れや費用、専門家に依頼すべきケースについて解説しました。
相続登記は想像以上に手間と時間がかかるため、無理に自分で行わず、司法書士に依頼するのがおすすめです。
専門家に依頼することで、手続きを迅速かつ正確に進めることができ、安心して相続を進めることができます。
司法書士は相続登記のプロフェッショナルであり、複雑な手続きや書類作成を代行します。
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