土地の相続手続きを自分で行う方法|手順や費用、自分でできるかの判断基準を紹介
投稿日:2024.12.02
土地の相続が発生したら、必要な手続きを期限内に完了しなければなりません。
これから手続きを始めようとしている方のなかには「自分で手続きを行うことはできるのだろうか」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
土地の相続手続きは、自分で行えるケースと専門家に依頼したほう良いケースがあります。
この記事では、具体的な手順や費用、自分で手続きを進めるかどうかの判断基準について詳しく解説します。
【結論】土地の相続手続きは自分でもできるが、簡単ではない
土地の相続手続きは自分で最後まで行うこともできますが、細かな手続きとかなりの時間が必要です。
申請書の作成や必要書類の準備など、最初から行うとなると並大抵のことではありません。
無理して最後までやり遂げようとすると、「手続きの期限に間に合わない」「ミスをして最初からやり直しになる」などのトラブル発生が想定されます。
本記事には自力で相続登記を行う手順を紹介していますが、無理だと思ったら迷わずに司法書士へ依頼しましょう。
土地の相続登記を自分で行うか・専門家に依頼するかの基準
土地の相続手続きは自分で対応することもできます。
しかし、複雑な手続きが必要なケースも多く、専門家へ依頼した方が良いケースも多いです。
まずは、自分でできる場合と依頼したほうが良い場合の判断基準をしっかりと持ちましょう。
自分で行ってもよい場合
相続手続きを自分で行っても問題のないケースは、次の通りです。
- 相続人が少ない場合
- 時間に余裕がある場合
それぞれのケースについて詳しく解説します。
相続人が少ない場合
相続人の人数に比例して相続手続きは手間がかかり、難解になります。
相続する方が配偶者と子どものみなど相続人が少ない場合、自分で手続きを進めることも可能です。
自力で相続手続きができれば、依頼の際に必要な諸経費を節約できます。
ある程度、相続の知識がある方ならば挑戦してみても良いでしょう。
時間に余裕がある場合
相続の手続きは時間と労力が必要です。
相続する方が配偶者と子どものみの場合ならそれほど時間はかからないかもしれませんが、相続人の関係が複雑になると必要書類の準備だけでもかなりの手間がかかります。
役所へ何度も通うことになるため、平日の昼間に時間が確保できなければ相続手続きを進めるのは難しいです。
自分で手続きを進める場合は、まず時間に余裕があるか、前もって確認しておきましょう。
専門家に依頼するほうがよい場合
一般的に複雑な相続手続きは煩わしい内容が多く、進め方も難しいため、素人の手に負えないケースも多々あります。
次のようなケースでは途中で挫折してしまうケースが多いため、自分で手続きを進めるよりも専門家へ依頼しましょう。
- 相続関係が複雑な場合
- 相続人同士の仲が悪い場合
- 法務局が遠方にある場合
- 迅速かつ正確に登記したい場合
- 必要書類の一部を入手できない場合
- 過去に相続登記していない未登記の不動産を持っている場合
それぞれのケースについて、詳細を説明します。
相続関係が複雑な場合
配偶者と子どものみの相続に比べて、兄弟姉妹の相続や代襲相続は必要書類の数が膨大です。
兄弟姉妹が相続人となる場合に必要な書類は、次の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
- 相続人の現在の戸籍(被相続人の子どもが死亡している場合は子どもの死亡が確認できる戸籍も必要)
- 被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍
- その他推定相続人の中にすでに亡くなっている方がいる場合には、その方の出生から死亡までの連続した戸籍
配偶者と子どもだけの場合は、1と2の書類で事足りますが、兄弟姉妹や代襲相続となると収集の範囲は一気に広がります。
数カ所の役所へ出向く必要も出てくるため、自分でできるのか不安になった場合は、専門家への依頼を考える必要があります。
相続人同士の仲が悪い場合
複数の相続人がいる場合、協力なしでは相続手続きを進められません。
協力がなければ必要書類の分担のお願いどころか、遺産分割協議もままならないでしょう。
協力してくれない相続人がいる場合、第三者に入ってもらって利害関係を説いてもらいつつ協力を仰ぐか、別の方法を模索することになります。
相続人の中に一人でも仲が悪い方がいれば、専門家への依頼を検討したほうが良いでしょう。
法務局が遠方にある場合
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請しなければいけません。
たとえば、北海道の札幌にある実家の相続登記を東京で生活している相続人が申請する場合、東京法務局でなく札幌法務局へ申請する必要があります。
相続登記はオンライン手続きができるものの、一般の方の手続きは持ち込みか郵送のケースがほとんどです。
必要書類を1回で完璧に揃えられることは少ないため、法務局とは何度かやりとりをすることになるでしょう。
遠方に法務局がある場合、例外なく司法書士へ依頼したほうが安心です。
迅速かつ正確に登記したい場合
相続税は、基本的に故人が亡くなってから10ヶ月以内に納税しなければいけません。
相続税の納税期限が迫っており、相続した不動産を売却したり、担保にしたりする必要がある場合は、迅速かつ正確な手続きが求められます。
不動産の売買や担保権設定を控えている場合、相続登記の間違いや遅れの影響が大きくなるため、司法書士へ依頼したほうが良いでしょう。
必要書類の一部を入手できない場合
相続手続きには戸籍の附票の提出を求められることがありますが、附票は永久保存ではないため、すでに捨てられているケースもあります。
戸籍の附票がない場合、不動産の登記済証や登記識別情報通知の写しなど、さらに多くの書類提出が必要です。
書類確認のために法務局とのすり合わせも必要になります。
手続きが複雑になるため、必要書類の収集に迷った際には専門家へ相談しましょう。
過去に相続登記していない未登記の土地を持っている場合
現在では相続登記は義務化されていますが、以前は相続登記が任意だったため、未登記の不動産は数多く存在します。
「親の相続登記をしようとしたらずいぶん昔に他界した祖父の名前のままだった」というケースもよくあります。
このようなケースでは、祖父から父、父から子どもという2つの相続登記の申請が必要です。
世代をまたぐ相続登記のことを「数次相続」と呼びます。
父に兄弟姉妹がいる場合は手続きに協力してもらわなければいけません。
未登記の土地を相続する場合、手続きのハードルは一気に上がります。
土地の相続登記を自分で行うメリット
土地の相続手続きを自分で行う最大のメリットは費用の節約です。
相続費用の節約について詳細を説明します。
費用を安く抑えられる
相続登記には主に次の3つの費用がかかります。
- 登録免許税
- 戸籍謄本などの取得費用
- 専門家への報酬
自分で手続きを進めると、3つの費用のうち専門家への報酬を節約できます。
専門家への報酬は平均10万円程度です。
手間がかかっても相続にかかる費用を抑えたい方にとっては大きなメリットです。
土地の相続登記を自分で行うデメリット
自分で相続手続きを進めると費用を抑えることはできますが、デメリットもあります。
想定されるデメリットは、次の通りです。
- 時間と手間がかかる
- 登記漏れのリスクがある
それぞれ解説します。
時間と手間がかかる
相続手続きには膨大な時間と労力が必要です。
いつ終わるとも知れぬ相続手続きを延々と続けていくのは大きなデメリットとなるでしょう。
必要書類を揃えつつ、申請書の書き方まで確認しながらルールに則って手続きを進めなければいけません。
時間をかけて手続きを進めたものの、間違いが見つかってやり直しとなってしまうと気力が持たないことも考えられます。
登記漏れのリスクがある
登記漏れとは、登記すべき物件を見逃してしまうことをいいます。
登記漏れでよくあるケースは、私道の認識です。
建物と土地の相続の場合、建物とその敷地以外のセットバック部分の私道に持分をもっていることがあります。
私道の持分は、被相続人も忘れているケースが多いです。
物件の特定は相続人が行う必要があるため、物件そのものをしっかり把握していないと相続漏れが発生してしまいます。
「やっと手続きが終わったと思ったら登記漏れでやり直し」となってしまうと目も当てられません。
登記漏れは自分で手続きを行ううえでの最大のデメリットといっても過言ではないでしょう。
土地の相続登記を自分で行う手順
実際に土地の相続登記を自分で行う場合は、どのような手順で進めていくのか気になる方も多いのではないでしょうか。
相続登記を自分で行う場合の大きな流れを6つのステップに分けて説明します。
STEP1:相続物件を特定する
まずは、相続登記の対象となる物件の特定から始めます。
対象となる不動産を確認するには、固定資産税の納税通知書が必要です。
固定資産税の課税明細書を確認すると、被相続人がどんな不動産を所有しているのか、一目で分かります。
手元に課税明細書がない場合、各市区町村で不動産の名寄帳を請求しましょう。
名寄帳を見ると個人が所有している不動産の明細一覧を確認できます。
STEP2:相続人を確定し、必要な書類を収集する
次に、誰が相続するのかを確定し、必要な書類を収集します。
相続登記には大きく分けると、以下の3つの種類があります。
- 法定相続による相続登記
- 遺産分割による相続登記
- 遺言による相続登記
さまざまな添付書類が必要ですが、場合によって必要書類が異なることもよく確認しておきましょう。
土地の相続登記を自分で行う場合の書類一覧
3つのケースで必要とされる書類を一覧表にまとめてみました。
法定相続の場合 | 遺産分割の場合 | 遺言書ありの場合 | |
---|---|---|---|
故人の戸籍謄本 | 出廷から死亡までの戸籍謄本が必要 | 出廷から死亡までの戸籍謄本が必要 | 死亡時の戸籍のみで良い場合がある |
故人の住民票の除票 | 必要 | 必要 | 必要 |
相続人の戸籍謄本 | 必要 | 必要 | 不動産を取得した相続人だけ必要 |
相続人の住民票 | 必要 | 不動産を取得した相続人だけ必要 | 不動産を取得した相続人だけ必要 |
相続人の印鑑証明書 | 不要 | 必要 | 不要 |
固定資産税の評価証明書 | 必要 | 必要 | 必要 |
遺言書 | 不要 | 不要 | 必要 |
遺産分割協議書 | 不要 | 必要 | 不要 |
STEP3:遺産分割協議書の作成(遺言がない場合)
遺言書がない場合は、相続を確定させるための遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議のためには相続人を特定して、被相続人の財産全てを確保しなければいけません。
遺産分割協議で誰がどの程度の財産を相続するのかを決めたあとに、合意内容を証明する書類の分割協議書を作成します。
そのあとの財産分配は、遺産分割協議に沿って行われることになります。
STEP4:申請書に必要事項を記入する
必要書類がすべて揃った時点で申請書の作成に移ります。
申請書は定められたルールに沿って過不足なく記入しなければいけません。
法務省のサイトにて申請様式や記載例を確認できますので、チェックしながら進めましょう。
不備があると修正手続きを求められたり、最初からやり直しとなったりする場合もあります。
STEP5:法務局に申請する
登記を完了させるには、直接法務局へ出向くか、郵送またはオンラインで手続きを進めます。
インターネットを使って申請データを送信するオンライン申請は、電子署名や電子証明書が必要です。
そのため、自分で相続登記を行う場合、窓口申請か郵送申請のいずれかを選択することになるでしょう。
わざわざ法務局へ行きたくない場合は、郵送がおすすめです。
郵送を選ぶ場合、書留か赤色レターパックを選びましょう。
STEP6:登記識別情報通知を受け取る
申請書または必要書類に不備がなければ、申請から1〜2週間で登記が完了します。
登記完了後は、登記識別情報通知が交付されるので大切に保管しておきましょう。
登記簿謄本で名義変更が完了していることを確認できれば相続登記の手続きは終わりです。
土地の相続登記の際に必要な書類の費用
必要書類の取得費用について、一覧表にまとめました。
書類 | 取得費用 |
---|---|
被相続人の戸籍謄本 | 450円~750円 |
被相続人の住民票の除票 | 300円 |
法定相続人の戸籍謄本 | 450円 |
法定相続人の住民票 | 300円 |
法定相続人の印鑑証明書 | 300円 |
固定資産評価証明書 | 300円 |
収入印紙 | 登録免許税の税額によって異なる |
相続登記において、必要書類は複数枚必要です。
一般的な相続の場合でも5~10通程度必要になります。
書類の取得費用もそれなりにかかることを認識しておきましょう。
土地の相続登記が2024年4月から義務化
土地の相続登記は2024年4月から義務化されました。
自分が相続人であることを知ってから3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の罰金が科されます。
罰金の適用は、法律の施行以前に発生していた相続にも遡って適用されます。
申告は2027年3月末まで猶予期間が設けられていますが、正当な理由なく申請をしない場合、過去の相続分も罰金の対象です。
土地の相続登記の専門家は司法書士
司法書士は不動産の相続登記を業務として代行できる専門家です。
弁護士も相続登記を業務として代行できますが、相続登記だけの依頼を受けているケースは少ないです。
不備なく確実に手続きを進めたい場合や、できるだけ早く手続きを片付けたい場合は、登記の専門家である司法書士へ依頼しましょう。
土地の相続登記の相談なら杠(ゆずりは)司法書士法人
相続登記を自分で行うと報酬費用を節約できるメリットがあるものの、手続きや必要書類を揃える多くの手間や時間が必要です。
複雑な相続は素人では対応できないと考えておいたほうが良いでしょう。
相続する方が配偶者と子どものみなど人数が少ない場合、自分でも対応できるかもしれませんが、相続人が多い場合は素直に司法書士へ依頼したほうが最良の結果が得られる可能性が高いです。
杠(ゆずりは)司法書士法人ではお客様にとってのよりどころとして存在し続けるために、豊かなコミュニケーションを背景にプロフェッショナルとしての解決力を提供しています。
土地の相続手続きにお困りの方は、ぜひご相談ください。
本記事に関する連絡先
フリーダイヤル:0120-744-743
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