相続人は放っておくとどんどん増える
相続
|更新日:2022.11.11
投稿日:2013.11.05
田畑が多い、又は山深い地域では「うちの裏山が・・・」や、「あの辺り一帯のうちの畑を貸していて・・・」というような言葉が会話の中に出てくる場合があります。
この、「うちの」という言葉はとてもぼんやりとしており、現在誰の名義になっているのか分かっていないこともあります。しかしその一家にとっては、田畑や山が○○家が所有していることは昔から当然のことなので、いまさらその山や田畑が誰の名義になっているか法務局で確認しないことも多いでしょう。
「その地域を住宅地やショッピングセンターに開発しませんか?」という話があったとき、初めて不動産の名義を確認したところ、自分から見ると曽祖父や、さらに上の世代の方の名義のままだったということはよくある話です。これは非常に厄介な問題です。
この場合、まずは戸籍謄本を手配し、不動産名義人の相続人は誰なのか確定する必要があります。
しかし、何十年も前に亡くなっている方の相続人を確定することは非常に難解です。亡くなった方(=被相続人といいます)の配偶者は常に相続人となり、子供がいる場合にはその子供も相続人になります。
また、子供がいなければ被相続人の父母・祖父母など自分より前の世代で直通する系統の親族(=直系尊属といいます)、直系尊属が既に死亡している場合は、被相続人の兄弟・・・というように相続人の顔ぶれは変化します。
何十年も前に起こった相続で問題になるもののひとつに「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」というものがあります。これは分かりやすく言うと、おじいちゃんが亡くなったとき、既にお父さんは死亡していたけれど、その代わりに孫がおじいちゃんの相続人になる、というものです。
万一その孫もおじいちゃんより先に死んでいたが、ひ孫がいたという場合は、そのひ孫が相続人になる・・・というように、相続人の地位は血の繋がった直系の親族(=直系卑属といいます)に下へ下へと受け継がれていきます。
一方、兄弟が相続人になる場合にも代襲相続は認められますが、こちらについては甥・姪までで、それ以上は受け継がれていきません。
また、亡くなった順番も重要です。第一の相続が起こった後に、その相続人が亡くなった場合は、第二の相続が発生します。これを「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。この場合は代襲相続と異なり、血が繋がっていない者が相続人になってしまう可能性があります。
こういう例を考えてみてください。不動産の名義人であるおじいちゃんが亡くなったときにお父さんは生きていたが、その後お父さんは亡くなった。お母さんは悲しみに暮れていたが、しばらくしてから支えてくれる男性とめぐり合い、再婚した。その再婚先でお母さんは亡くなった・・・。
もし不動産の名義をおじいちゃんが亡くなった時に変更しておらず、今までほったらかしにしていた場合に名義を変更したい場合には、何と、お母さんの再婚相手にも遺産分割協議に参加してもらう必要があるのです。再婚相手の方にとってはまさに寝耳に水の状態です。
また、この方がお母さんの死後に亡くなっていたら、再婚相手の方の相続人にもおじいちゃんの相続人の地位は受け継がれていってしまいます。
関係が遠くなれば遠くなるほど連絡はとりづらく、協力してもらえない可能性も増えていきます。不動産名義を変更するには、必ず相続人全員で協議した上で、名義を取得する方を決定する必要があるので、誰か一人でも協力してくれなければどうしようもありません。その不動産を有効利用することは、今後一切できなくなってしまいます。
また、相続人が生きていたからといって安心できません。何十年も前に亡くなった方の相続人は、相当お歳を召した方も多く、認知症になっている可能性もあるからです。
その場合に遺産分割協議をするためには成年後見制度を利用するしかありませんが、現状成年後見を利用する必要はなかったのに、不動産名義を変えるためだけに成年後見制度を利用することはその相続人にかなりの負担を強いる可能性があります。成年後見人は一度選任したら、廃止することはできないからです。
そのほかにも相続人が未成年であれば、遺産分割協議をするには裁判所に申立てをして特別代理人を選任してもらう必要がある場合があったり、相続人の経済状況によっては、印鑑を押すからその分何らかの謝礼金を払えと言ってくるケースなど、考え出したらきりがないほど様々な問題が起こりえます。
不動産の登記名義を変更するのは一般の方が思っている以上に複雑で、また急を要する場合も少なくありません。迷っているうちに相続人が一人、又一人と増えていく可能性があるからです。
心あたりのある方は、まずは名義の確認だけでもいいので、なるべく早く行動に移していくことが重要です。当事務所もお役にたてると思いますので、ぜひご相談下さい。
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