新型コロナウイルスの影響による定時株主総会の延期と役員の任期
企業法務
|更新日:2022.10.22
投稿日:2020.05.27
今般の新型コロナウイルス感染症を受けて、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が発生しています。「新型コロナウィルス感染症に伴う取締役会、株主総会の対応」の記事においても記載させていただきましたが、このような状況下の中で定時株主総会を延長することも可能です。多くの会社が「事業年度末日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催する」と定款に定めて、運用していますが、当該定めに関しては、天災等その他の事業によりその時期に定時株主総会を開催できない場合には、当該状況が解消された後、合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りると考えられています。
本記事においては、新型コロナウイルス感染症により、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生た場合の当該定時株主総会において改選期にある役員の任期について記載させていただきます。
1.役員の任期
会社の役員の任期は、「選任後●年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時まで」というように、定時株主総会の終結の時をもって任期が満了するように定められています。
そして、「事業年度末日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催する」と定款に定めている会社が、事業年度末日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催しないときは,当該定時株主総会の終結の時に任期満了となるはずの役員は、事業年度末日から3ヶ月の経過により任期満了となる、とするのが原則的な登記実務の取扱いです。
ただし、今回の新型コロナウィルス感染症の特殊な状況下においては、法務省から次のような対応が公表されています。
2.定款で定めた時期に定時株主総会を開催できない場合
定款で定めた時期に定時株主総会を開催できない場合今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後、合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。
そのような場合には、改選期にある役員の任期については、定時株主総会を開催することができない状況が解消された後、合理的な期間内に開催された定時株主総会の終結の時までとなります。
事例
3月末日を事業年度末日とし、定時株主総会は毎事業年度末日の翌日から3か月以内に招集するとされている会社において、当初予定していた令和2年6月30日までに定時株主総会を開催することができず、令和2年7月20日に開催した場合、当該定時株主総会において再任した役員については、令和2年7月20日に重任したこととなります。(令和2年6月30日に退任し、令和2年7月20日に就任したこととはなりません。)
3.継続会が実施された場合
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、定款で定めた定時株主総会の時期までに事業年度に係る計算書類等の作成が間に合わないため当初予定した時期に株主総会を開催し、役員選任の決議を行い、計算書類等の報告及び承認については継続会において実施することとした場合においては、当初の株主総会と当該継続会とは同一の株主総会であると認められるめ、役員の任期については、当該継続会の終結時までとなります。
ただし、当初の株主総会と継続会とが同一の株主総会であると認められるためには、合理的期間内に継続会が開催される必要があります。
なお、この場合において、当初の株主総会の時点において役員の改選を行う必要があるときは、改選期にある役員等が辞任した上、その後任を選任することが考えられます。
事例
4.計算書類等の報告・承認を目的とせずに株主総会が開催された場合
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,定款で定めた定時株主総会の時期までに事業年度に係る計算書類等の作成が間に合わないため,計算書類等の報告・承認を目的とせずに株主総会を開催し,当該株主総会において役員の改選をすることとした場合、役員の任期は、当該株主総会の終結の時をもって満了するものと考えられます。
(文・司法書士 榎本充)
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