種類株式のリスク管理における利用|杠司法書士法人|相続・遺言書や後見、企業法務のご相談 このページの先頭です

杠司法書士法人

COLUMNコラム

本文へジャンプします。

杠司法書士法人は見た!
実録コラム百科

ここから本文です

種類株式のリスク管理における利用

企業法務

|更新日:2022.12.8

投稿日:2008.10.11

会社法が施行されて、ある程度の期間が経過しました。法律が変わった当時はあまり資料がなく、どう変わったかなどは多くの書籍で知ることができたものの、具体的な活用方法についてはあまり明らかにされていませんでした。

そのうちの一つとして、『種類株式』というものがあります。

種類株式とは

ほとんどの中小企業では株式の種類は1つ(普通の内容の株式)です。株式の種類というものについても意識されたことがない会社が多いのではないでしょうか。

会社法では、発行する株式の内容につき、その会社の他の株式とは違う特別な内容を定めることが認められています。この特別な内容の株式を、他の株式(普通の株式)と区別して『種類株式』といいます。

株主との関係におけるリスク管理

会社経営という点で株主の権利として大事なものは、株式の議決権です。議決権といってもなじみがなく、中小企業ではいわゆる『ものを言う株主』があまり多いほうではありません。

しかし、中小企業ほど、人とのつながりは濃く、その分しがらみも多いのです。

つながりが濃いほど、関係が悪くなった時に株式を持たれているという事実が思わぬトラブルに発展する可能性があります。

つまり、今はいい関係でも、事情が変われば会社の経営に対して『ものを言う株主』となる可能性があるということです。

さらにいったん株式を持ってもらうと、この株式を買い取りたくても会社から強制的に買い取ることはできません。

会社への愛着あればこそ出資して株主になるという従業員の方にとっては、会社を退職した後もなかなか会社の株式を売りたがらないという事態も想定できます。

また、株主との関係が悪化した後は買取価格についてもなかなか折り合いが付かず難航することが予想されます。

種類株式は上記のようなリスクを事前に予防するために利用することができます。

種類株式の利用方法の例

種類株式の『種類』として定めることができる内容は全部で8種類あります。また、組み合わせることも可能です。

その種類株式のうちの一つとして『取得条項付種類株式』というものがあります。

「従業員に株式を持ってもらいたい…。」

そう考えている会社では、何株引き受けてもらうのか、その金額はいくらにすれば税法上問題がないのか、そういった株式分配の入口の部分ばかりを考えて、従業員が会社を退職した時の株式買取という出口の部分をフォローすることを忘れがちです

しかし、出口の部分は避けて通れません。

この株式の買取という場面において『取得条項付種類株式』を利用すれば、ある一定の条件が満たされることで、予め定めた価格により会社が強制的に株式を買い取ることができます。

買取時期と価格を予め決めておくことで、リスクを予防することが可能となります。これから株式を持ってもらう会社では、株主となってもらうことも一つの契約として考えなければなりません。

例えば、退職の際には会社で買い取るなど条件を定めておけば、株式買取の時期を互いに確認することができますし、他にも買い取りの条件を「相続」としておけば、相続による株式の分散を防ぐこともできます。

契約である以上、このような条項はあってしかるべきものです。

従業員の方にとって、株式を保有している間は利益が上がれば配当をもらうことができ、買取価格の定め方によっては退職時の会社の財務内容次第で値上がり分を期待できます。

出資する以上、出口の買取価格の保障があると、従業員にとっても安心につながります。たとえ、出資価格であったとしても、配当として支給すれば士気の向上にもつながることでしょう。

種類株式のデメリット

種類株式は便利なことだけではなく、以下のようなデメリットもあります。

会社で買い取るということで、買い取った株式は自己株式となります。自社の株式を会社でもつことにより、その株式には議決権がなくなります。

買い取った株式の価格分が、会社の貸借対照表の純資産の部から減少するため、いわゆる自己資本比率に影響を及ぼし、財務内容が悪くなります。

また、買取価格分の内部留保が必要となり、いざ買取の際に内部留保がない状態であれば株式を買い取れません。

さらに導入には株主の理解を得た上で定款を変更し、登記手続きを行うなど、コストと労力を要します。

このようなリスクはあるものの、将来、株主との問題が発生した際はより一層のコストや労力を要する可能性がありますし、内部留保さえあれば、その時点の株主の意思とは関係なく買い取りが保障されます。

もちろん、株主との関係が良好であればあえて強制的に買い取りをしないで、株主との合意で株式を買い取るという選択も可能です。

まとめ

『取得条項付種類株式』などという複雑な言葉だけでは何の理解もできませんが、種類株式とは、使い方次第で会社のリスク管理や今後の事業承継にも役立つ代物なのです。

次回は、種類株式を利用したリスク管理の方法を具体的にご紹介させていただきます。

本記事に関する連絡先

フリーダイヤル:0120-744-743
メールでのご相談はこちら >>

吉田 有希

この記事を書いた人

吉田 有希

お問い合わせ

オンライン相談