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会社の事業承継とは 支配権を確保する方法について

事業承継

|更新日:2022.11.24

投稿日:2013.06.17

1.大量事業承継時代

「高齢化社会」と言われだしてから既にずいぶんと経っています。世はまさに高齢社会。

中小企業経営におきましても、次世代への承継、いわゆる事業承継を真剣に考えないといけない時期に来ている会社が多いようです。これから日本の中小企業は、年齢構成的に大量事業承継時代を迎えることになります。

あるデータでは、日本の中小企業の社長さんの平均年齢は60歳を超えようとしているとのことです。一方、アンケートで後継者が決まっていると答えた会社は40%にも届かないとのこと。なんと60%以上の会社で後継者が決まっていない・・・。

原因として、昨今の経済状況の大きな変化、中小企業の事業承継=相続の難しさ、などが挙げられますが、改めて永続的に会社を継続していくことの難しさを考えさせられます。

今回は、この事業承継について、「会社を承継するとはどういうことか」についてを中心に述べたいと思います。

2.会社を承継するとは?

一言で「会社を承継する」と言っても、それは二つの重要な立場を承継することを意味します。

一つは、「会社の経営者としての立場」を承継すること。

もう一つは、「会社のオーナーとしての立場」を承継すること。

日本のほとんどの中小企業は、会社オーナーの立場と経営者の立場が同じ人である、いわゆる「オーナー企業」ですが、この二つの立場は元々は異なるものです。むしろ「会社法」は、株式会社の本来のあり方として「所有と経営の分離」を原則としており、オーナーつまり会社の株主と経営者は別の人が行うことを原則的に想定していたりします。上場企業などはその典型です。

しかしながら、日本の中小企業は、そのほとんどがオーナー企業です。中小企業において会社を承継するとは、オーナー(株主)としての立場と経営者としての立場を両方承継することです。すなわち会社を承継するにおいては、この二つの立場の承継の準備が必要となります。

3.二つの立場の承継への備え

「経営者の立場としての承継」の準備の方は、一般的に早くから意識されていることが多いのではないでしょうか?「事業の価値をいかに向上させていくか。」「会社がつぶれないための財務構造」「後継者を支えていくための次世代の人材、組織のあり方」「顧客との関係」など、これからも会社を維持・発展させていくため、日々ご検討されておられることかと思います。

これらに比較して、「オーナーの立場としての承継」は、意外と後回しになっているケースが多いように思います。「会社の議決権の構成がどうなっているか」「後継者の議決権が確保されるか」「所在の分からない株主がいないか」「名義株主への対応」など、オーナーとしての立場の承継にあたっては、これらを検討していくことが必要になります。

しかしながら、これら自社株の承継は、多くの中小企業にとっては、現社長の「相続」の問題と密接に関わることが多く、さらに兄弟や親戚どうしの話になる場合が多いので、なかなか後回しになってしまう、目をつぶりたい、といったことが珍しくありません。

なぜならこの会社支配権(議決権)の確保の問題は、普段の会社経営においては、必ずしも問題が顕在化するものではないからです。逆に、会社支配権がきちんと確保できているからといって、会社の売上が上がるわけでもありません。

しかしながら、会社支配権の確保は、いわば会社経営の基盤となる部分です。一度問題が顕在化してしまうと、一気に全体が崩れ落ちてしまうといっても過言ではありません。 

せっかく、事業がうまくいっているのに、承継期に会社の支配権を巡って争いになり、事業の継続に深刻な影響を及ぼしている会社は決して珍しくありません。

この会社支配権、議決権の確保は、急に対策ができるわけでなく、計画的な早めの対応が必要です。会社支配権(議決権)確保に向けた対策の概略は次のとおりです。

4.株主構成の把握・株主名簿の作成

まずは、正確な株主構成を把握する必要があります。意外とこの株主構成が曖昧になっていることも珍しくありません。そもそも会社の株主構成をきちんと正確に記したものは、会社内部に備えおかれる「株主名簿」しかありません。その時その時の株主構成を公に証明する客観的なものは存在しないのです。

会社設立時の定款から現在までの議事録、契約書など、一度全て精査して、現在の株主名簿を改めて作成し保管しておく必要があります。名義株がある場合は、名義株であることの確認をしておくべきです。

また、所在不明や生死不明の株主がいる場合、この事業承継を機会に、その消息の調査確認を行いたいものです。たとえ少数株主でも株主である以上、株主総会に出席権があり、各種閲覧権など、株主としての権利を有します。これら株主の確認は、後継者が行うことは難しく、現社長の代において行いたいものです。

株主構成の把握、整理ができたら、それらを客観的なものとするために公証役場において株主名簿に確定日付をしておくことが有益となります。

5.個別に買い取り交渉

株式が分散しているのならば、会社の株価を見ながら、株価がなるべく低い時期に、個別に買い取っていきます。この株式の買い取り交渉は、やはり現社長において行って頂きたいです。会社を承継後に後継者が行うにはかなりハードルが高くなります。

一つの大きな機会として、後継者が代表取締役に就任する機会があげられます。通常代表取締役になる際には、銀行への個人保証をすることにもなります。「会社の後継者は、決してプラスの財産だけでなく、個人保証など大きな責任も承継する」このことは買取交渉において大きな武器になるはずです。

交渉がまとまれば、譲渡契約書を作成して、株式の譲渡の事実をきちんと残します。

6.相続への備え

会社の経営者は、自社株の後継者への承継のため、遺言書を作成することが不可欠です。遺言書がない場合、現社長が亡くなった場合、その相続人全員の遺産分割協議が整わなければ、現社長の保有する自社株式は、その一株一株の全てが相続人全員の共有状態となります。共有状態とは、常に全員の協議ができないと、会社のことを何も決定できないことを意味します。

昨今、相続の場面で遺産分割協議が難航するケースが多く、その場合の会社経営に与える影響はかなり深刻なものとなります。遺言書があれば、現社長の保有する自社株は、協議が整わなくても、遺言書の内容どおりに後継者に取得させることができます。

ただし、遺言書も限界があります。もし、現社長の遺産全体における自社株や事業用の不動産の占める割合が大きい場合、後になって他の相続人から遺留分の請求があるかもしれません。遺留分とは、遺言書でも侵害できない相続人に認められた最低限の取り分です。

これらは、現社長に子供がいる場合、法定相続持分の半分まで認められます。この遺留分は、要求する側が請求しなければ問題になりません。しかし請求されると、後継者は必ず何らかの対価で対応する必要があります。

7.議決権確保の方策

株式支配権の後継者への承継を検討するにあたり、この遺留分対策は、なかなか難しく、対応として、他の財産の割当て、支払い資金の確保、遺言書に理由や気持ちの記載をするなど、により対応することになりますが、なかなかそれだけでは難しい場面も多いです。

遺留分への対応をしながら、議決権を確保する方策として、「種類株式」や「民事信託」の活用が考えられます。これらは、株式自体は分散しても議決権は後継者へ集中させることを目指すものです。これらの詳細についてはまた次回にしたいと思います。

8.まとめ

以上、会社の承継における会社支配権の確保について述べさせて頂きました。これらは、問題が顕在化してからでは既に遅く、また、そのままにしておいて自然と問題解決されるものでもありません。

オーナー企業であることの最大の利点は、迅速・果敢な意思決定と実行にあります。

後継者が将来、思いのままに会社の意思決定を行い、経営施策を迅速に実行していくためにも、経営の基盤をきちんと確保して承継させたいものです。

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石井 満

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