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取得条項付株式の導入と手続きの流れ

企業法務

|更新日:2022.12.1

投稿日:2009.05.28

取得条項付株式「従業員株主におけるリスクへの対策」

自社の株式を従業員に割り当てている会社は少なくありません。従業員にとって、自社の株主となることは、これから自社の業績が伸びると想定できるほど魅力的であり、株価が高くなるほど自身の財産形成に役立つというメリットがあります。

また、従業員のモチベーションの向上にもつながるでしょう。

従業員に株式を与えておくことにはメリットもありますが、一方、従業員株主が会社を退社した後などリスクも生じます。

従業員でなくなれば、関係も疎遠になる場合もあるでしょう。そうすると、会社にとってメリットはなくなり、極端な例でいうと所在や存否もわからない状態となってしまいます。

自社の株主の存否がわからない状態が続き、また、このような例が増えてしまうと、会社にとっての重要な決定を行うこともままならない状況となります。

実際、株主の数が比較的多い中小企業では、株主との関係の希薄化の問題がまま見受けられます。

そこで、このような従業員株主におけるリスクに対しては、種類株式のうち『取得条項付株式』を利用することが有効な予防策となるでしょう。

この『取得条項付株式』とは、予め定めた時が来ると会社がその株式を持っている株主から強制的に株式を買取ることができるというものです。

平成18年5月までの法律(旧商法)においては、株主から株式を買い取る場合には、その株主が買取りに同意しない限り、これを行うことができませんでしたが、会社法ではこの点が改正されました。

この『取得条項付株式』の導入においては、強制的な買取という強い会社側の権利を保障するものであるため、同時に一定の制約を会社に課すことで株主の保護も図られています。

会社は、株主との契約によって、いつ、いくらで買取られるのかを予め合意した上で、この内容を定款に記載するため株主総会で承認を得なければなりません。

株主が自分の株式をいつ、いくらで買取られるのか予め了承しているのであれば、会社に強制的な権利行使を認めても株主の不利益とはならないということです。

『取得条項付株式』を導入する場合には、予め株式の内容として以下のような事項を定めなければなりません。

買取りにかかる条件

いつ
(例)退社や相続など

買取る株式の対価として株主に交付する財産の種類

株式の代わりにもらえる財産
(例)金銭や他の種類の株式、社債、新株予約権など

買取る株式の対価の価額や算定方法

どれだけもらえるのか
(例)会社の純資産の価額や出資価額など

上記のような事項を定款に記載するため、会社の議決権の3分の2以上を有する株主の賛成多数で株主総会で承認を得た上で、増資を行い、対象の従業員にこの種類の株式を割り当てます。

そして、会社はどのような種類の株式が何株発行しているのかを会社の登記簿に表します。新たに株式を発行する際には、この流れで導入を行います。

一方、既に発行している従業員株主の株式の内容を種類株式に変えるためには、上記の手続きのうち、株主総会の承認のハードルとして株主全員の同意が必要となります。

もちろん、株式の内容が変わってしまう従業員株主には、十分な説明と理解が必要となります。

既に従業員が株式を持っている場合の方が新たに株式を発行するよりも注意が必要です。専門家立会において手続きを行うことも重要と考えます。

以上が導入における簡単な手続きの流れです。

この『取得条項付株式』は、あくまで会社側に買取る権利の付いたものなので、あらかじめ定めた買取りの状況となっても買取りを行うかは会社の自由です。

もちろん、種類株式の内容を無視して、定めておいた価額とは違う価額で合意して買取ることも可能です。

ただ、株主が買取りに応じないという、いざというときの保険として導入することは有効な対策といえるでしょう。

株主が万一買取に応じなくても、その株主が持っている株式が『取得条項付株式』であれば、会社が強制取得できる機会が確保されます。

従業員株主が会社を退社するなどのリスクを考え、買取の機会を確保した上で株式を割り当てるという点は予防策としてご一考ください。

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吉田 有希

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