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小規模企業共済の加入者が死亡した場合の、共済金の請求方法と注意点

相続遺言

|更新日:2022.12.7

投稿日:2012.11.05

「小規模企業共済」の制度には税務上のメリットもあり、利用されている方は少なくありません。

しかし、加入者が死亡した場合の共済金の受給は一般的な相続のルールと異なる点もあり、注意が必要です。

小規模企業共済は、個人事業主や小さな会社の役員の退職金制度として独立行政法人中小企業基盤整備機構が小規模企業共済法に基づき運営している制度です。

掛け金が1年間で最高84万円の所得控除となるため、個人の簡単な節税対策として、また、制度の本来の目的である、中小企業の役員や個人事業主が事業を廃止したときの自分への退職金を準備するため利用なされる方が多くいらっしゃると思います。

加入した共済金の請求事由としては、事業を廃業した場合、事業を事業譲渡した場合、役員を退任した場合等明確に規定されています。

前述のとおり月々の掛け金が所得控除として利用できるため、不動産賃貸業を営むオーナー個人事業主の簡単な節税対策として利用されることも多いと思います。

不動産賃貸業においては、事業の廃業=事業主の死亡、ということなることが多いように思いますので、小規模企業共済の加入者である事業主が死亡した場合、共済金の受給に注意が必要です。

小規模企業共済法第9条1項に、共済契約者つまり、事業主が死亡したときにはその遺族に共済金を支給する旨が規定されています。そして第10条に共済金の支給を受けることができる遺族が次のように規定されています。

(小規模企業共済法第10条1項、2項) 第9条第1項に規定する共済金の支給を受けるべき遺族は、次の各号に掲げる者とする。

  1. 配偶者(届出をしていないが、共済契約者の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあったものを含む)
  2. 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で共済契約者の死亡の当時主としてその収入によって生計を維持していたもの
  3. 前号に掲げる者のほか、共済契約者の死亡の当時主としてその収入によって生計を維持していた親族
  4. 子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹で二号に該当しないもの 2 共済金の支給を受けるべき遺族の順位は、前項各号の順位により、同項第二号及び第四号に掲げる者のうちにあっては当該各号に掲げる順位による。(以下略)

また、小規模企業共済法施行規則第10条において、共済金の請求について以下の通り定められています。

(小規模企業共済法施行規則第10条5項) 受給権者が2人以上あるときは、共済金の請求は、共済金の受領に関し一切の権限を有する代理人1人を定め、その者によりしなければならない。

上記の条文より、小規模企業共済の共済金については民法上の相続に基づいて共済金を受け取るのではなく、あくまで小規模企業共済法に基づき共済金は支払われるということが導かれます。

条文を読み解く限り、相続と違って内縁の配偶者であっても共済金と受給権者となります。

小規模企業共済の加入者が死亡した場合、まずは法第10条1項より受給権者が誰になるのかを特定し、次に、共済法施行規則より、複数の受給権者が存在するときは、代表者を定め、その者が他の受給権者の代理人として請求を行う方法により共済金の請求を行う必要があります。

具体的には、受給権者全員の実印の押印及び印鑑証明書の提出が必要になってくると思います。

共済金の受給に関して、通常の相続と同様に考えていると思わぬ落とし穴に陥ります。

例えば、遺言書で自己の財産をすべて1人の相続人に相続させる旨を定めていた場合、共済金は遺言書で指定された相続人が単独で請求できるのでしょうか。

また、複数存在する相続人の中で相続放棄を行った相続人がいた場合、相続放棄した相続人は受給権者には含まれないのでしょうか。

含まれるとすると施行規則第10条5項より、相続放棄した相続人からも委任を受けて受給権者全員で代理人を1名選任しなければ、受給手続きが出来ないということになります。

平成23年10月17日東京地方裁判所において出された判決において、小規模企業共済法に基づく契約において、共済金支払請求権は、民法の一般原理より相続人が承継するというものではなく、直接遺族に生じる請求権であるということが示されています。

つまり「私の全遺産を●●に相続させる」という遺言書が残されていたとしても、共済金請求権はそもそも遺産ではなく、小規模企業共済法に基づき同順位の遺族が請求できるものとされています。

また、施行規則10条5項において定められている複数受給権者がいるときは代表代理人1人を定めてその者から請求しなければならないという規定については、あくまで手続きが合理的に、迅速に処理が出来るように定められた規定であって、受給権者間で代表代理人を定める協議が整わないような紛争状態にあるのであれば、代理人1人から請求することまでは要しないというべきであり、受給権者が単独で自己の受給する共済金の金額の限度で支給を認めるべきであると判断しています。

判例は、小規模企業共済金の請求権は、民法の一般原則より相続承継されるものではないとしたものですが、相続放棄をした共済金受給権者がいた場合であっても受給権は相続財産に含まれず、法第10条においても相続放棄したものを除く旨の条文がない以上、受給権を有するものと考えられると思います。

受け取った共済金に関してはみなし相続財産として課税されるため、現在の相続税法上は(500万円×法定相続人の数)だけ課税されないことになります。

加入時だけでなく受給する際にも節税の効果があり、また、生命保険金のように相続税の納税資金として利用することも可能です。

そのような多くのメリットがある小規模企業共済ですが、加入者の死亡により共済金を受給する場合、上述のとおり注意が必要です。請求事由には、死亡のほかに法人成りや、事業譲渡等いくつか方法があります。

小規模企業共済へすでに加入している方、これから加入を検討されている方は、共済金の受給について事業主の死亡という相続発生時を想定した対策が必要ではないでしょうか。

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