夫婦間の不動産の移動は「贈与」と「相続」のどちらが有利か|杠司法書士法人|相続・遺言書や後見、企業法務のご相談 このページの先頭です

杠司法書士法人

COLUMNコラム

本文へジャンプします。

杠司法書士法人は見た!
実録コラム百科

ここから本文です

夫婦間の不動産の移動は「贈与」と「相続」のどちらが有利か

不動産

|更新日:2022.11.12

投稿日:2013.10.15

長年連れ添った夫婦間で、居住する不動産の一部を相手に贈与するケースがよくあります。こうしたケースでは「贈与税の配偶者控除」の特例※が使える可能性があるので、このような流れができているといえます。

※婚姻してから20年以上が経過している夫婦が居住用不動産やその購入資金などを贈与した場合、一定の要件のもとで2千万円まで非課税となる制度のこと。

しかし、たしかにこの形の夫婦間の贈与は「贈与税」については効果的であるかもしれませんが、名義の変更だけに関していえば不利になる点も出てきます。たとえば「登録免許税」や「不動産取得税」などといった名義変更にともなって生じるコストは、贈与税と違って夫婦間での控除のような制度はありません。それどころか、むしろ贈与した場合のほうがコストが高くつく場合が想定されます。

まずはじめに、法務局へ不動産の名義変更を登記する際にかかる「登録免許税」ですが、生前に贈与された場合と没後に相続した場合とでは、税率に5倍もの格差があります。

生前に贈与された場合 2%(1000分の20)
没後に相続した場合 0.4%(1000分の4)

つまり相続であれば「10万円」となる登録免許税が、贈与となると「50万円」もかかってしまうような場合が出るということです。その差額は40万円ということになりますから、かなり大きな差だといえるでしょう。

次に、「不動産取得税」の場合はもっと明確です。生前に贈与された場合には不動産取得税がかかるのに、没後に相続した場合は非課税で済むのです。

生前に贈与された場合 課税される
没後に相続した場合 非課税

夫婦間で生前に贈与しても、没後に贈与しても、どちらにせよ不動産の名義が奥さんや旦那さんに移ることは変わりないはずです。ところが名義変更にともなうコストには明らかな違いがあります。「相続」だったら「不動産取得税」ゼロ、「登録免許税」も0点台の税率しか必要なかったものが、「贈与」になれば「不動産取得税」はかかる、「登録免許税」は5倍になるということを覚悟しなければなりません。

ただし、「贈与税の配偶者控除」の特例をつかって夫婦間で不動産の贈与を行っておくと、贈与税がかからないというだけでなく、「将来その不動産を売却するケース」や、「将来相続税がかかるケース」などで別の効果を発揮し、結果的にかかるお金が少なくなることもあります。

ですから、「たしかに名義の移転のコストは高くつくけれど、それ以上に得をする」のを見越して贈与を行う場合も存在しているといえるでしょう。

しかし逆に言えば、次のような場合は損をするかもしれません。「将来不動産を売却するつもりはない」だとか「相続税はかからない」というときです。このようなケースで不動産の贈与だけを行えば、単純に「名義を変えるときの費用がアップしただけ」という残念な結果にもなりかねません。

もちろん、そういった「いわば損得の話」での贈与を考えているのではない場合もたくさんあると思います。20年以上も連れ添ってきたパートナーに感謝の気持ちをあらわすため、不動産をプレゼントしたいという「おしどり贈与」の場合には、この手の話はあまりそぐわないと思います。ですから多少のマイナスは度外視してよいこともあるでしょう。

もしも、そういった感謝の面からの贈与ではなく、何らかの効果を狙って夫婦間での不動産の贈与を検討しているのであれば要注意です。まずは事前に税理士などの専門家とよく相談して、名義変更のコスト増に見合うだけ「トクする」のかどうか、きちんと検討しておくことが欠かせません。

→「夫婦間の不動産の移動」について問い合わせる

→ 不動産手続きの専門家 司法書士法人おおさか法務事務所(大阪市 八尾市 西宮市)

<関連する記事>

親の土地に子の名義の家を建てた場合に相続で問題になる点とは

現状を把握していない、土地などの不動産を放置しておくと危険

本記事に関する連絡先

フリーダイヤル:0120-744-743
メールでのご相談はこちら >>

赤阪 研史

この記事を書いた人

赤阪 研史

お問い合わせ

オンライン相談