敷引特約をめぐるトラブル
不動産
|更新日:2022.12.15
投稿日:2009.11.13
マンションやアパートを賃貸する際に敷金○万円という言葉をよく目にするかと思います。そして当該賃貸借契約書に「敷金は金○万円を差し引いて返還する」等の敷金から一定の割合ないし金額を控除した残額を返還するという敷引特約が記載されていることがあります。
主に関西で慣例となっている制度です。
当該敷引特約は無効であるため、敷金は契約書で差し引かれた金額よりも多くの金額が返ってくるということを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
敷引特約が無効だとするのは、消費者契約法10条に「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項のうち、民法上の信義誠実原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とする。」と記載されているからです。
一般的に敷引特約の性質は
- 賃貸借契約成立の謝礼
- 賃貸目的物の自然損耗の修繕費用
- 賃貸借契約終了後の空室賃料
- 賃料を定額にすることの代償
の性質を有するとされています。
敷引特約について争われた場合、上記性質に基づき検討した結果、賃借人に敷引を負担させることに至当な理由を見い出すことはできず、敷引特約は借主にとって一方的に不合理な負担を強いているということ、及び賃借人と事業主である賃貸人との交渉力の差により敷引特約を交渉によって排除することは困難であり、敷引特約は「信義誠実原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であるとされ、貸主側が負けてしまい敷引特約は無効とされてきました。
しかし、不動産に関するニュース等でも話題になっていましたが、平成21年9月3日に横浜地方裁判所において、敷引特約の有効性を認め、貸主勝訴の判決が出たとのことです。
当該判決においては、特約が消費者契約法10条の「義務を加重する」ものであるとしたものの、「消費者の利益を一方的に害するもの」ではないとし、その理由としては
- 借主は敷引特約の存在等を明確に認識していた
- 貸主が主張する空室時賃料分を敷引で回収する方法は短期間居住する賃借人にとっては不利でも長期間居住する賃借人にとっては有利であり、賃借人に一方的に不利益をもたらすとは言えない
としたとのこと。
賃貸物件から退去する時もしくはしてもらう時に貸主・借主双方ともトラブルを起こすことは望ましいことではないかと思います。
貸主側としては、ただ敷引特約を定めるのではなく、過去の裁判所の判断等を理解し明確な基準に基づいて特約を定め、しっかりと説明等を行い説明等したことの証拠を残すこと、借主側としては、事前に契約内容の説明をしっかり受け、交渉等行うことがトラブルを防ぐ方法ではないでしょうか。
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