突然、「会社法違反事件」と書かれた過料決定通知が届いたら
企業法務
|更新日:2022.10.6
投稿日:2021.09.29
1.過料が科される場合
役員の選任など登記すべき事項に変更が生じたにも関わらず登記を行っていなかった場合(登記懈怠)や、役員の任期が到来しているにも関わらず役員の改選の手続を行っていないような場合(選任懈怠)には、会社法違反として100万円以下の過料が科される場合があります。
この過料は、役員としての任務を怠ったことに科されるものであり、会社ではなく役員個人に科されます。そのため、過料決が科されるような事情がある場合には、過料の通知が裁判所から会社の代表者の自宅に郵送で届きます。突然、「会社法違反事件」と記載された、過料決定通知が届き驚かれる方もいらっしゃるかと思います。なお、「過料」とは行政罰であり、刑事罰である「科料」や「罰金」と異なるため、前科はつきません。
登記懈怠による過料は、登記の期限を過ぎた登記申請を行うことがきっかけで科されることが大半です。また、選任懈怠よる過料は、法務局による休眠会社の調査をきっかけに科されることが多いようです。登記懈怠や選任懈怠を法務局が把握した場合には、まず法務局から裁判所に対して通知が行われ、それを受けた裁判所は懈怠の期間等に応じて過料の金額を決定のうえ、代表者の自宅に過料決定の通知を発送します。なお、懈怠の期間が長い程、過料の金額は高額になると言われています。
2.過料に異議が認められる場合がある?
法務局や裁判所は、形式的な登記簿等の内容から過料を科すかの判断をしているため、必ずしもその判断が正しいとは限りません。そこで、この過料の決定に関しては異議の申し立てを行うことができます。例えば、次のような場合があります。
(1)選任や登記を「懈怠」していない場合。
(例)会社の役員の任期は到来していたが、株主間に対立が生じており、株主総会を開催することができなかったため、役員の改選が行うことができなかった。 |
選任懈怠や登記懈怠による過料はあくまで「懈怠」(怠った)場合に科されるものであり、上記事例のように役員の選任を行いたくても行えなかったような場合には、選任懈怠とはなりません。
裁判所は、過料決定の通知を行うにあたって、役員の選任を行うことができなかった事情等を把握していない場合もあり、このような場合には、異議を申し立てることで過料そのものを支払わなくてもよくなることもあります。
(2)選任や登記を懈怠しているが、裁判所が判断した事実が誤っている場合
(例)会社の役員の任期は、平成30年までであり、役員の改選を怠っていた。 裁判所からの過料の決定の通知がきたが、裁判所は役員の任期を平成22年までと判断して過料の決定を行っていた。 |
上記の事例の場合は、役員の選任の懈怠はしているため、過料は科されることになります。一方で、選任を懈怠した期間については、裁判所が誤って8年長く判断してしまっています。
この場合、懈怠の期間が長い程、過料の金額は高額になるため、異議を申し立てることで過料の金額が減額される可能性があります。
本事例の場合は、異議を申し立てることによって過料の金額は10万円から4万円に減額されました。
なお、異議の申し立ては、記載した事例のような理由がある場合には認められますが、単に「手続きしなければならないことを知らなかった。」、「うっかり手続きを忘れていた。」、「依頼していた司法書士等のミスで遅れてしまった。」というような場合には認められません。
3.異議の申立てには期限がある
過料の決定への異議の申立ては、過料決定を受け取った日から1週間以内に行う必要があります。迅速な対応を行う必要があることに加えて、過料決定の通知の内容を読んでも裁判所の判断が正しいかの判断を行うことは困難かもしれません。
突然、過料決定の通知を受け取られた場合には、司法書士等専門家にご相談下さい。
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