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遺言書の検認とは?流れや必要書類、注意点を解説

遺言

投稿日:2025.05.28

遺言者本人が直筆で作成した自筆証書遺言や秘密証書遺言は、家庭裁判所で開封して内容を確認する「検認」という手続きが必要です。

遺言書を勝手に開けてはいけないことは知っているものの、「どのように手続きすれば良いのか分からない」とお困りの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、遺言書の検認を行う流れや必要書類、注意しなければならない点について解説します。

記事監修
杠(ゆずりは)司法書士法人

大阪・兵庫・京都・東京を拠点に、相続手続き・遺言書作成・家族信託契約などのサポートから企業法務まで、専門のチームで対応しております。税理士や他業種との連携により、相続問題をワンストップで解決!相続関連の相談件数は年間400件超。

検認が必要な遺言書の種類

遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類があります。

そのなかで検認が必要なのは自宅などで保管されていた自筆証書遺言と、秘密証書遺言の二種類です。

公証役場で作成・保管される公正証書遺言と、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は、公的機関がすでに内容を確認しているため、検認は必要ありません。

一方、公証役場で認証を受けた遺言でも、秘密証書遺言は家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

遺言の種類 検認の必要性
自筆証書遺言(自宅保管) 必要
自筆証書遺言(法務局保管) 不要 ※2020年7月〜、法務局の制度利用が前提
秘密証書遺言 必要
公正証書遺言 不要

なぜ検認が必要なの?目的や意味は?

遺言書の検認を行う主な目的として、以下のようなものが挙げられます。

・相続人に遺言の存在を知らせる

・遺言書の現状を明らかにし、偽造や変造を防ぐ

検認では遺言書が見つかった日時や状態、内容を家庭裁判所が確認し、詳細に記録します。

遺言書の現状を明文化して残すことで、その後の偽造や変造を未然に防止するのは大きな意義といえるでしょう。

また、遺言書の検認が申し立てられると、家庭裁判所は相続人全員に検認期日を知らせる通知を送ります。

これによって、相続人全員が遺言書の存在を知ることができるのです。

ただし、遺言書の検認は、遺言書の現状を確認して内容を記録するためのもので、遺言書の有効・無効を決めるものではありません。

検認手続きが完了したからといって、遺言書の有効性が担保されたわけではないという点に注意しましょう。

遺言書の検認手続きは誰が行うのか?

自宅などから自筆証書遺言を発見した際は、開封せずに家庭裁判所による検認を受けなければなりません。

遺言書を家庭裁判所に提出して、検認を受ける義務がある方について、民法では以下のように定められています。

(遺言書の検認)

第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。

引用元:民法1004条

つまり、検認手続きを行わなければならないのは「遺言書の保管者」もしくは「相続人」ということになります。

遺言書の検認手続きの流れ

遺言書の検認手続きは以下のような流れで行います。

  • 遺言書の存在を確認する
  • 必要書類を収集する
  • 家庭裁判所に検認の申し立てを行う
  • 検認を行う
  • 検認済証明書の発行

ここでは、それぞれの流れを詳しく解説していきます。

Step1:遺言書の存在を確認する

遺言書の存在を確認する方法は、遺言書の種類によって異なります。

自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、遺言者が任意の場所に保管しているため、自分たちで捜索する必要があります。

たとえば自宅の引き出しや手持ち金庫、神棚など思い当たる場所を探してみましょう。

法務局で保管されている遺言書と公正証書遺言の場合は、それぞれの公的機関で手続きを行う必要があります。

遺言書の有無を確認するのは、検認手続きの第一歩です。

自宅保管、公的機関での保管、その他の場合など考えられる可能性をすべて捜索することをおすすめします。

Step2:必要書類を収集する

遺言書の存在が確認できたら、検認の申し立てに必要な書類の収集を開始します。

基本的には遺言者(亡くなった人)と相続人全員の戸籍謄本を集めることになりますが、相続のパターンによっては必要書類が増える可能性があります。

戸籍謄本は相続手続きでも必要なので、早めに収集に取り掛かることが大切です。

検認申立書の書き方・添付書類

遺言書の検認の申し立てで必要な書類は、以下の表の通りです。

書類 詳細
共通で必要な書類 ・遺言書の検認申立書
・遺言者(亡くなった人)の出生から死亡まですべて記載された戸籍謄本(全部事項証明)
・相続人全員の戸籍謄本
・遺言者の子(及びその代襲者)で亡くなった人がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続人が配偶者と父母・祖父母(第二順位相続人)の場合に必要な書類 ・遺言者の直系尊属(父母・祖父母)で亡くなった人がいる場合、死亡の事実が記載された戸籍謄本(除籍謄本・改正原戸籍)
相続人が存在しない。もしくは相続人が配偶者のみ、配偶者と兄弟姉妹(もしくは代襲者)の場合に必要な書類 ・遺言者の兄弟姉妹で亡くなった人がいる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・代襲者としての甥姪で亡くなった人がいる場合,その甥又は姪の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

申し立ての時点で不足している書類がある場合、後から追加提出することも可能です。

疎遠になっている相続人の戸籍謄本の入手に時間がかかる時は、先に手続きを進めておくのもひとつの方法です。

検認申立書の書式と記入例は、裁判所のウェブサイトからダウンロードすることができます。

記入項目はさほど多くないので、記入例を参考にして自分で作成するのも難しくないでしょう。

Step3:家庭裁判所に検認の申し立てを行う

必要書類と検認申立書を用意したら、家庭裁判所に対して申し立てを行います。

申し立てを行うのは「遺言者の最終の住所地」を管轄する家庭裁判所です。

戸籍に記載されている本籍地ではない点に注意しましょう。

申し立てに必要な費用は、遺言者1通につき収入印紙800円分です。

くわえて、「予納切手」と呼ばれる連絡用の郵便切手を用意する必要があります。

予納切手とは、裁判所が相続人へ通知を送るために必要な郵便切手で、申立人が事前に納めるものです。

一般的には「110円切手×相続人の人数+数枚」となっていますが、家庭裁判所によって必要枚数が若干異なります。

申し立てが受理されると、家庭裁判所から相続人全員に検認期日を知らせる「期日通知書」という書類が送られてきます。

相続のパターンなどによって多少の差はありますが、申し立てから約1カ月程度で通知書が送られてくるケースが多いようです。

Step4:検認を行う

遺言書の検認日時は相続人全員に通知されますが、必ずしも全員が出席する必要はありません。

検認の際は、遺言書原本や印鑑、本人確認書類など持参しなければならないものがあります。

通知書に記載されている持ち物をよく確認して、事前に準備しておきましょう。

検認当日の流れ

検認当日は、以下の表のような流れで進みます。

流れ 詳細
1:開廷 遺言書の原本を書記官に渡し、裁判官から本日の検認の趣旨について説明を受ける
2:遺言書の封がされていれば、裁判官が開封 書記官から裁判官に遺言書が手渡され、その場で開封される
3:内容を確認し、形式的なチェック 遺言書の日付や署名、押印など遺言書としての体裁が揃っているか、チェックを受ける
4:相続人にその場で内容を読み上げて周知 遺言書の筆跡や押印などについて質問されることもあるが、基本的には簡単な内容の確認のみ
5:終了 全て終了するまで、所要時間は30分から1時間程度

検認に欠席した相続人には、後日「検認済通知」と呼ばれる書類が裁判所から届きます。

Step5:検認済証明書の発行

検認が終わったら、検認済証明書を申請します。

検認済証明書は、遺言書1通につき150円分の収入印紙が必要です。

検認済証明書の使い方の具体例

検認済証明書は相続手続きにおいて、重要な書類です。

具体的には、以下のような場面で必要とされます。

検認済証明書の使用場面 利用方法
不動産の相続登記 登記申請書に添付して法務局へ提出
※登記の場合、「遺言書原本」+「検認済証明書」が一般的なセット。
銀行口座の解約・名義変更 金融機関に提出し、遺言の効力を証明
株式や投資信託の相続手続き 証券会社へ提出して名義変更を依頼

遺言書の検認で注意したいポイント

検認手続きには法律上の申立期限は定められていませんが、検認済証明書がなければ不動産の相続登記や銀行の口座解約などが進められないため、できる限り早めに着手することが実務上の基本です。

手続きが遅れると、他の相続人との信頼関係に影響するケースもあります。

遺言書の検認を行ううえでは、以下のような点に注意が必要です。

  • 相続放棄や相続税の支払い期限に注意する
  • 相続人全員に検認があることを周知しておく
  • 検認は遺言書の効力を証明するものではない
  • 検認前に開封してしまった場合でも、検認手続きは必要
  • 遺言執行者が指定されている場合、執行者が手続きを主導する

ここでは、それぞれの項目について詳しく解説していきます。

相続放棄や相続税の支払い期限に注意する

相続手続きのなかには、期限が定められているものも少なくありません。

相続放棄の場合は「被相続人の死亡したことを知った日の翌日から3か月以内」、相続税の支払期限は「被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」となっています。

遺言書の検認には申し立てから検認当日まで、1か月ほど必要です。

相続のパターンによっては必要な書類が多くなるので、それ以上かかるケースも珍しくありません。

それぞれの手続きの期限を常に意識して、早めに行動を開始することをおすすめします。

相続人の戸籍と住民票の収集に時間がかかるので、あらかじめやっておくのがおすすめ!

遺言書の検認には、相続人全員の戸籍謄本と遺言者(亡くなった人)の戸籍謄本(全部事項証明書)が必要です。

死亡の記載がある戸籍謄本を取得するには、死亡届を提出してから1~2週間かかります。

また、疎遠になっている相続人に戸籍謄本の取得を依頼するには、ある程度時間の余裕をもって話し合うことも大切です。

書類収集に時間がかかりそうなときは、先に検認申し立ての手続きを進めておいて、あとから追加提出することも認められています。

できるだけ早く検認を終えられるよう、書類収集は早めに取り掛かりましょう。

相続人全員に検認があることを周知しておく

遺言書の検認は、相続人全員が出席する必要はありません。

ただし、検認に出席しない相続人のもとにも、検認に関する通知が家庭裁判所から送られます。

「相続には関与しないから」と戸籍謄本だけを預けられているようなケースでも、急に検認通知が送られてくると困惑してしまうことも。

遺言や相続は、ちょっとしたきっかけで感情の対立が起きやすいものです。

検認の申し立てをする際は、相続人全員に検認があることや簡単な流れを周知しておくことをおすすめします。

検認は遺言書の効力を証明するものではない

検認手続は、あくまで遺言書の状態や内容を確認する手続きです。

検認手続きが完了した=その遺言書が有効であると認められたという意味ではありません。

遺言書の作成状況や内容によって、後から無効になる可能性も充分にあるという点に留意しましょう。

検認前に開封してしまった場合でも、検認手続きは必要

封印のある自筆証書遺言や秘密証書遺言を裁判所以外で開封することは法律で禁じられています。

これは遺言書の隠匿や改ざん、変造といった悪質なケースを想定したもので、違反すると5万円以下の過料が科される可能性も。

ただし、誤って開封してしまった場合でも遺言書の効力は失われませんし、検認手続きが必要なことには変わりありません。

検認申立書に封の有無を記載する欄があるので、誤って開封してしまった際は、その旨を正直に記載しておきましょう。

遺言執行者が指定されている場合、執行者が手続きを主導する

遺言書には財産の分割などとともに、遺言執行者が指定されていることがあります。

遺言執行者は遺言の内容を実現するための実務を主導する立場で、基本的に誰でも選任することが可能です。

遺言書に遺言執行者が指定されている場合は、その後の相続にともなう実務は遺言執行者が中心になって行うことになります。

遺言書の検認は相続手続きに不可欠

自筆証書遺言や秘密証書遺言に基づいて相続を行う場合、遺言書の検認は最も優先して行うべき手続きのひとつです。

預貯金の解約や相続登記、証券口座の名義変更など、相続におけるさまざまな場面で検認済証明書の提出が求められることがあります。

特に相続登記では必須となりますが、金融機関によってはその他の書類で代替できる場合もあります。

なお、杠(ゆずりは)司法書士法人では、預貯金の解約もサポートしているため、ぜひお気軽にご相談ください。

検認を経ずに遺言書を開封すると過料が課せられる場合も罪に問われる可能性も

遺言書は、民法によって検認を受けることが義務付けられています。

「封印のある自筆証書遺言や秘密証書遺言を家庭裁判所の検認を受けずに開封した場合、『5万円以下の過料に処する』」と民法1005条で定められています。

(過料)

第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

引用元:民法1005条

ただし、開封してしまったとしても、遺言書自体の効力は失われるわけではなく、速やかに検認申立を行うことで手続きは継続できます。

相続全般のサポートなら杠(ゆずりは)司法書士法人におまかせください

相続や遺言に関する用語には聞き慣れないものも多く、自分たちだけで手続きを進めるのは難しい面もあります。

杠(ゆずりは)司法書士法人は「相続に強い専門家集団」として、年間600件以上のご相談に対応してきました。

「あとに遺される人たちに負担がかからない遺言書を作成したい」「財産整理を含めて総合的なアドバイスがほしい」などのご要望に、法律の専門家として親身にお応えいたします。

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