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2013.08.19
「信託」の可能性とは 総合的に未来を描く方法

今まで築いてきた大切な財産。または、先代から大切に受け継いできた財産。これら限りある財産を、これからの暮らしの中で、

「どのように自ら利用し、活用していくか」

「どのように次世代に引き継いでいくか」

誰もが思うことかもしれません。備えをされておられる方も多いかと思います。

たとえば、預貯金を蓄え、生命保険に加入したり、相続税対策のため生前贈与を行ったり、遺言書を作成したり、万全に準備されておられる方もおられるかと思います。

これら備えは、将来様々なことが起こったとき、本人にとって、また家族にとって必ず役に立つはずですし、思い描くとおりに活用がなされるだろうと思われることでしょう。

自分自身の財産ですから、これからもずっと自分自身が思うように・・・。

しかしながら、実は、意外とそうでなかったりします。歳を重ねるにつれ、自分の財産が自分の思うようにはいかなくなるかもしれません。思うように利用、活用できるのは「今だけ」かもしれません。

将来、高齢により体力が低下したり、ご病気などで気力に自信がなくなってきた場合、今思い描くどおりに、財産の活用を続けることができますでしょうか?

たとえば、収益不動産を持っている方、今は、ご自身で、賃貸物件の管理や家賃の収受などできても、将来はいかがでしょうか。管理会社に任せるにしても、そのやりとりやチェックなど、今のようにきちんとできますでしょうか。医療機関等で長期療養が必要になった場合はいかがでしょう。

また、もし認知症になった場合、ご家族は、本人の思い描くどおりに財産の管理や支出ができますでしょうか。金融機関でのお金の引き出しや施設との契約、その他各種手続を行うには、何をするにも本人確認が要求されます。財産の売却や定期預金の払い戻しなど、認知症になってしまうとできなくなります。そればかりか福祉サービスや施設との契約なども自らできなくなってしまいます。逆に悪質な訪問販売などに遭遇し、自ら意識しないまま多大な損害を蒙ってしまうこともあります。

さらに、将来、ご自身の財産が、思い描く人にきちんと承継され、思い描くとおりに活用されますでしょうか。

実は、なかなかうまくいかない場合が多いです。

お亡くなりになったとき、その方の財産をどう分けるかは、相続人全員の合意が成立する必要があります。不動産の名義変更をするにも、預貯金の払い戻しをするにも、株式の名義書換をするにも、全員の実印が揃わないと、誰も手続をすることができません。

学校や公益の団体に生前に寄付を、と考えていても、その意向を持っているだけでは、それを実現することは難しいです。またお葬式やその後の納骨など、ご自身の思い描くどおりにして頂けるでしょうか。これらは残された家族が本人の意向を受けて行ってくれればいいのですが、それが難しい場合もあります。

将来、ご自身の財産を思い描くどおりに活用されるためには、周りの人の協力が不可欠ですが、その時その時において、それを期待するには難しい場合も多いように思います。

やはり、ご本人が元気なうちに、そのための準備をしておきたい。

そのための準備として「成年後見制度」と「遺言書の活用」があります。

将来、認知症などで判断能力が困難になった場合に備えて、お元気なときに予め契約で信頼のおける人を将来の財産の管理をする人に指定しておくことが可能です。任意後見契約書にきちんと財産管理の内容を記載しておき、公証役場で公正証書にしておきます。

将来、認知症などで判断能力が失われた場合に、予め指定された人が、任意後見人として、裁判所が選任する監督人の監督のもとで、本人の財産を管理していきます。

つまり生前に、本人が判断能力を失ったときの備えが「成年後見制度」です。

一方、亡くなった後の財産の帰属や活用を元気なときに決めておき、残しておくのが「遺言書」です。遺言書で具体的に財産の承継者を示しておくことで、財産の承継やその手続がかなりスム-ズになされます。

これら成年後見制度と遺言書に加えて、判断能力がまだあるときの財産管理として「財産管理契約」、お亡くなりになった後の葬儀や死後事務などの依頼をしておく「死後事務委任契約」を組み合わせることで、本人が将来に向けて思い描くどおりの財産の活用や承継が可能になります。

そして、これらに代わる、またはこれらと併用して「民事信託」の活用が考えられます。

「信託」と言えば、投資信託など信託銀行などの金融商品のイメージがありますが、ここでいう「民事信託」とはそれらとは目的や性格を異にします。

すなわち民事信託とは、「本人の財産」を、「本人の思い描くとおりに活用、承継」されるように「信頼のおける人」に「託し(所有権を移し)」、「託された人」はその「財産」を「本人の思い描いたとおりに活用、承継」する「義務を負う」ものです。

これらの内容は、お元気なときに「信託契約書」に予め記載しておきます。思い描くどおりの財産の活用方法や承継を記載しておき、そのために信頼のおける人に財産の所有名義を移します。

託された人は、その契約書の内容どおりに財産を管理したり、運用したり、処分する義務を法律上負うことになります。託された人に財産の名義が移ることにより、託された人は、本人が判断能力のあるうちも、認知症などで判断能力を失った後も、亡くなった後も、その場面場面に応じた財産の管理や運用をスムーズに行うことができます。

たとえば預金口座の場合、予め「託される人」の名義で管理されるため、いつでも本人のために引き出すことができます。不動産の名義も託される人になっているため、賃借人との契約など、どの場面でも本人やその承継人に代わり、スムーズに行うことができます。

また、名義が変わっているので、本人の判断能力が低下した場合に悪徳商法などで、財産が散在されることもありません。

また、「信託」の場合、自分自身が亡くなった際の財産の帰属だけでなく、承継者の次の承継者も予め定めておくことが出来ます。

「信託」と「成年後見制度」を併用することで、信託による将来のあらゆる場面を網羅した財産の管理ができるという利点と療養看護も行える成年後見制度の利点を組み合わせて、本人の思い描くどおりの財産の管理活用が可能になります。

信託は、「託される人」が鍵を握ります。全てこの人への信頼が前提となります。そのため、「信託監督人」を予め選任して「託された人」の財産管理をチェックすることもできます。また成年後見制度の併用により、裁判所の管理において本人のために財産管理をする立場である成年後見人により、「託された人」の財産管理のチェックを行うこともできます。

託された人の管理をしやすくするためにも、信託契約書に、明確に財産管理の内容を定めておくとともに、専門家を信託監督人として相談できる体制を整えたり、一定の信託報酬を「託された人」が取得できるようにするなど、将来に向けて安心して財産管理を任せることができるように信託契約書に記載しておくことが大切となります。

「信託」とは、信託契約書を作成することで、信頼のおける人と共に、総合的に「未来を描く」ことができる可能性のあるものなのです。

(石井 満) 


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