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遺言書の書き方をわかりやすく解説|作成のポイントや注意点、見本も紹介

遺言

投稿日:2025.03.25

「遺言書を作成したい」と思っていても、正しい書き方が分からず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

遺言書は、相続人に自分の意思を伝える大切な書類です。

しかし、書き方を誤ると無効になる可能性があるため、遺言書は正しい書き方を理解し、適切に作成することが重要です。

この記事では、遺言書を作成する際に守るべき要件やポイント、注意点について詳しく解説します。

記事監修
杠(ゆずりは)司法書士法人

大阪・兵庫・京都・東京を拠点に、相続手続き・遺言書作成・家族信託契約などのサポートから企業法務まで、専門のチームで対応しております。税理士や他業種との連携により、相続問題をワンストップで解決!相続関連の相談件数は年間400件超。

自筆証書遺言の要件とは

自分で手書きして作成する遺言書は、「自筆証書遺言」と呼ばれます。

自筆証書遺言には法的効力をもたせるための要件が定められており、その要件に従わずに書かれた遺言書は無効となります。

自筆証書遺言を有効にする要件は、次のとおりです。

  • 全文を手書きする
  • 作成した日付を記載する
  • 署名をする
  • 押印をする
  • 書き間違えた場合は、ルールに従って訂正する

自筆証書遺言はパソコンでの作成や代筆が認められておらず、全文を手書きしなければなりません。

日付は、「令和◯年◯月◯日」または「2025年◯月◯日」のように正確に書きましょう。

署名は、戸籍上の氏名をフルネームで記載します。

押印は、かすれたりずれたりして、印影が不明瞭にならないように注意してください。

認印でも問題ありませんが、長期間保存しても消えにくい実印と朱肉を使うと良いでしょう。

書き間違えた場合は、次のルールに従って訂正します。

  • 訂正したい箇所に二重線を引いて新しい文言を書き、押印する
  • 余白部分に、どの箇所をどのように訂正したのかを書き、署名をする

ただし、訂正箇所が多くなると内容が分かりにくくなるうえに、法的効力を失うリスクも高くなるため、新しく書き直すのがおすすめです。

自筆証書遺言の書き方の見本

以下に、自筆証書遺言の書き方の見本を示します。

遺言書

遺言者 山田太郎は以下の通り遺言する。

第1条 妻 山田花子(昭和◯年◯月◯日生)に以下の財産を相続させる。

①土地

所在/東京都◯区〜 地番/◯番◯ 地目/宅地 地積/◯平方メートル

②建物

所在/東京都◯区〜 家屋番号/◯番◯ 種類/居宅 構造/木造瓦葺2階建

床面積/1階◯平方メートル、2階◯平方メートル

第2条 長男 山田一郎(昭和◯年◯月◯日生)に以下の遺言者名義の預金を相続させる。

◯銀行 ◯支店 普通預金 口座番号◯

第3条 上記に記載のない財産は全て妻 山田花子に相続させる。

第4条 本遺言書の遺言執行者に長男 山田一郎を指名する。

令和◯年◯月◯日

住所/東京都◯区〜

遺言者 山田太郎 印

遺言書を作成する際に押さえておきたいポイント

遺言書を作成する際には、要件以外にも気をつけたいポイントがあります。

  • 全財産を正確に把握する
  • 相続の内容を明示する
  • 遺言執行者を指定する
  • 財産目録はパソコンで作成しても良い
  • 予備的遺言を記載するとトラブルを回避できる
  • 複数枚に及ぶ場合は契印をする
  • 付言事項を添える
  • 封筒に入れて検認が必要な旨を記載する
  • 自筆証書遺言書保管制度の利用もおすすめ

それぞれ詳しく説明します。

全財産を正確に把握する

誰に何を相続させるかを決めるには、まず自分の財産を正確に把握する必要があります。

財産は預貯金や不動産、有価証券だけでなく、次のようなものも含まれます。

  • 借地権や借家権
  • ゴルフ会員権
  • 著作権
  • 自動車
  • 骨董品
  • 絵画

預貯金通帳、不動産の全部事項証明書、証書や明細書など、財産の詳細が分かる資料も用意すると良いでしょう。

相続の内容を明示する

遺言書は、「誰がどの財産をどれだけ相続するか」といった相続の内容をできるだけ具体的に記載することが重要です。

たとえば、「自宅を長男に相続させる」とだけ書くのではなく、建物の住所や家屋番号、土地の地番なども記載すると、相続の対象が分かりやすくなります。

不動産の登記情報や預貯金の口座番号など、詳細な情報を記載すると、相続人の間での認識のズレやトラブルを防ぎやすくなります。

さらに相続手続きもスムーズに進むでしょう。

遺言執行者を指定する

「遺言執行者」を指定すると、遺言が実現しやすくなります。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する役割を担い、手続きを進める人で、未成年者と破産者以外であれば誰でもなれます。

遺言書による遺言執行者の指定は必須ではありませんが、適切な人物を遺言執行者に選べば相続手続きが滞りなく進むでしょう。

ただし、遺言執行者を相続人から選ぶと、ほかの相続人とトラブルになる可能性があります。

また、相続手続きには法律に関する知識が必要となるため、司法書士などの専門家に依頼するのも方法の一つです。

財産目録はパソコンで作成しても良い

遺言書に添付する「財産目録」は、手書きでなくても問題ありません。

財産目録は、遺言者の資産と負債の内容を一覧にしたものです。

遺言書自体は手書きする必要がありますが、財産目録はパソコンでの作成や代筆、通帳や登記事項証明書のコピーも認められています。

ただし、財産目録の全てのページ(紙の両面に記載がある場合は、その両方)に署名と押印が必要です。

また、財産目録を訂正する際は、遺言書と同じルールに従います。

財産目録の作成は義務ではありませんが、相続の計画を立てる際に役立ちます。

特に、遺言書に財産目録を添付しておくと、相続人がスムーズに相続手続きを進められるため、作成すると良いでしょう。

予備的遺言を記載するとトラブルを回避できる

将来の状況変化に備えて「予備的遺言」を記載しておくと安心です。

予備的遺言とは、相続人が遺言者よりも先に亡くなることを想定して、次の相続人を指定する遺言です。

たとえば、遺言書に「預金1,000万円をAさんに相続させる」と記載していても、Aさんが遺言者より先に亡くなると、遺言書の預金1,000万円に関する部分は無効となります。

この場合、預金1,000万円の相続については遺産分割協議で話し合うことになります。

このような事態を防ぐため、「Aが遺言者と同時、もしくは先に亡くなった場合はBに相続させる」と記載することが予備的遺言です。

遺言書を作成しても、時間が経てば状況は変化するものです。

その都度、遺言書を書き直すこともできますが、遺言者が高齢になると自筆による作成が難しくなる可能性もあります。

そのため、ある程度の状況変化を見越して、予備的遺言を記載するのがおすすめです。

複数枚に及ぶ場合は契印をする

遺言書が複数枚に及ぶ場合、「契印」をすると改ざんを防止できます。

契印とは、ページの継ぎ目に押す印鑑のことです。

書類の連続性を示すものになるため、書類の差し替えや抜け落ちなどを防げます。

契印は遺言書の法的効力に影響を与えないものの、契印があると遺言書の信頼性が高まります。

契印に使用する印鑑に決まりはありませんが、実印を使うことが一般的です。

トラブルを回避するためにも、遺言書には契印をしておきましょう。

付言事項を添える

遺言書には、法的効力をもたない「付言事項」を記載できます。

付言事項を活用すると、家族に自分の気持ちを伝えたり、葬儀や納骨の方法を指定したりすることが可能です。

また、付言事項は遺産の配分について理由を説明したいときにも役立ちます。

特定の相続人に財産を多く相続させる場合、ほかの相続人が不満を抱くかもしれません。

しかし、付言事項としてその理由を記載しておくと、相続人の不満が解消される可能性があります。

付言事項は、100〜200字程度の簡潔な文章にまとめ、遺言書の最後に書くことが一般的です。

封筒に入れて検認が必要な旨を記載する

遺言書を封筒に入れ、検認が必要なことを記載しておくと、トラブルやペナルティを回避できます。

遺言書は封筒に入れなくても法的に有効ですが、封筒に入れて保管することで、紛失や改ざんのリスクを軽減できます。

さらに、遺言書を入れた封筒には、裁判所での検認が必要なことを記載すると良いでしょう。

自筆証書遺言を遺言者自身が保管した場合、原則として家庭裁判所で検認を受けなければ開封できません。

遺言書をもとに銀行口座の名義変更や相続登記などの手続きを行う際にも、検認を完了したことを証明する「検認済証明書」の提出を求められます。

また、検認を受けずに自筆証書遺言を開封すると、違法行為とみなされて5万円以下の過料を科されることがあるため、注意が必要です。

封筒には以下の内容を記載し、押印します。

  • 「遺言書」であることを示す文言
  • 遺言書を作成した日付
  • 遺言者の氏名

加えて、開封せずに家庭裁判所で検認を受ける旨を記載し、封をして割印を押しましょう。

自筆証書遺言書保管制度の利用もおすすめ

遺言書の保管は自分で行うだけでなく、「自筆証書遺言書保管制度」を利用するのも方法の一つです。

自筆証書遺言書保管制度とは、法務局で自筆証書遺言を保管できる制度です。

この制度には、次のようなメリットがあります。

  • 法務局で保管するため、遺言書の紛失や改ざんを防げる
  • 法務局職員による遺言書の外形的な確認を受けられる
  • 遺言者が亡くなった際、事前に指定していた人に遺言書の存在が通知される
  • 開封時の検認が不要になる

この制度を利用するには、指定の形式に従って遺言書を作成する必要があります。

制度の利用にかかる費用は、遺言書1通につき3,900円です。

遺言者の意思を確実に残すために、利用を検討してみましょう。

遺言書を作成する際の注意点

遺言書を作成する際には、以下のような点に注意が必要です。

  • 2人以上の共同遺言は無効になる
  • 録音やビデオレターは無効になる
  • あいまいな文言は使わない
  • 遺留分に配慮する

後にトラブルをまねく可能性もあるため、遺言書の作成前に確認しておきましょう。

2人以上の共同遺言は無効になる

「長年連れ添った配偶者とともに遺言書を作成したい」と考えている方もいるかもしれません。

しかし、夫婦で1通の遺言書を作成しても、その遺言は法的に無効になります。

民法では、2人以上で一緒に作成する「共同遺言」は認められていません。

遺言書に法的効力をもたせるには、夫婦それぞれで1通ずつ、個別に遺言書を作成しましょう。

録音やビデオレターは無効になる

録音や録画による遺言の法的効力は認められていません。

録音やビデオレターは遺言者の気持ちを伝えるために残し、遺言書は別途作成しましょう。

また、手書きが困難で、自筆による遺言書の作成ができない場合は、公正証書遺言を選ぶと良いでしょう。

公正証書遺言は、公証役場にて公証人に作成してもらう遺言書のことです。

遺言書を手書きする必要はありませんが、事前の準備や手続き、遺言書の作成に立ち会う証人の手配などが必要です。

手書きによる遺言書の作成が難しい場合は、利用を検討してください。

あいまいな文言は使わない

遺言書にあいまいな言葉や表現を使用すると、相続人の間で認識にズレが生じて、トラブルが起きるおそれがあります。

たとえば、遺言書に「財産は全てAに任せる」と記載されていた場合、Aが全財産を相続する以外に、財産の相続手続きをAに委ねるとも解釈できます。

ほかにも、「託す」「渡す」「譲る」などの表現もさまざまに解釈できるため、遺言書で使用するのは避けるべきです。

相続人に財産を渡すときは「相続させる」、相続人以外の人に財産を渡すときは「遺贈する」という言葉を使いましょう。

遺留分に配慮する

遺言書では遺言者の意思により、誰に何を相続させるか決められます。

ただし「遺留分」に配慮しなければ、相続人同士のトラブルにつながる可能性があります。

遺留分とは、民法により最低限保証されている遺産の取り分です。

兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分が認められています。

したがって、遺留分に足る遺産を受け取れなかった相続人が「遺留分を侵害された」と主張し、遺留分を請求してトラブルに発展するおそれがあります。

このようなトラブルを避けるため、遺言書を作成する際は、遺留分を侵害しないように財産を分けましょう。

遺言書の書き方に関するよくある質問

ここでは、遺言書の書き方についてよくある質問に回答します。

遺言書の紙や筆記用具に指定はある?

遺言書に使用する紙や筆記用具に、指定はありません。

紙は便せんやレポート用紙、ノートなどでも問題なく、サイズも指定されていません。

ただし、遺言書は長期間保存されるものであるため、劣化しにくい紙を使うと良いでしょう。

また、筆記用具に鉛筆やシャープペンシルを使用すると、文字が消えてしまったり、改ざんされたりする可能性があります。

そのため、油性ボールペンなどの耐久性のあるインクペンを使用するのがおすすめです。

一度作成した遺言書は書き換えられる?

気持ちが変わった、財産の状況や家族構成に変化が生じたなどの理由から、一度作成した遺言書を書き換えたくなることもあるでしょう。

遺言書は一度作ったら二度と作れないわけではなく、作成した遺言書を撤回し、新たに遺言書を作成することは可能です。

この場合、新しい遺言書に「令和◯年◯月◯日に作成した遺言書を撤回する」と記載する必要があります。

また、遺言書を破棄した場合も、遺言書を撤回したものとみなされます。

遺言書の書き方に悩んだら専門家に相談しよう

遺言書には定められた書き方があり、その規定に従わなければ遺言書が無効になってしまいます。

そのため、遺言書の書き方をよく理解してから作成することが大切です。

しかし、自分が作成した遺言書に法的効力があるのか、後にトラブルをまねくような内容になっていないか不安に感じる方は多いでしょう。

遺言書は、専門家に相談しながら作成するのがおすすめです。

杠(ゆずりは)司法書士法人は、相続の専門家として積み重ねた知識と経験を活かし、遺言書の作成を丁寧にサポートいたします。

遺言書を活用して確実に意思を伝えたい方は、杠(ゆずりは)司法書士法人へお気軽にご相談ください。

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