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司法書士の目から見た信託不動産の取引時における留意点 (2)取引時の留意点

不動産

|更新日:2022.12.18

投稿日:2010.07.16

「司法書士の目から見た信託不動産の取引時における留意点(1)制度概要」で述べた信託不動産の現物取得に関する2つの手法について、決済時の留意点についてご説明します。

1.買主が受託者から直接買い受ける方法。

受託者が受益者の指図に従い、信託不動産を買主に売り渡すというものです。

通常の売買手続きと類似していますが、留意すべき点は、受託者が信託不動産を処分する際は、信託目録に記載された手続きに則って行わなければならないということです。

信託目録には、通常、「信託不動産の処分は受益者の書面による指図に従って行わなければならない」等という文言が記載されています。

このような場合には、不動産処分に関する受益者の指図書が必要ですし、これ以外にも処分要件が定められていれば、それらも全て満たしているか確認する必要があります。

また、取引時には受益者が実質的な売主として決済に立ち会うことになりますが、売買の当事者はあくまで所有者である受託者と買主であるため、本人確認、意思確認は受託者に対しても行う必要があります。

信託銀行などが受託者となっている場合には、決済の場に立ち会われないケースも考えられますので、注意が必要です。

2.買主が受益者から信託受益権を買い受け、その後、買主と受託者との間で信託契約を解除する方法。

このケースは通常の取引と権利の流れが大きく異なります。

まず、買主は、受益者から受益権を買い受けます。売買の対象は不動産ではなく債権ですので、対抗要件は債権譲渡と同じ方法で具備しなければなりません。

具体的には、受益権の売買について、第三債務者である受託者より確定日付による承諾(または通知)を得る必要があります。

注意しなければならないのは、信託目録の受益者変更登記を行っても対抗要件を具備したことにはならないことです。

できれば当日の決済直前に、遅くとも決済後速やかに受託者の受益権売買に関する承諾書に確定日付を取得しなければなりません。

その後、買主と受託者との間で信託契約を解除することにより、不動産は信託から外れて現物で買主のもとに移転することになります。

ただし、信託契約解除により、信託不動産の所有権が当然に受益者に移転するわけではありません。

信託とは「委託者」が「受託者」に財産を信託し、その利益は「受益者」が受けるというものですが、信託契約が解除された場合には、特に定めが無ければ、その財産は元の所有者である「委託者」に戻ってしまいます。

信託財産が受益者に帰属する為には、信託契約に信託契約解除時の財産の帰属について別途定めていなければなりません。

通常は「信託契約解除時には、信託財産は受益者に帰属する」旨の定めがありますが、この規定の有無を確認する必要があります。

さらに、この受益者への帰属についても、何らかの条件を付している場合があります。

以前、「信託契約が解除された場合は、信託財産は、解除日の翌営業日に受益者に移転する」という信託契約がなされている不動産がありました。

この文言どおり権利が移転すると、不動産に担保設定ができるのは融資日の翌日ということになってしまいます。

そのケースにおいては、法務局と協議のうえ、他の書面で別途、日付を合意する事で決済日に所有権移転を行うことができましたが、法務局の登記手続きにおいては、事前に信託契約自体の内容を変更しなければならない場合も想定されます。

このように不動産の帰属主体や時期、方法については、信託契約の内容に従うことになりますので、早い段階で信託契約の内容につき十分に確認を行なう必要があります。

最後に、現在設定されている担保権を確認する必要があります。

今回の例では、受益者であるC特定目的会社は、平成21年1月1日に不動産ではなく、信託受益権という債権を買い受けています。

ここで、注意しなければならないのは、C特定目的会社が受益権購入時に融資を受け、この受益権に担保を設定していたとしても、登記簿謄本には公示されないということです。

例えば、受益権に質権が設定されていたとしても、その有無は謄本を見ても判明しません。債権質の対抗要件は、第三債務者に対する通知・承諾ですので、このような場合には、第三債務者である受託者に確認する必要があります。

決済日においては、通常の決済において売主の抵当権抹消を確認するのと同じように、この質権解除の事実を確認しなければなりません。

以上、信託不動産の現物取得に際し、司法書士の目から見た留意点をいくつか述べました。

信託不動産には、信託契約、受益権に対する権利、マスターリース契約、サブリース契約など多くの権利関係が設定されていることが多く、これらの権利関係を正確に把握し、必要な手続きをひとつひとつ確認する必要があります。

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